履歴書とホームシック?
「ただいま。」
「おかえり~履歴書とか買えた~?」
「買えたよ。」
「あらそう。頑張って書いてね。」
アスタークは自分の部屋に戻ると履歴書が入っている袋を開け、椅子に座った。
「ん?封筒付いているじゃないか。封筒を別で買った意味なかったな。とりあえず書くとするか。」
アスタークは記憶を頼りに住所、学歴等を書き込んでいく。もちろん日本語である。
志望動機には社会体験の一貫と家庭の負担軽減と書いておいた。
見事に一度も失敗すること無く書き終えたアスタークは証明写真を履歴書の指定サイズに合わせて切りそろえていく。
合わせる際に定規とボールペンを使用し正確に切りそろえたのだ。
「よし。完成かな?後はこの封筒に入れれば…。できた。後は面接だな…なんとかなるだろう。」
アスタークは言葉に詰まる方では無いので何を聞かれても平気だ。
知識も記憶もバッチリと記憶されているため時事問題以外は大丈夫だと高をくくっている。
「さて、食洗機なんだが…ちょっと型番か何か無いか調べてこよう。」
部屋から出てリビングへ入る。
そこには朝ドラを見ている母の姿があった。
「ん~?」
「なんでもない。ただ、食洗機の型番見に来ただけだ。」
「ん~。」
アスタークはシステムキッチンに搭載されている食洗機に型番が無いか見に来ていた。
大抵今の時代マニュアルがインターネットにあるはずだからである。
しかし何処を探しても見つけることができない。
「おっかしいな。どうなってるんだ?」
「見つからないなら見つからないでいいよ~。」
「そうか…」
結局見つけることができなかったアスタークは部屋に戻るとパソコンの前に座った。
あてもなくインターネットで情報を収集しようとブラウザを立ち上げる。
そしてとあるサイトを見つけた。
「ん?魔法に関する考察?」
どうやらこのページは個人が書いている小説の設定ページのようだ。
アスタークは何気なくそのページを開くと事細かく設定が書かれていた。
そしてそれは魔法世界で使われている常識と九割一致する内容だった。
「驚いたな。この世界でここまでの魔法論文を見るとは思いもしなかった。」
それを見ていたアスタークはなんとなく新しい魔法を作りたくなった。
それは科学と魔法の知識を使った新魔法。
いわば"魔法を科学の術と使った魔法"魔術である。
今までの魔法式とは違い科学の現象に基づき魔法を発動させる。
そして何よりも詠唱が要らないのが大きな利点だ。
アスタークはインターネットをフルに使って科学を頭のなかに叩き込んでいく。
そしてノートに走るペンは止まることを知らない。
アスタークは一振りの剣を作るのに何日も工房にこもったことがあったが、それと同じくして自分の世界に入ってしまっている。
今回アスタークが作成しているのは電子レンジとインターネットからヒントを得た物だ。
物質を共振現象で相手の武器や防具を破壊する非殺傷魔法だ。
それを行うために演算魔術も同時に作り上げていく。
演算魔術はコンピュータの動作原理を基礎として魔術に起こしていく。
新しく作る魔術は二つ、共振破壊魔術、演算魔術。
共振破壊魔術を使用するには演算魔術で物体の固有振動数を割り出し結果を共振破壊魔術に反映することで対象の武器、防具、兵器を無効化することができる。
共振破壊魔術は比較的簡単に作成できたが、演算魔術の作成に少し悩んでしまったためいつの間にか夕方になっていた。
「しまった。つい夢中になってしまったな。昼飯食べてないな…夕飯は昼飯でも取ってあったらそれにしてもらおう。…なぜ魔法も魔術も使えないこの世界でこんなの作ったんだろうな。これも魔法使いの性なのか…。」
アスタークはリビングへと向かった。
「あー!正明呼んだのになんで出てこなかったの?母さんまた閉じこもっちゃったかと心配したんだからね!」
「ああ、すまん。ちょっと気になることがあったから調べてた。」
「あらそうなの?」
「昼飯余ってる?」
「作ってあるけど…。」
「夜それでいいよ。」
「わかったわ。夕食になったらまた呼ぶね~。」
「了解。部屋戻ってる。」
そう言うと部屋に戻るのであった。
「さて夕食まで暇だな。攻撃魔術でも作ってるか……意味ないけどな。これも魔法使いの…どんなのにしようか…。」
すっかり魔法使いモードに入っているアスターク。
インターネットを使いアイディアを探していく。
「どんなのにしようか。演算魔術を前提条件にして半自立型魔術にするか?俺の魔力量があればなんとかなるだろう。」
アスタークはロボットアニメのファンネルを魔術で再現しようとノートに魔法式を書き込み始めた。
「…これでは無差別に攻撃してしまう…演算魔術を改良して俺の脳からのフィードバックを受け付けるようにすれば…。同時展開は演算魔術で維持して…照準は俺の目からの情報を演算魔術へ受渡して制御させて…。」
そして開発から二時間ほどが経過するとアスタークの手が止まった。
「よし!完成だ!これなら行ける!…って何してるんだろうな…これはホームシックってやつか?」
その時声が聞こえてきた。
「正明~ご飯よ~。」
「今行くよ。」
アスタークはリビングへと再び出て行く。
リビングでは以前見たニュースが流れていた。
今回は何かの会見のようだ。
アスタークは椅子に座りながらニュースを見始めた。
ニュースは英語から日本語に翻訳され放送されている。
「今回の実験で世界各国に多大な影響を与えてしまい誠に申し訳ありません。」
「謝罪会見と聞いていましたが一体どのような事をしたのですか?」
「ディメンションクリスタルにエネルギーを入力する実験を我々は行いました。その結果、クリスタルから膨大な正体不明なエネルギーが放たれ世界各国で空間の歪みを報告を受けました。中には事故につながる大きな事象が起きており、今回の会見はこれに対しての会見です。」
「空間の歪みとは一体どのようなものなのでしょうか!」
「多くの報告例では居るはずのない人が見えたりすると言う現象です。これはディメンションクリスタルの性質とおなじになり、エネルギーを入力した結果、クリスタルの性質が増幅され世界に放たれてしまったようです。」
「今回の事故の対策はどのように対策をするのですか!」
「研究は続行されるのですか!」
「研究は続行されます。観測されたエネルギー波を遮断するエネルギーフィールドシステムを構築中です。これで世界への影響を防ぐことができます。」
ニュースを見ながらアスタークは食事を取っていた。
「何か難しい内容ね~。これどんな実験なのかしら?」
「なんでも異世界を観測する実験だそうで。」
「異世界なんてあるのかしら~。」
「…あるよ。確実に。」
「正明はっきり言うね。やっぱりロマンだからかな~?」
母とアスタークが話していると、さっさと食べ終えてしまった妹は自分の部屋に戻っていってしまった。
「もう。舞も会話に入ってくればいいのに~。」
「…。さてごちそうさま、部屋に戻るよ。」
「あら~早いわね。お粗末さまでした~。」
アスタークは食べた食器を片付けると自分の部屋に戻っていった。
「やはり俺の事が未だに影響しているのか…一度話をするべきだな。」
そんなことをつぶやきながらテレビの電源をつけた。
「少しは世間の話題を…。」
テレビを見ているがアスタークにはさっぱりわからず終始首を捻っていた。
「これ何処が面白いんだ…?」
アスタークはお笑い番組を見ているがいまいちピンっとこない。
チャンネルを次々と回すが初めて見る人ばかりで話題を掴めそうもない。
やはり最終的にニュース番組で落ち着いてしまうアスターク。
試しに番組表を開いてみると面白そうな番組があることに気がついた。
「ん?最先端科学を見る!これが科学だ!ってなんだ?二十一時からのようだが…後十分か。見てみるとするか。」
それまでの間ニュースを見ていた。
「ふむ…今週は快晴か。残り時間で明日の授業の準備をしておこう。あー、明日の授業は…情報と現代社会、音楽、英語、体育二時間か。英語…終わった…知識にはあるが記憶には何もない…これは予習しておかないといけないな…テレビ見終わったら…。」
アスタークは英語の絶望的な状況に目をそらしテレビを見ることにした。
予習はその後である。
そして二十一時になり番組が始まった。
「日本が誇る最先端技術を今夜はご紹介致します!」
「日本は技術大国だと知識にはあるが…どんなものが紹介されるんだ?」
「今回紹介するのは取材、公開許可が下りたばかりのエネルギーフィールドシステムです!現在国際科学研究機構でも使われているシステムです。このシステムは本来日本の護衛艦のみに適応され、同盟国にも輸出している日本語誇るシステムです。」
「そういえばさっきのニュースでもエネルギーフィールドシステムとか言ってたな。結局それは何なんだ?シールドみたいなものなのか?」
「このエネルギーフィールドシステムと言うのは物体が発生させるエネルギーをエネルギーフィールドのエネルギーで相殺し、艦を守るシールドになります。このフィールドには膨大なエネルギーを使うらしく、核融合炉を核とした護衛艦しか搭載できないと言われています。実際の映像をお見せしましょう。」
画面が切り替わり海洋上に護衛艦が一隻浮かんでいた。
そこに唐突に対艦ミサイルが護衛艦に突き刺さった。
しかし、何かに阻まれるように対艦ミサイルは護衛艦の前で爆発し、円形の形に爆発の煙が広がっていく。
そして再び画面が切り替わる
「御覧頂いたように護衛艦の脅威である対艦ミサイルでさえ防げてしまうシステムになります。エネルギーフィールドは着弾地点を中心にエネルギーが減衰してしまいますが、周りのエネルギーが集まり均一になります。しかし、その分エネルギーフィールドの強度が下がってしまうためフィールドコントロールが必要になります。これは新しいコントロール方法で同じ地点に着弾させないようにするコントロールで―」
「ふむ…魔法のシールドと同じ原理か。ただ、エネルギー効率は悪い様に見えるな。」
アスタークがあれやこれやと考えているうちに特大の発表があると言ってCMに入っていく。
「やはり、どこから攻撃が来るかわからない海洋上だと三百六十度シールドを張る必要があるのか。たしか…潜水艦とか言う海の中を進む艦もあるみたいだしな。」
一分ほどするとCMが開け番組が始まった。
「今回メディア、一般初公開の政府の秘密建造艦をご紹介します。これは後日改めて発表されますが、本番組は政府からの許可を得て先行公開させていただきます。こちらがその映像になります。」
それは護衛艦とは違うフォルムをし、とてつもなく巨大だった。
ステルス性などはじめから考えておらず、エネルギーフィールドシステムを初めから採用した艦のようだ。
「ご紹介します!現代では絶滅した船、戦艦!その名も大和です!公式発表スペックによりますと、動力は専用小型核融合炉三基搭載、シールドシステムはエネルギーフィールド、VLS七十二セル、三連装短魚雷発射管十基、CIWS十四基、ハープーンSSM四連装発射機十基、四十六センチレールカノン3連装砲二基、情報処理装置、対空、対水上レーダー、ソナー、電子戦装置、チャフ発射機六基。システムは守りのイージスから日本オリジナルの貫くブリューナクに変更されており、より正確に標的を捉えられるようになっています。速力は三十五ノットです。」
「戦艦…戦う船か。たしか…今の時代戦艦は良い的と金食い虫だが、こんな船何処で使うんだ?」
「近年アジア周辺諸国との摩擦が大きくなる中防衛省は日本が誇る軍事力を誇示しようとこの戦艦大和と建造したようです。防衛省によると大和と単独任務が可能とされており、いかなる攻撃も核融合炉二基のエネルギーフィールドが無効化するため損害を被る可能性は低いとの事。主砲も新世代のものになっており相手に躱すことを許さないと言われています。銃弾、ミサイルからすべて純国産に換装されており、エネルギーフィールドから攻撃できる作りになっていると言われています。」
「シールドの内側から攻撃できるのか。これを魔術に使えばシールドの内側から攻撃し放題に?」
「大和は二ヶ月後を目安にエネルギーフィールド負荷テスト、日米軍事演習を控えています。」
「よし。そうと決まれば早速防御魔術を開発だ!先ほど作った攻撃魔術…名前決めてなかったな…そう、ビット魔術で決定!ビット魔術は物理的、魔法的干渉に弱いからな。それをシールドで防御すれば…。おそらくエネルギーフィールドも同じ周波数で攻撃を通しているのだろう。だから魔力の波長を同期させて…同期させるのはすべて演算魔術に任せる形にすれば…」
アスタークはその後テレビを消すと机に向かって一心不乱に魔術を作っていた。
魔術も魔法も使えないのにアスタークは必死であった。
はい。アルペジオに影響されたのもありますが、この技術世界では鉄が多く使われているため共振破壊魔術は非殺傷魔法として便利なのです。(魔法の概念が無いため使えませんが。
戦艦大和についてはレールカノン(レールガンを主砲にしたもの)を搭載し、CIWSを十四基搭載することで対空、対艦ミサイルに対して防御力を上げました。
VLSを七十二セル搭載することで長期戦も行えます。
が、大金食いです。
そこは昔と同じで、1回の出撃でイージス艦(全込)3隻分の維持費が掛かります。
核融合炉は未来技術で海水でも使えるようになっているため、海の上にいる間は無限に核融合を行います。
2基をエネルギーフィールド専用電源にすることでフィールドの修復の早さと出力を大幅にあげています。
残り1基は艦内電源とレールカノンの電源となっています。
レーダーシステムなどの細かい部分はイージス艦と同じです。
演算魔術は自分の足元に魔術式を魔力で展開し魔力の有り無しで演算をするアスタークお手製簡易魔力コンピュータです。複数展開することで計算速度を飛躍的に向上させることができます。(グリッドコンピューティングです。




