VRFPSチュートリアル
「ただいま。」
「おかえり~。正明~お弁当どうだった!」
「え?ああ、美味しかったよ。」
「母さん感動したわ!月曜日からもっと作るからね!」
「期待しているよ。」
「よーし。頑張っちゃうぞー。」
アスタークが部屋に入ろうとした時、舞に話しかけられた。
「あんた、母さん止めなくていいの?どうなっても知らないよ。」
「? どうでもいいだろ?」
「私は警告したからね。」
「そうか。ところで部活どうした?」
「あんたに教える義務はない。」
そう言うと部屋に入っていってしまった。
「なんだったんだ?」
アスタークは部屋にはいるとカバンを置き、制服をハンガーに掛け綺麗に片付ける。
「さてっと、今日はこのパソコンと言うものを弄ってみよう。」
アスタークは椅子に座り、パソコンのスイッチを入れた。
するとOSが立ち上がり、三十秒ほどでデスクトップが表示された。
「おぉ…。」
アスタークは適当に操作していく。
お絵かきツール、動画サイト、SNSなど…。
「凄いな。こんな箱みたいな機械がこんなに自由にものを動かせるとは…ん?このインターネットっていうのはギルドネットワークに似ているな…いや、原理その物は同じなのか?だとしたらギルドネットワークは誰が作ったんだ?」
アスタークは知る由もない。
「まぁ、それは置いておき、次だ。この兜…ヘルメット?は何だ?…そもそもゲームとは何だ?娯楽の一種か。やってみようか。」
アスタークはヘルメットを持ちながらベッドへ腰掛ける。
「で?このヘルメットを頭につけて、横になるっと。」
"VR-ECHOS01起動します。認証しますか?”
「(これどうやるんだ?)」
"認証しますか?認証する場合は脳波を安定させてくださいこの状態が30秒続きますと終了します。"
「(脳波か。やり方がわからんな。魔力と同じやり方で出来ないか?)」
"認証しました。初期処理を開始。脳波同期開始…完了、接続開始"
「っ!?」
その瞬間意識が引っ張られるような感覚がアスタークを襲い、目の前の風景があっという間に白い空間へ置き換わっていた。
それに寝ていたはずだがいつの間にか立っている。
「ここはどこだ?」
"プレイするゲームをライブラリから選択してください。"
「これは…?」
目の前には文字と画像が組み合わさった窓が浮いている。
ライブラリには二種類のゲームがインストールされている。
一つはVRMMORPG フリーライフオンライン、もう一つはVRFPS ウォーワールド。
試しにそれを触ってみると、ゲームの簡単な説明が表示された。
「このフリーライフオンラインは興味はないな。もともとそんな世界に居たしな。そんでもってこっちのウォーワールドは…銃?ああ、この世界の主要武器か。面白そうだな、やってみるか。」
"ウォーワルドを起動します。"
そうアナウンスが流れると景色がめまぐるしく変わり、いつの間にか自分の服装も変わっていた。
"ウォーワールドへようこそ。ID情報をロードします…ようこそ!ウォーワールドへ!銃弾と硝煙であふれるこの世界で生き残れるか!"
アスタークの今の服装は迷彩服にヘルメット、手にはAK-47が握られている。手に握っている銃をまじまじと見るアスターク。
「これが銃か。とりあえず練習から始めよう。」
アスタークはメイン画面からチュートリアルを選択すると、周りが暗くなり景色が変わったのだった。
目の前には人を模した的が三個置かれている。
"目の前の的を撃ってください。撃ち方は的に狙いを定めトリガーを引くだけになります。システムアシストが入るため初心者の方でも確実に撃てます。"
「こうか?」
アスタークが的に狙いを定め、撃とうと意識すると指が勝手に動くような感覚に襲われる。
「これがシステムアシストか。」
それと同時にフルバーストで放たれた銃弾が的を穴だらけにしていく。
初めての為アスタークは予想もしていなかった銃の反動に腕を持って行かれ銃弾は的のあちらこちらに着弾し、一部地面にも着弾していた。
「おぉ…今のはちょっと予想外だな。それにしても銃というのは恐ろしいな。こんなものがあちらの世界にあったら戦争が変わるぞ。それはそれで…もう一つの的を狙うか。今度は反動に気をつけよう。」
アスタークは引き金を引くが、銃弾は発射されない。
「ん?」
"弾がなくなった場合はリロードを行ってください。リロードと意識すればシステムがサポート致します。"
「リロード。」
アスタークは自然な手つきで銃の空になったマガジンと予備のマガジンを入れ替える。
それは上級者から見たら遅い手つきであるが、システムのサポートのおかげで銃を初めて弄るアスタークにも使い方がわかるのだ。
「よし。喰らえ!」
アスタークは反動を制御しつつ目の前にある2つ目の的にフルバースト射撃を行った。
先程より集弾率は良く、的の中心を撃ちぬいていた。
弾を撃ち尽くすとすぐにリロード動作を始める。
常に死と隣り合わせだった環境がアスタークの銃を扱う技術を飛躍的に早めていく。
リロード速度は先程よりも早く、効率的になっていた。
"グレネードについて、腰に付いている物はグレネード、手榴弾と言われます。標準装備でグレネード、スタングレネード、スモークグレネードの三つが装備されています。的に向かってそれらを使ってみましょう。"
「これはグレネードか。レバーを握ってピンを抜いて投げるっ!」
グレネードは的の下まで飛んでいき少し転がると小規模な爆発を起こし、的を粉砕する。
「炎の爆発魔法みたいだな。で、こっちはっと!」
次に投げたのはスタングレネードだ。
投げた本人はどういうものかわかっていないため飛んでいったグレネードを直視してしまう。
次の瞬間音とともに閃光が当たりに走った。
「うわ!まぶしっ!」
アスタークは目を抑えると視力を奪われた目を徐々に回復させた。
「そうか、さっき投げたのは目眩ましのグレネードだったのか。次のグレネードはっと…あっ!」
アスタークは投げようとした時に不意にグレネードを落としてしまった。
ピンを抜くところまではシステムがサポートするが投げるに至っては自力なのである。
落としたグレネードが突然煙を炊き始めた。
「うわ!なんだこれ!煙が…前が見えん!」
スモークグレネードを足元に落としてしまったアスタークは煙にまみれ、煙の中から出てきたのである。
「ひどい目に合ったぜ…。とりあえずグレネードの特徴は覚えたな。」
"次に部位判定について解説を致します。"
システムがアナウンスをすると目の前に人が突然現れた。
アスタークは一瞬驚いたが、すぐに落ち着きを取り戻す。
"銃弾は各のマーカーで示される部位に当たると様々なデメリットを起こします。"
アナウンスとともに現れた人の体に様々な色のマーカーが表示された。
"足に銃弾が命中すると動きが鈍くなります。両足に命中した場合その場に倒れてしまいます。目の前のbotに撃ってみてください。"
「こうか?」
アスタークは片足ずつに銃弾を一発ずつ撃ち込んだ。
すると人(bot)はその場に倒れてしまった。
次のアナウンスが始まると何事もなかったかのように立ち上がった。
"次に腕に銃弾が当たると命中精度が落ちます。これはどちらの腕でも同じようになります。次は胴体です。胴体に銃弾が命中すると銃の種類によりますが、大きく仰け反ります。その間は無防備になるのでご注意ください。最後に頭になりますが、頭に銃弾を当てられた場合は即死となりますのでご注意ください。"
「そうなのか。いろいろ設定があるんだな。」
"頭以外のデメリット時間については、足が十秒、腕が二十秒、胴体が三秒になります。また被弾を続けると死亡するため気を付けましょう。目安としては次第に視界が狭くなり、体がふらつき始めます。"
「細かいな。」
"では実際にAI戦闘を行ってみましょう。体の感覚を得るため、敵は体の様々な部位を積極的に狙ってきます。物陰に隠れながら敵を殲滅してください。また、被弾におけるデメリット、死亡を体験する事もおすすめされます。"
「いざゲームになった時に体験していないと焦るからか。」
"それではAI戦闘開始します。"
アナウンスが言い切ると建物の中にアスタークは立っていた。
障害物のコンテナなどが置かれており、銃弾から身を守る術がたくさんある。
「どれ、ゲームだから死なないんだ。一回銃弾を受けてみるか。」
アスタークはコンテナの影から飛び出すと敵が正面に居た。敵はこちらを視認してから数秒経つと銃撃を行ってきた。
銃弾はアスタークの足や腕、胴体に当たる。
「ぐっ!あたった箇所は痛みの代わりに痛みが重さに変換されるのか。」
アスタークはすぐさまコンテナに身を隠す。
「銃弾を食らった体が重たい。まるでおもりをつけているようだ…。それに少しふらつくな。…よし。ここからが反撃だ!若干腕や足が重いが、行ける!」
身を引くくし、コンテナの影から飛び出すと先程よりこちら側に迫ってきている敵の姿が会った。
反射神経はあちらの世界で嫌というほど鍛えられているため反応速度は上級者並に早い。
すぐさま銃を向けると命中率の下がった体で銃撃を行う。
なるべく胴体の上を狙った射撃は命中率の低下があり、弾がバラけた。
しかし、それが狙いだった。
バラけた弾丸は敵の頭を撃ち抜き一人倒したのだ。
「よし。っと足の重みは消えたな。後は腕だけ―おわ!」
そこに銃弾が撃ち込まれる。
距離も有ったためか銃弾はアスタークに当たらずコンテナに当たり、甲高い音を立てながら食い込んだ。
「あぶねえあぶねえ。今度はこっちから撃たせてもらうぜ!」
コンテナの間を通り敵との距離を詰めていく。
やがて敵の背後に回りこむことに成功すると腕の重みが消えているため慎重に狙いを定め、引き金を引いた。
銃弾が敵の頭を貫き二人目を倒すことができた。
「よし。後何人いる…?」
頭に浮かんできた戦績を確認する。
「後一人か。どこだ…?」
コンテナの隙間から顔を出しつつ当たりを見回す。
それでも見つけることができない。
アスタークは前進しようとコンテナから出た時だった。
視界の端に何か光ったように見えた。
それはスナイパーライフルのスコープが反射した光だった。
銃弾を受け視野が狭まっていたアスタークはそれに気がつくのが遅れ銃声と共に体の動きが止まった。
「(な、なんだ!?体が動かない?)」
アスタークの体は地面に吸い込まれるかのように倒れると、次の瞬間には最初に立っていた位置に戻されていた。
「は?…ああ。死んだのか。銃はあっさり殺せるし、あっさり死ねるんだな。さて、さっきのあれは比較的敵陣地に近い場所に居た。長距離から狙い撃てる銃か?厄介だな。コンテナに隠れながら進むか?いや…よし。」
アスタークはコンテナからわざととび出すと自分の位置を相手に悟らせた。
案の定敵はそれを狙撃してくるが、アスタークは敵が撃ってきた位置を確かめたのだ。
「そこか!」
再びコンテナに隠れるとスモークグレネードを掴みレバーを握りしめピンを抜いた。
敵が撃ってきた場所へ投擲すると、煙が出始めた。
「今!」
アスタークはコンテナの隙間をかいくぐり一気に距離を詰めていく。
そして煙の中から長銃を持った敵が出てくる。アスタークは銃床で頭を渾身の力を込めて叩きつける。
それにより敵は倒れこみ、起き上がろうとするが頭に銃口がつきつけられ引き金が引かれた。
「よし。一回殺されたが倒してやったぞ!」
"チュートリアルクリアおめでとうございます。サーバー接続待機ロビーに転送します。"
アスタークは再度最初の場所へ飛ばされたのだった。
「ふむ…銃とグレネードの使い方は覚えたぞ。次は対人戦だな…先ほどとは同じようには行かないだろうな。気を引き締めて行こう!」
アスタークは出撃待機ロビーへ接続する。
すると周りが一瞬暗くなり、再び明るくなるとどこかの建物内にいた。
周りには銃を持った人々が溢れんばかりに居る。
ロビーは広いのだが、一箇所に集まっていたり、忙しく何処かの入り口に入っていく人々の姿があった。
「すごいな。これがすべて人なのか。おんらいんげーむと言うのは現実と区別がつきにくいな。とりあえず適当に部屋でも入ってみるか!」
アスタークは好奇心を抑えきれず入り口に向かっていった。
そこの入り口は初心者用、通常、上級と区別されており、アスタークは気が付かずに上級の入り口に入ってしまったのだった。
設定でしか出なかったVR要素が今ここに!




