アルバイト
「ただいま。」
「おかえり!お弁当どうだった!?」
「…作りすぎ。一人で食べれないから皆で分けて食べたよ。皆美味しい言ってた。」
「正明が…皆って言った…およよ~やっと友達作ってくれたのね。」
「そりゃあ…まぁ。」
「次も頑張って作るからね!」
「え、あ、それ困る。いつもの量に戻して。割とマジで。」
「あら~、そう?」
「とりあえず体育でホコリまみれになったから風呂入りたいのだが…。」
「空いてるわよー、大丈夫、今日はまだ舞帰ってきてないから。」
「そうか。ならさっさと入るか。」
アスタークは部屋に戻り制服を脱ぐと、着替えを出し脱衣所へ向かった。
脱衣所に着替えを置くと風呂に入る。
軽く体をシャワーで洗い流すと浴槽へ浸かる。
「やはり風呂はいいな。一日の疲れが取れる。」
ゆっくりお湯に浸かり一日の疲れを落としていく。
「ふぅ。さて、髪の毛と体洗って出るとするか。」
アスタークはササッと洗い終えると体をタオルで水分を落とし持ってきていた着替えに着替えた。
着替えたアスタークは部屋に戻るとテレビをつけた。
ニュース番組にチャンネルを切り替えると戦艦大和の事を特集していた。
映像には海上を進む大和の映像が流れていた。
「今日一四時に防衛省は最新式戦艦大和を発表しました。この戦艦は今までの護衛艦とは桁違いの戦闘力を持つと言われています。専門家の方をお呼びしました。よろしくお願いします。」
「よろしくお願いします。まず戦艦とは大艦巨砲主義の時代の船でして、現代では建造されなくなった船の種類の一種で第二次世界大戦後のレーダーやミサイル技術の発展で駆逐された物を言います。そして今回建造された戦艦大和は最新鋭のシステムを誇っており、普通の駆逐艦では撃沈するどころか装甲を貫通することすらできないでしょう。もっともエネルギーフィールドを突破できない限り大和を傷つける事はできないですし。」
「今日の昼に発表されたのか。それにしてもデカイな。大きさもそうだが主砲の口径も四十六センチとかこんなのがあったらドラゴンの強固な鱗も…いや、ドラゴンなんて目じゃないな。これを防げるシールドは存在しないだろうな。そういえば今ごろ彼奴等はなにしてるんだろうな…。まだ俺の事を探しているのか?」
アスタークはそんなことを思いながらベッドに横になりつつニュースを見ていた。
しかし、徐々に眠気がアスタークを襲う。
「眠いな。大分だらけてきたようだ…まぁいい。こっちの世界では魔物は居ないからな。一番の敵は同じ人間か。」
そう言うとアスタークは眠気に身を任せそのまま眠りに落ちていった。
そして日は進み、面接当日の水曜日。
今日の授業は英語、情報、国語、理科そして学年集会二時間である。
一限目の英語は相変わらず理解できないため、当てられないように必死に目を逸らしていた。
「(俺は石俺は石俺は石―)」
必死に避けているアスタークである。
二限目。
情報の授業だ。
「(なるほど…そういうこともあるのか。ならあそこをこうすれば魔術の効率が僅かに…。)」
情報の授業は魔術の改良の時間となっている。
授業をまともに受けろと言いたい。
三限目。
国語の授業。
「(この国は難しいな。八百年ほどはあまり文法は変わらないが、それ以前になると文法がかなり変わってくる。)」
アスタークは少し困惑しながらも授業を受けている。
四限目。
理科の授業。
「(この授業は科学を学ぶのに調度良い。魔術に応用できそうな理論が多々ある。…護は案の定寝ているな…うん、しょうがないな。)」
護にあとでノートを見せることにしたのだった。
そして昼休みである。
月曜日に起きた弁当騒動でアスタークはクラスの中に僅かながら溶け込み始めてきた。
このまま進めば何の障害もなくなるだろう。
「正明~食べようぜ~。」
いつもどおりの護だ。
「正明君一緒に食べよー。」
「いいぜ。」
あの弁当騒動の後新しい友だちができた。
名前は香織 志穂と言うらしい。
「今日も普通のお弁当箱なんだね。」
「月曜日みたいにあんなには作らせないよ。」
「俺はいつでも大歓迎だぜ!」
「護は食い過ぎだ。」
あの時の四段弁当箱の一段まるごと護が食べてしまったのだ。
残りの二段をクラスメイトに分けていたのである。
「護君は食べ過ぎだよ。太るよ?」
「ははは。太ると言う言葉は俺とは無縁の言葉だな!」
「脳筋だもんな。」
「脳筋?」
「いやなんでもない。」
「ささ、そんなこと言ってないで食べましょ。」
「そうだな。」
「脳筋ってなんだ?まぁ、いいや。いただきます!」
「いただきまーす。」
「いただきます。」
三人はアスタークの机で昼食を食べ始めた。
アスタークはまるで前に戻ったかのような感覚を覚えた。
「(ああ、よくこうやって食べていたな。シュナイダーとミミ、今頃どうしてるのだろうか。)」
「正明君どうしたの?手が止まってるよ?もしかして美味しすぎて感動しちゃった?」
「あ、ああ、ちょっとぼーっとしてしまってな。」
「ん?何か有ったのか?」
「いやな、こうして三人で食べてると昔を思い出してな。」
「昔って…。」
「(しまった…口が滑ったな。どう受け答えしようか……よし。)」
「ああ、例の噂が起きる前だ。」
「そうか。でも小学校の給食って五人か六人じゃないのか?」
「(護!お前こんな時だけ頭回るな!)…ああ、俺の班は三人だったんだ。」
「そうなんだ。私も今まであの噂と近寄りがたい雰囲気で声かけなかったんだけど、今はもう大丈夫だからね!」
「正明には俺たちが居るぜ!」
「ああ、ありがとう、二人共。」
「あ、正明の玉子焼き美味しそうだな。一つ貰っていいか?」
「ああ、いいぜ。」
「よっしゃ!いただき!」
「あー。午後なんだっけ?」
「むぐ。ん。午後は学年集会だね。先生が就職のなんちゃらって言ってたからおそらく就職か進学かの説明だと思うよ。」
「むぐむぐ…俺は就職だな!これ以上勉強はしたくない!」
「寝てばっかりだしな。」
「授業難しくてわからねーからしょうが無い。正明と香織はどうするんだ?」
「私は進学かな~。もう少し勉強してたいし。」
「俺は…どうしようか。まだ決まってないな。」
「まぁ、今日バイトの面接もあるんだし、働いてみて決めてみるのもいいかもな。」
「正明君アルバイトするの?」
「ああ、護の紹介でな。コンビニのアルバイトの面接が今日の夕方にあるんだ。」
「へ~。少し前の正明君とは大違いね、これこそ人が変わったと言えるね。」
「(本当に変わっているのは内緒だが…。)」
そんな話をしながら三人は昼食を食べていたのだった。
昼食を食べ終わり三人は雑談をしているとクラスメイトが徐々に移動を始めた。
「よし、俺達も行くか!」
「体育館だよね。正明君行こ。」
「ああ、行こうか。」
五限目、六限目。
場所は体育館、学年集会だ。
内容は来年に向けての就職活動、進学説明だ。
進路担当の教員が中央で熱弁を振るっている。
生徒はそれに飽きてきたのかコクリコクリと頭を上げ下げしている生徒が出始めた。
周りの教員は一人ずつそれを注意していく。
そして更に進路担当の注意が入り話が長くなっていく。
「(話長いな。まぁ、前もこんなことも有ったし担当者は大変なんだな。)」
「だからして今から寝こけてる奴はこの先就職活動や進学に影響が出る!人の話を聞く時はきちんと聞く!これが鉄則だ!人の話を聞かない奴は今後就職、進学のサポートをしないぞ!」
「(だからって長いのは勘弁なんだけどな。)」
その後学年集会は一時間続き、その後六限目は就職と進学に分かれて説明を受けた。
アスタークは決まっていなかったため、とりあえず進学の説明を受けていたのだった。
各自にプリントが配られ、次の日に提出する様に言われ、アスタークは困った。
進学に適当に来てみたのはいいが、進学先の学校の記憶や情報も全くわからないのである。
アスタークは困りながらも六限目を終えた。
教室に帰る途中護を見ると明らかに寝起きの顔をしていた。
手にはミミズが這いずったような文字が書かれた就職用のプリントが握られている。
「護寝てただろ。」
「おう。なんでわかったんだ?」
「明らかに眠そうな、寝起きの顔してるぞ。」
「そうかー。」
そして教室に帰ると帰りの支度を始める。
そこへ担任がやって来てショートホームルームが始まった。
十分ほど話があり、挨拶をして今日の過程は終了したのだった。
「正明君帰ろー」
「正明帰るぞー!」
「おう。」
三人は一緒に学校を出た。
途中まで香織が一緒だったが、帰り道が違うため此処から先はアスタークと護になった。
「今日面接来るの待ってるからな。」
「おう。」
そう言うと護とも別れアスタークは自宅のマンションへ向かっていった。
「ただいま。」
「おかえり~今日は面接だったよね!がんばってね!」
「ああ、楽勝だ。」
「期待して待ってるからね~。」
アスタークは一旦部屋に戻り制服から普段着へ着替える。
その際いつもよりもしっかりとした服を選択する。
第一印象は見た目からという。
しかし、前に一回会っているため第一印象は決まってしまっているだろう。
「五分前にコンビニに到着すればいいだろう。それまでテレビでも見てるか。」
アスタークにとって面接などの上に立つ人間の前で喋ることは魔法世界で慣れていることなので詰まること無く喋ることができる。
なので、神が与えた知識と記憶を頼りに話すのだ。
途中途中に護の事も挟みながら話すことで悪いうわさを感じさせないようにする。
しばらく時間を潰すこと数十分。
「さてそろそろ行くとするか。今からいけば五~七分前には着くだろう。」
アスタークは履歴書を持つとそれを適当な鞄に入れた。
「よし。」
自分の部屋から出るとリビングに居る母に一声かける。
「ちょっと行ってくる。」
「はーい。がんばってね!」
そして玄関へ行き靴を履き、ドアを開けた。
「あ。」
「舞か。おかえり」
「…どいて。」
「どうぞ。」
「ふん…。」
「なんだかなぁ…。」
部屋へ入っていく舞を見届けるとアスタークは玄関のドアを閉めた。
エレベーターに乗り一階へ降りる。
「さて行こうか。」
そう言うとマンションのドアを通り外に出た。
向かうは面接場所のコンビニだ。
「今は…十七時四十六分か。近いし余裕だな。」
アスタークはコンビニに向かって歩いて行く。
太陽も沈みかけて夕焼けがアスタークを照らす。
「こうしてこっちで見る夕焼けもいいものだな。」
五分ほど歩いて行くとコンビニが見えてきた。
コンビニに入店すると聞き慣れた声が聞こえてくる。
「いらっしゃいませー!あ、正明か!店長!正明が来ました!」
「あ、来た?それじゃ奥に入ってくれるかな?」
「わかりました。」
アスタークは店長に連れられて店の奥へ入っていく。
そこは細長く狭い場所だった。
コンビニの制服やコンピューターなど書類も置いてある。
「そこの椅子に掛けて。」
「はい。失礼します。」
「それじゃ始めようか。」
「よろしくお願いします。」
「名前は倉木 正明君。護君と同じ学校で同じクラスメイト。」
「はい、そうです。」
「アルバイトは何曜日に出れるかな?」
「何曜日でも結構です。」
「次にお決まりのことなんだけど自己PRよろしくたのむよ。」
「はい。私は―」
アスタークは記憶を頼りにあまり不利にならないように自己PRを2分ほど話した。
2分話すだけでも精一杯なのだ。
小学校の頃から半ひきこもりだったらしく、中学校での出来事も言えず主に高校での細菌の出来事を話していた。
「うん。ありがとう。それにしても話し方が少し古臭かったね。まあ別にいいけど。」
「(あっちの世界で王と話す話し方で話したら駄目だったか。ミスしたな。)」
「じゃ、とりあえず採用ね。」
「はい?」
「いやー、ちょうど人が足りなくなって困ってたんだ。あ、シフトはこっちで組んでおくから。」
「あ、いや、ちょっと?」
「ん?ああ、正明君の採用は実は護君と話した時と、この間話した時で決めていたんだ。後は君が来るのを待つだけだったんだよ。」
「そ、そうなんですか。(なんだか拍子抜けだな。)」
「とりあえず…えーっと金曜日の夕方十八時に一度来てくれるかな。」
「わかりました。金曜日の十八時ですね。」
「それじゃ面接は終わり!金曜日にシフト表渡すからその時にね。詳しいことは同じアルバイト仲間から教わったりして、覚えていってくれ。」
「はい。」
「それじゃ―」
「店長~!レジお願いします!」
「わるいね。今日は終わり、また金曜日に!」
そう言うと店長はレジに向かっていった。
残されたアスタークは違う出口から店内に戻ると軽く会釈をして店から出たのだった。
「さて…少し予想外であったがこれはこれでいい結果だ。家に戻って報告をしよう。」
そう言いながらアスタークは帰路に着くのであった。
こんな採用が実際に有ったので真似てみました。
事業はかなりダイジェストでお送りしました。
許してください。普通科の授業わからないんです。
次でアスターク編は終わりになります。
以降出番は番外編までありません。




