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異世界と私と銃とファンタジー  作者: 白築 える
閑話 とある魔術師の非日常
42/217

汚名挽回と妹と異世界解釈




結果から言うと、負けた。


いきなり上級者向け入り口から出撃した結果、蜂の巣にされ、味方を誤射したりグレネードで吹き飛ばされたりと散々な目にあった。


「次は間違えずに初心者用行こう…。」


アスタークは初心者用の入り口に入っていくが、ロビーに戻されてしまった。


"貴方の階級では初心者用戦場へ出撃することはできません。ロビーに転送します。"


アスタークはメイン画面を操作し、自分のプロフィールを確認する。そこには少将と書かれている。


「少将か。そりゃあ入れないよなぁ。通常でトレーニングするしか無いか。」


アスタークは通常の入り口に入ると戦場へ転送されていく。


"マッチング処理を行います……完了。戦場へ転送します。"


システムアナウンスと共にアスタークは何かの中に転送された。


「(今度は何処からでるんだ?)」


すると背後にある壁が下に開き始めた。

そこには遥か下に地面が広がっている。


「(輸送機の中か。)」

「ひゃっはー!行くぜ!」


そう言うととなりに居た人が飛び降りていく。


「うらあああ!」

「ひゃっほーい!!」


次々に飛び降りていく人々…兵士たち。

アスタークは背中に何か背負っているのに気がついた。


「パラシュートか。よし!行くぞ!」


そう言うとアスタークも空へ飛び込んでいった。

落下で風をきる音が耳に響く。

地上に近づくに連れて銃声が僅かに聞こえ始める。

周りがパラシュートを開き始めたためアスタークもパラシュートを開いた。

使い方はわからなかったが、システムのアシストもあったためすんなり開くことができた。

そして着地の方法も頭のなかに入ってくるのだ。


パラシュートで降下中も地上から銃弾が何発もこちらに向かって放たれる。

何人かが銃弾に被弾しダメージを受けてしまっている。

アスタークは空中から地上に向けて銃撃を行った。

地上の敵兵士はそれを隠れるようにして銃弾から身を守る。


その隙に下降組は地上に降り立つ。

パラシュートを外すと、アスタークはすぐに味方とともに遮蔽物に身を隠す。


「俺の銃どこに落としたかな…。」

「何落としてるんだよ。馬鹿か。」


笑いながら話し合っている二人がいる。

片方はハンドガンのみしか持っていない。

どうやら降下中に銃撃を受け落としてしまったようだ。


「さて、練習しますか。」


アスタークは移動し、遮蔽物から顔を出して敵陣を見る。

すかさず銃弾が飛んでくるが、すぐに身を隠し、飛んできた場所へ制圧射撃を行う。


「なかなか対人だと厳しいな。」


アスタークはスタングレネードを遮蔽物から投擲すると爆発するのを待ち、破裂音が聞こえたと同時に遮蔽物から飛び出した。

遮蔽物に隠れているから安全だと勘違いしていたのか、敵兵士の一人は閃光と音により視力と聴力を奪われていた。

そこに頭に一発、敵兵士を倒した。

アスタークは既に敵陣近くまで来てしまっている。

既に奥から足音が聞こえ始めているのだ。

アスタークはスモークグレネードを道の奥へ投擲すると一旦自軍の奥へ下がる。

しかし、何処からか見られていたのか、腕に一発銃弾が命中してしまった。

幸い左腕だったため銃の命中精度はあまり下がらずに済んだ。


アスタークが遮蔽物に隠れると同時に銃弾が先ほどまで居た場所に雨のように撃ち込まれた。

あと少し遅かったら背中から撃たれていただろう。


「危なかった。左腕のダメージが回復するまで待とう。」


アスタークは銃だけ壁から出すと引き金を引き、制圧射撃を行い敵の進軍を止める。

それと同時に弾切れを起こし引き金が引けなくなった。

すぐにリロードを行うと左腕のダメージが抜けも安定した射撃を行えるようになった。


が、足元に何かが転がった。


「っ!?」


アスタークは瞬時に反対側に身を投げた。

地面に倒れ伏すと同時にそれは爆発を起こし周りに破片をばらまいたのだ。

そう、グレネードが飛んできたのだ。


アスタークは少なからずダメージを受けてしまったが、まだ動けなくなるほどではない。


「野郎やってくれたな、投げ返してやる。」


アスタークはそう言いながら地面から起き上がるとグレネードのレバーを握りピンを抜く。

そして先ほどと同じ位置に投擲を行う。

爆発するまで戦績を見ていたアスタークは爆発と同時にキル数が二増えたことを確認した。


「よし。やってやったぜ。」


その後も順調に敵を倒していくが、徐々に銃撃の回数も減り、ナイフや銃床での攻撃も増えてきている。

なぜなら降下してから一度も補給もリスポーンもしていないからだ。


「弾がなくなったか。ちょっと借りますよっと。」


倒した敵の武器を奪うとそのまま進む。

弾数はいくつ入っているかわからないが、これを使うしか無い。

予備のマガジンは無いため使いきりだ。

通路を進んでいると敵が二人同時に現れた。

すぐに引き金を引くが、一人しか倒せず逆に銃撃を受けてしまった。


「(こりゃ死んだな。)」


上半身にかけて銃撃を受けたアスタークはヘッドショットを貰いその場に倒れた。

暫くの間戦場を見渡せる待機場にてリスポーン時間待ちをしていると、リザルト画面が表示された。

どうやら時間切れのようだ。

リザルト画面にはアスタークは三位と位置づけられており、まずまずといった結果である。


「三位か。まあまあか?ん?」


アスタークはメイン画面に数字が表示されていることに気がついた。

それはあと数十分でゼロになろうとしている。


"残り十分です。ログアウトの準備を行ってください。"


ヘルメット自体から警告のアナウンスがながれ、アスタークはヘルプを開いていた。


「そうか、三時間の時間制限があるのか。後十分ではできそうもないな。ログアウトするか。」


アスタークはメイン画面からログアウトを選択すると一瞬にしてあたりが白くなりゲームの選択まで戻された。

更にここからシャットダウンを選択する。


"システムをシャットダウンします……。"


アスタークの体に感覚が戻った。

ヘルメットを外すとベッドから起き上がる。

凝り固まった筋肉をほぐすと、ヘルメットを元あった位置に片付ける。


「さて、明日は土曜日だな。町中でも歩いてみるか。とりあえず今何時だ?」


アスタークは時計を見ると一六時三十分に帰宅してからゲームをしたりなど、していたため二十時になっていた。


「もうこんな時間か。少しリビングに行ってみるか。」


そう言うとアスタークは部屋を出てリビングへ向かった。

リビングではテーブルに盛りつけられた皿を並べている母親の姿が居る。


「あ、正明、舞呼んできてくれる~?」

「わかったよ。」


アスタークは少し戻り妹の部屋をノックし、外から声をかけた。


「飯だってよ。」


中からは音楽が聞こえてくる。

おそらく聞こえていないだろう。


「自業自得だな。」


アスタークはリビングに戻っていく。


「呼んでおいたよ。」

「ありがとね。ささ!食べましょう!」


食卓に並んでいる食べ物は昨日食べた量より少し多く感じる。

それにアスタークもあまり食べたことがない魚が並んでいるのだ。

向こうの世界では内陸に腐りやすい魚などは流通しないだの。

しかし、この世界には冷凍する技術があるため鮮度を保ったまま搬送が可能なのだ。


「(鮮度もいい。それに味付けも初めて見る。)」


アスタークは椅子に座ると箸を手に取る。

相変わらず知識にはあるが使いにくい物だ。


「いただきます。」

「は~い。召し上がれ~。」


アスタークは魚を一口口に入れる。

それは味噌で味付けをされた魚で、更に柔らかい。

さらにそれに白米を合わせるととても美味しい。


「美味しいな。」

「作ったかいが有ったわ~!月曜日楽しみにしててね!」

「ああ。期待してるよ。」

「よーし。母さん頑張っちゃうぞー。」


するとそこへ妹の舞がやって来た。


「ちょっと、呼んでくれてもいいじゃない。」

「正明に呼びに行かせたわよ~。」

「知らないわよ。来てないんじゃないかしら。」

「いや、行ったぜ。部屋の扉をノックして声をかけた。その際に音楽が漏れてきていたな。」

「まあ!音量下げなさいって行ってるでしょ。耳悪くするわよ。」

「私の勝手よ。」


そう言うと椅子に座る妹。


「(やけに反発する妹だな。昔はそんなでもなかったが何か有ったのか、それとも反抗期なのか…。)」


食事を食べ終えると、妹はそそくさと部屋に戻っていってしまった。

アスタークは与えられた記憶を元に妹の事を考えていたが、どうしても出てこない。

トラウマを掘り返しそうだが、あえて母に聞くことにした。


「なぁ、母さん。」

「な~に?」

「舞の奴どうしてあんなに反抗するんだ?」


その言葉を発した時母の動きが止まった。

食器の洗う音が聞こえていたが、今では水が流れる音しか聞こえてこない。


「(やっぱり駄目な話題だったか?それとも…。)」

「…そうね。正明は知らないのよね。」


母の雰囲気が変わった。

それは穏やかな雰囲気から一変して、暗く冷たい雰囲気だ。


「あ、いや、話したくないならいいんだ。」

「いえ、今まで聞きもしなかったから今更っていうのもあるのかな。正明は聞いて後悔しない?」

「(後悔も何も俺は他人だしな…しかしこの世界では家族ということになっている。これは聞いておくべきか。)大丈夫だ。」

「そう。じゃ、片付けながら話すね。」


アスタークは椅子に座りながら母の話を聞く。


「そうね。あれは正明が小学生の頃からね。」

「(小学生?もしかしてこの記憶にあるアレが原因なのか?)」

「その時まで正明が虐めにあっていたなんて知りもしなかった。」

「言わなかったからな。」

「そう。何も言われなかったから。薄々様子がおかしいとは思っていたんだけど。まさかあんなことになるなんて思いもしなかったのよね。」

「…カッターナイフで刺され、同級生を半殺し。」

「うん。それで緊急保護者会が有ってクラスの親全体にそのことが知れ渡ったの。その次の日には子供たちに、さらに次の日には学校中の親と子供に。」

「噂ははやいからなぁ。」

「正明の事は舞にも降りかかったの。舞は次の日から同じように危ない行動をしないかと避けられ始めたの。でも正明ほどではなかったの。」

「俺は確か…病院から退院して学校に戻ったら誰も話しかけてこなくて話しかけても皆逃げられたな。いじめてたグループも俺を見ると逃げ出すようになった。」


アスタークは記憶を頼りに話す。

ふっとアスタークは気になったのだ。


「(たしか傷が残っていたはずだ…しかし俺には刺された傷跡は…!?)」


アスタークはさり気なく服の中に手をいれると腹部を触る。

そこには本来有り得ないはずの傷後があった。


「(そんなバカな!?これもあの神がやったのか?…いや、考えても無駄か…。)」

「その頃からかな…舞が少しずつ変わってきたのは。舞にも言われたよ。なんで正明のせいで私まで白い目で見られなきゃいけないの!ってね。」

「舞には悪いことをしたな…俺は部屋に閉じこもってたからな。」

「正明は悪くないわ。悪いのはいじめてた奴らよ。あの時は私本当に怒ったんだからね。」

「ありがとう母さん。」

「いいのよ。だって家族じゃない。」

「家族かぁ…ありがとう。部屋に戻るよ。」


そう言うとアスタークは立ち上がると部屋に戻っていった。


「家族か…俺は孤児院だからな。もしあの頃家族があったらこんな感じだったのか?」


アスタークは昔の記憶を思い出しながらテレビの電源を入れた。

お笑い番組などのエンターテイメント系、ドラマなど興味は無いらしくニュース番組をつけている。

今日も昨日の話題で騒いでいるようだ。


「だいたい異世界など存在するわけがない。」

「いや、異世界と言わずともパラレルワールドは存在する!」


この二つの勢力が交互に答弁を交わしているようだ。

アスタークにとってこの答弁は無意味な物に感じるが、学者が提示する科学的根拠などそういうものに興味があった。


テレビを真剣に見ていると一人の学者がとある人物の事を引き合いに出してきた。


「ここでジョン・タイターが仮に本物のタイムトラベラーだとして仮定しよう。そうすると我々がいる世界も無限に存在する世界の一つにしか過ぎない。これを世界線と言う。異世界とは世界線が分岐した我々の居る世界線とは違う世界のことを指しているんだ。」

「それは架空の人物ではないか。大体彼の言ったことは外れているし、今回のこととは関係ないではないか?」

「彼の言っていたタイムトラベルは簡単に言うと、限りなく近い世界線の移動だ。今回の実験では限りなく近い世界線が観測される可能性が高いとも言える。そして、それを乗り物にしたら彼の言ったとおりになる。それにバタフライエフェクトと言う言葉を知っているかね。彼の居た世界線と我々の居た世界線は僅かだがズレていると言っている。だから当たらなくて当たり前なのだ。小さな誤差が経過と共に誤差といえない値になる。そうだね?」

「もちろん知っている。しかし、貴方の言っていることは彼が本物だった場合のことだ。」

「もちろんだとも。彼が本物だという証拠は何処にもないのだからね。」


アスタークは二人のやりとりを聞いていて世界線と言う言葉がぴったり当てはまると確信していた。

この世界とあの世界は世界線が違うが無限に存在する世界の一部だとアスタークは認識した。

しかし疑問があった。テレビで言っていたことを解釈するとあの世界とこの世界はつじつまが合わないのだ。

それは世界の変化が大きすぎるのだ。

しかもあの神は隣の世界の(・・・・・)と言っていた。


「この世界は何かがおかしい。今の話が本当ならこんなに世界が違う筈がない。」


アスタークが考え事をしているとニュース番組は次のコーナーへ移っていったのだった。




この世界線には秘密があります。ズレが僅かな隣り合わせの世界なのになぜこうも世界が違うのか。

それはまだ先のお話…(具体的に言うと番外編ぐらい先のお話)

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