学校二日目
ジリリリリっと目覚まし時計が鳴り響く。
「もう朝か…。」
アスタークは鳴り続ける目覚まし時計を止めると、ベッドから起き上がる。
「結構体が鈍ってきたな。少し運動をしなければ…。」
アスタークはそう言いつつ寝着を脱ぐと制服に着替えだす。
いつもどおり着替え、リビングへと移動する。
「おはよう。母さん。」
「おはよ~う、正明。朝ごはんちょっとまってね。」
アスタークは椅子に座るとテレビがついていたためそちらに目を向けた。
テレビは今日の天気予報をやっていた。
どうやら今日は予報通り晴れるようだ。
「晴れか、運動するのにはちょうどいいな。」
天気予報が終わるぐらいに母が朝食を運んできた。
それは一風変わった物だ。
白米がお湯に浸かっている。そしてその上に何かが振りかけられている。
「はい。今日の朝はお茶漬けでーす。おかずにさんまの塩焼きも有りまーす。」
「いただきます。」
アスタークはお茶漬けを口にふくむと、お湯に浸かっているとは思えない美味しさに驚いた。
「うん。美味しいな。」
「あら本当?今度もっと買ってくるわね~。」
「さんまはどうかな…うん、美味しいな。」
その後アスタークは朝食を済ますと部屋に戻り学校へ行く準備をしていた。
「…英語どうするんだよ…」
それだけが心残りだった。
「それじゃ、行ってきます。」
「いってらっしゃ~い。あ、お弁当お弁当!じゃ、頑張ってね。」
「おう…ってなんかデカイし思いな…。」
アスタークはエレベーターで一階まで下り、自動ドアを通り外へでた。
そして学校へと続く道を歩いて行った。
学校前には相変わらず教員が立っており生徒に挨拶をしていた。
「あ!コラ!自転車二人乗りは禁止だ!今すぐ降りろ!ったく…」
「おはようございます。」
「ああ、おはよう。」
教員も朝から大変なようだ。
アスタークは下駄箱から上履きを取ると靴をしまった。
廊下を通って教室へ入ると、護が声をかけてくる。
「よ!正明!」
「おはよう、護。」
「そういえば店長に会ったんだってな!聞いたぜ!聞いたとおりの人物だって言ってたぞ!」
「そうか。それは良いことだ。」
「きっと面接もうまくいくぜ!」
「おう、面接成功させてバイトさせてもらうぜ。」
「それにしても…一限は情報の授業か…わからないぜ…。」
「英語の授業わからないぜ…」
「だが五、六限は体育だ!俺の時代だぜ!」
「お、おう。」
アスタークは鞄を置きながら情報の教科書を取り出した。
「一限は電子計算機室だろ?移動しようぜ。」
「おう。今用意するからちょっと待っててくれ。」
そう言うと護は一度机に戻り教科書を取り出す。
「さ!行こうぜ!昼寝の時間だ!」
「違うだろ…」
脳筋の護には情報の授業は駄目なようだ。
アスタークにとって情報の授業は大切な時間だ。
廊下を渡り、電子計算機室に移動すると、上履きからスリッパに履き替える。
扉には飲食禁止、ダメ絶対と書かれている。
それは当たり前である。
パソコンは精密機械だ。
キーボード、サーバ内部に水やクズが入るとショートしてしまうからだ。
二人が部屋の中に入ると既に教員が座っていた。
「おはようございます!」
「おはようございます。」
「ああ、高谷は相変わらず元気だな。おはよう。それに今話題の倉木か。先生達の間でも話題になっているぞ。」
「どんな話題ですか…。」
「人生と悟ったと言うかまるで別人になったみたいだと。」
「ははは、そうですか。」
まったくである。
二人は好きな席に座るとパソコンの電源を点ける。
OSのロゴが表示されブートされる。
やがてデスクトップ画面に移行すると護は既に腕を組んで居眠りをしていた。
「はやっ!?」
「護のやつまた寝てるのか。まだ授業も始まっていないというのに。」
「起こしますか?」
「本来なら起こすのだが…もう何度も起こしても駄目だった。また学期末のレポートだな。」
「は、はぁ。」
時間が迫るに連れ続々とクラスメイトが部屋に入ってくる。
部屋の中はパソコンの排熱ファンの音で満たされていく。
そして授業開始のチャイムが鳴り響いた。
「よーし。始めるぞー。日直、号令よろしく。」
「きり~つ。気を付けー。れー。よろしくお願いしますー。」
「よろしくお願いします。」
「よろしくなー。さて、今日は余談からだ。今の社会はITだ。情報が物を言う時代だ。情報は武器であり防具である。IT技術は日々進歩している、それも何もかも科学に基づいてる。」
「(また始まったよ。)」
「(そうだな…これなげーんだよな。)」
後ろからヒソヒソと話し声が聞こえてくる。
「私は国際科学研究機構の実験が世界を揺るがす大発見になると信じている。なぜなら―」
「せんせー授業してください。」
「これからが良いところなのに…まぁ、いい。今日は情報モラルとウイルスについてだ。情報モラルとは簡単にいえば情報版の道徳ということだ。お前ら当然わかっているよな?チャットしている相手は人間だということも。パソコンを通して話していてもモラルは重要だ。チャットなどで罵倒、強迫する行為はパソコンを通して相手に言っているのと同じだ。警察沙汰になりたくなければ気をつけろよ。ちなみにチャット、オンラインゲーム、通話したことあるやつ挙手してみろ。」
するとクラスの一人を除いて手を上げた。
もちろん挙げていないのは寝ている護だ。
「そうだよな。全員だよな。いいか?これらの事は利点ばかりではないデメリットもあるんだ。それを今日は知ってもらう。」
アスタークは教員が言う言葉を重要な部分だけ拾いノートに書き写していく。
「――だから皆も気をつけるように。テストに出すからなー。」
「やっべ、聞いてなかった。」
「おい、ちゃんと聞いてろ。ったく…次はウイルスについてだ。スマートフォンやパソコンにはきちんとウイルス対策ソフトを入れてるな?入れてない奴挙手。」
これには誰も手を挙げなかった。
「よし。メーカーが入れているから下手に改造している奴以外入っていないのはないからな。ウイルスの危険性について説明するぞ。」
「(ウイルスか…あ、まてよ。魔術で相手の魔法式を掻き乱してしまえば魔法を発動―ハッ!?いかんいかん。今は授業中……相手の詠唱中の魔力をかき乱せば魔法自体も封じることが…。)」
アスタークはウイルスの説明より魔法の構成に考えが行ってしまい授業をまともに聞いていなかった。
そのため…。
チャイムが鳴り響いた。
「(はっ!?しまった!)」
「よーし、今日は終わりだ。号令。」
「きりーつ。きをつけー。れー。ありがとうございました。」
「ありがとうございました。」
「…護授業終わったぞ。」
「んあ?終わったか?次なんだっけ…。」
「現代社会だったか。」
「げぇ!あの先生苦手なんだよなぁ。」
「そうなのか?」
「ああ、元気そうだからって俺ばかり指名してくるんだぜ…。」
「そ、そうか。(間違ってはいないな。)」
「それじゃ行くか。」
護は固まった体をほぐすと部屋から出て行った。
アスタークもそれに続き外へ出て行く。
スリッパから上履きに履き替え教室へと戻る。
護は廊下で終始あくびを繰り返していたのだった。
「よし、ノートと教科書っと。先生が来るまで教科書を斜め読みしておこう。」
アスタークは教科書を斜め読みしていく。
教科書には一年前から五百年前までの歴史が記されている。
「ふむ…日本の周りにはろくな国がいないんだな。そうか、それでアレを作ったのか。番組でやっていたし今日には発表があるか?」
すると教員が教室へ入ってきた。
「お、今話題の倉木いるね。授業前に予習とはいい心がけじゃない!」
「あ、(確か名前は…岩鈴 茜先生だったな)ありがとうございます。」
「聞いた?今噂なのよ?」
「情報の時に聞きました。なんでそんなに話題になっているかわかりませんが…。」
「ふふふ。先生達はこれでも一人ひとり見てるのよ。」
「(前と今どう思われていたんだ…。)」
「さて、そろそろ授業始まるわね。先生も準備しないと。」
教卓に教科書を置くと黒板に文字を書き始めた。
そしてしばらくするとチャイムが鳴り響いた。
「はーい、授業始めまーす。日直さん号令お願いしますー。」
「きりーつ。気を付けー。れー。お願いしますー。」
「よろしくお願いします。」
「よろしく。さて今日は二百五十年前の出来事から。この年に何が有ったか分かる人居るかしら?」
しかし誰も答えない。
教員はしばらく待つと再び話し始めた。
「この年には国際科学研究機構が設立されました。すべての技術を集結させ人類の科学技術の水準をあげようとする機関です。これには様々な事件がありました。…高谷くん答えて!」
「え!?また俺ですか!?」
「今日も元気ね。うん。」
「えー。わかりません。」
「きちんと予習復習するように。この機関に加盟した全世界の国のうち二カ国が技術を独占、持ち逃げしようとし、国連から経済制裁と無期限立ち入り禁止を受け、更に国連の監視下に置かれました。これを国際技術盗用事件と言います。では現在も監視下に置かれている国は何処でしょうか、高谷くん!」
「またですか!先生狙い撃ちしすぎっす!」
「早く答えて!時間なくなっちゃう!」
「ええっと…韓国でしたか?」
「正解!もう一つの国は中国です。いいですか?この時から韓国と中国は同盟を組独自の研究機関を設立しました。さらに反日も加速し、日本企業から不正に資産を奪い取る行為も横暴し始めました。そこで日本が経済制裁や日本企業の強制退去を命じ、中国では働く所を失った国民が大量にでました。当局はすぐに日本に報復行為を仕掛けました。これは力による報復行為で初めて日本の本土に一発のミサイルが撃ち込まれました。場所は新潟、この事件を対日本報復事件と呼ばれています。これに応じるかのように韓国も巡視船に砲撃を行いました。その行為に日本政府は宣戦布告なしの攻撃と判断し戦争に発展しました。現在では冷戦状態が続いていますが、油断を許さない状態ですね。次に―」
アスタークはこの授業を通して足りない部分の知識を埋めようと必死になっていた。
「(なるほど。このためにあの戦艦を作っていたのか。)」
その後も先ほどのように魔術の開発に夢中になること無く、授業に集中していた。
やがて授業の終わりのチャイムが鳴る。
次の授業は音楽だ。
アスタークとって無縁の物だったが、授業ということなのでやらなければいけない。
この授業で困ったことは課題曲があり、それが一切記憶に無いことだ。
「(前の奴…口パクしてやがったな…!)」
アスタークは周りに合わせながら何とか歌を歌っている。
幸い周りにはバレていないようだ。
いや、正確には気にされていないと言ったほうが正しい。
その後アスタークはなんとか音楽の授業を乗り切ったが、次は英語の授業だ。
最後の悪あがきと言わんばかりに教科書に目を通すが、全くわからない。
「全然わからん。」
「奇遇だな!俺もだ!」
「…。」
授業が始まり、英語の教員が授業を進めていく。
アスタークは何を言っているかわからず、当てられないように必死に目を反らした。
しかし、やはりここでも音楽と同じく気にされていない。
以前までの様子から当てられないのだ。
アスタークに取っては緊張の一時間で有ったが、それはアスタークだけであった。
護はしっかりと授業を寝ていたのだった。
「あー!腹減った!正明、飯食おうぜ!」
「腹減ったって、護おまえ寝てただけじゃねえか…。」
「困ったことはどうでもいいんだ!人間生きていれば腹がへるんだよ!これが真理!」
「お、おう…。」
「さあ!食うぞ!いただきます!」
「さて、俺も弁当を…ってなんじゃこりゃあああ!?」
その叫び声にクラスに居る全員が反応してしまった。
アスタークがやたら大きい弁当箱の布を開けたところ中にあったのは四段重ねの弁当箱だった。
「まさか、あの時の警告はこの事だったのか…!」
あの時とは金曜日の夕方まで遡る。
「あんた、母さん止めなくていいの?どうなっても知らないよ。」
「? どうでもいいだろ?」
「私は警告したからね。」
「そうか。ところで部活どうした?」
「あんたに教える義務はない。」
「これの事だったのか…。」
「正明すげえな!これ食いきれるのか?」
ざわざわとクラスがざわめく。
「弁当にあれはねーよ。」
「最近様子が変わったと思えば弁当も変わったな。」
「ねぇねぇ、アレは食べ過ぎよねー。」
「食べ過ぎというか持ってきすぎ。」
「お?分けてもらおうかな。弁当忘れたし。」
様々な声がクラス全体から聞こえてくる。
「か、勘弁してくれ…。」
アスタークは弁当の中身をクラスメイトに分けつつ、余った一段部分を食べるのであった。
後一話か二話で閑話が終わる予定です。




