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異世界と私と銃とファンタジー  作者: 白築 える
人間の限界を超えし者
35/217

覚えてる?覚えてない 私は貴方、貴方は私



翌朝、いつもより遅い時間にイルミス達は目が覚めた。

鈴とアイリスは未だ相変わらず寝ている。


「おっはよー!皆起きたー?今日も元気にいってみよー!」

「ミミ、お前は朝から元気そうだな…。」


シュナイダーは朝から叫んでいるミミに”またか”っと言った気持ちで話しかける。


「僕は元気がとりえだからね!あっ!」

「ぐふぅ!?」


ミミは周りをくるくると回っていたが、石につまづいてしまった。

そして幸か不幸か寝ている鈴の腹部にミミの頭が勢い良く叩きこまれたのだ。


突然の衝撃と痛みに寝ていた鈴は思わず目が冷めてしまった。


「あわわ!大丈夫!?」

「お”お”お”お”……大丈夫じゃ…ありま…せん…。」


鈴は腹部を抱えながら体を丸めていた。

それに対してミミはあたふたとしている。


「そ、そうだ!アイリスさん起こそう!アイリスさ―あだ!?」

「なによ…!?」


あまりの騒がしさに若干の倦怠感は残っているがアイリスが起きていたのだ。

そしてミミに近づこうとした時ミミが振り返りざまにこちらに前進して来たため二人はぶつかり、お互いに頭をぶつけたのだ。


「朝から不幸だわ。」

「いてて。あ、アイリスさん!鈴さんに治癒魔法かけてあげて!」

「い、いや、だ、だいじょうぶだから!」

「大丈夫なら私は座るわ。だるいからね。」

「あー。ミミ戻って来い。」

「うー。分かった!」

「迷惑かけたな。」

「いや、いいんだ。二人共起きたならラターク街に戻るぞ。」

「リょ、了解サー。」

「わかったよ…」


昨日に引き続き魔力枯渇による後遺症に悩まされるアイリスと、朝突然の負傷をした鈴はゆっくり歩き出した。


「ちょっとゆっくり歩いてくれる?」

「わかった。」


アイリスの要望により歩く速度が少しだが遅くなった。


「助かるわ~。」

「干し肉美味しいなぁ。」

「…よく朝から重い物食べれるわね…。」

「美味しければいいのだよ!アイリスくん!」

「…。」

「俺も腹減ったなぁ。鈴ちゃん少し頂戴~。あ、これって間接キスじゃね!ひゃぶへええええ!」

「うるさい…。」

「お肉美味しいなぁ。」



鈴は干し肉を食べながら歩き、アラスは鈴にちょっかいを出そうとした所をあまりにもうるさいためアイリスの杖が振られたのだった。


「イルミスのパーティも大変だな。」

「…シュナイダーのパーティも大変そうだな。」

「はぁ…。」


イルミスとシュナイダーのため息が重なった。


「ねえねえ!その槍かっこいいね!それルーツ国の正規兵士の物でしょ!どうして持ってるの!このパーティの人たち皆持ってるよね!ねえねえ!」

「あー。これはだな深いわけがあってだな。」

「深いわけってなに!」

「それはだな…。」

「なになに!」


アームはミミの質問攻めにあっており、困り果てているようだ。

イルミスとシュナイダーは二人でため息を付いているのであった。

原因は言わずもがな後ろのメンバーのせいである。


イルミス達は予定より少し遅い時間にラターク街に帰還すると、シュナイダー達は一度ギルドに行ってくると言い別れてしまった。

それに対してこちらのパーティはアイリスの不調もあり、宿取りはイルミスがすべて行ってくれたのですんなりと宿に戻れたのだった。


「おやすみ。」

「おやすみ…ってさっき起きたばっかりだよ!」

「私は疲れてるのよ…少しは察しなさい…。………。」

「寝るの早いなぁ。とりあえずイルミスの部屋行こっと。」


鈴は部屋をでて鍵をかけると、イルミス達がいる部屋をノックした。


「鈴だよー。」

「鍵開いてるから入っていいぞ。」

「おじゃましまーす。」


鈴だけが入ると、アームが鈴の後ろを見ていた。


「アイリスはどうした?」

「寝ちゃいました。」

「そうか。相当魔力使ったみたいだな。」

「私には魔力が無いからさっぱりわからない感覚です。」

「例えるなら…そうだな…熱で体がだるくなるだろ?そんな感じだ。」

「あー。それなら分かります。」


そこで話が一旦落ち着くと、アラスが声をかけてきた。


「なぁ、鈴ちゃん。昨日のどういうことなんだい?」

「? なんのことでしょう?」

「いや、ほらあれだよ、俺が動けない時に言ってた事だよ。」

「え?それ以前に私途中から記憶が無いのですが、何かあったのですか?」

「え?」

「え?いやいや、鈴ちゃん本当に覚えてないの?デッドドラゴン倒したの鈴ちゃんなんだよ?」

「え?本当?」


鈴は思わずイルミスを見たが、無言で頷かれた。

次にアームも見たが、こちらも無言で頷く。


「えーっと…何があったのかな?」

「本当に覚えてないみたいだな。アラス話してやれ。一番近くにいて、何が起こったのか一番良くわかっているはずだ。」

「まぁ、一番近くに居たけどよ、はっきり言って何が起きたのかわからなかったぞ。…まあ、こんな事があったんだ。」


アラスは鈴が起こした行動を説明を始める。


「まず、鈴ちゃんがものすごいスピードで俺の目の前まで走ってきたんだ。それもあのミミちゃんより早くね。」

「私そんなに足速くないよ?」

「それでその後何か喋っていたみたいなんだけど、そんなことよりドラゴンの大口を両手で掴んで止めたんだよ!それでそのまま口を力任せに裂いたんだ!」

「え、なにそれ怖い。」

「で、次がよくわからなかったんだけど…、黒い光りとともに何か今まで見たこと無い銃が出てきたんだ。」

「? どんな銃ですか?」

「黒いフォルムに光の線がいくつも走ってて、腕に何か線が絡まってた。」

「ん~。そんな銃知識に無いなぁ。」

「で、なんて言ったかわすれちゃったんだが、何か言ったと同時にデッドドラゴンの体が消滅したんだ。続けざまに銃口を持っていたドラゴンの頭に向けると、頭も消滅したんだよ。」

「しょ、消滅?爆破とかじゃなくて?」

「その後ネクロマンサーが出てきたんだけど、鈴ちゃんが銃を向けたらワイバーンとネクロマンサーの片腕が消滅したんだよ。その後もう一度撃つと避けられちゃったけど、イーニャ街外壁が光の粒子になって消滅したんだよ。」

「んん~?わからないなぁ。似たような武器なら知ってるんだけど。」

「で、この後俺に喋りかけてきたんだよ。それも覚えてないよね?」

「覚えてないですね。」

「たしか…また何かあったら出てくるからそれまでサヨナラって言ってたような気がする。」

「…。」


鈴は無意識に腹部を押さえた。

それを見ていたイルミスは声をかけた。


「まだ腹が痛むのか?」

「え?あ、な、なんでもありません。」

「そうか。」


鈴は慌てて腹部から手を離す。


「と、とりあえず倒せたんだしいいんじゃないかな!」

「まぁ、それはそれでいいんだが、死体を消滅させたのはまずいと思うのだが…。」

「ちょ、ちょっとそれはわからないなー。」


鈴は苦笑いをしつつ誤魔化す。

すると扉がノックされる。


「シュナイダーだ。入っていいか?」

「ああ、いいぞ。」

「いまもどっ―」

「はーい!ただいまー!」

「…。」

「とりあえず、なんだ、そこらに座ってくれ。」

「ありがとな。」

「あっりがとー!」

「ギルドの方はどうだった?」

「ああ、やっぱり言われたよ。」

「やっぱり言われたか。」

「言われたんだよー!」

「…もしかして、もしかしなくても?」

「もしかしなくても、だ。」

「ご、ごめんなさい。」


事の発端はシュナイダー達がギルドに報告している時に言ったことが始まりだった。


「すまない、報告に来たのだが。」

「シュナイダーさんですね!そういうことはドラゴンが討伐されたのですね!」

「倒してきた!」

「すぐに回収員を向かわせます!」

「あー。それなんだが…。」

「はい?」

「ドラゴンの死体まるごと消滅しちまって何も残ってないんだ。」

「え?しょ、消滅?」

「あのね!一緒に行ったパーティの子がドラゴンに何かを向けたらドラゴンが消滅したの!てかそれ以前に聞いて聞いて!最初はドラゴンをシュナイダーが倒したんだけど、ネクロマンサーが邪魔してきてドラゴンがデッドドラゴンになっちゃったの!」

「で、デッドドラゴン…!」

「ああ、倒したというか消滅したから問題ない。ネクロマンサー本人もそう言ってたから本当だろう。…ところでこの場合の証明はどうなるんだ?」

「そうですね…。ギルドマスターに相談してきますので少々お待ちください。」

「厄介なことになりそうだ…。」

「大丈夫!問題ないよ!」

「お前はいつもそうだよなぁ…。」


しばらくするとギルドマスターの元へ向かっていった受付の職員が帰ってきた。


「大変しばらくお待たせしました。ドラゴンの事なのですが、戦った痕跡だけ見つかれば良いと言っておられました。」

「それならあるぞ。砕けた鱗や剥がれた鱗、血液。残ってるぞ。」

「それは良かったです。すぐに回収員を向かわせます。報酬は明日受け取りに来てください。」

「わかった。」

「後、消滅させた冒険者を連れてくるようにと言っておられました。」

「そうなるか…伝えておこう。(確かにそれを利用できればドラゴンなんて、いやどんなものだろうと消滅させてしまう。最強の駒ができるな。)ミミ、戻るぞ。」

「はいはーい!その前にお昼食べに行きたい!」

「これで我慢しておけ。」

「わーい!お肉!」

「容易い。」




「っと言うことがあったんだ。」

「なるほどな。そのギルドマスターは鈴を呼んで来いと。」

「しかし当の本人はなんにも覚えちゃいない。」

「そして挙句の果てには使った武器すら出せない。」


イルミス、アラス、アームの三コンボが鈴に叩き込まれる。


「うっ…なんかごめんなさい。」

「鈴何か心当たりは無いの―」

「無いです。」


イルミスの言葉を遮るように鈴は即答する。


「おい、鈴お前―」

「知りません。」


鈴の纏う雰囲気が変わった。

それまで陽気な雰囲気がいきなり凍りついたかのようになっている。


「部屋に戻ります。」

「お、おい!」


一瞬イルミスと鈴の目があった。

それはイルミスでさえ寒気を覚えるほど冷たい瞳だった。


鈴は部屋に戻るとすぐに自分のベッドに潜り込み、深い眠りへと落ちていく。

次に目がさめると果てしなく真っ白な空間にテーブルと椅子が2つずつ置かれている。

テーブルの上には紅茶が置かれており、反対側の椅子には誰かが座っている。

それはよく知っており、よく見ており、よく理解している人物――自分自身だ。

鈴は椅子に座る。


"またきたの?"

「こっちの世界に来てからこうやって逢えるようになったんじゃない。」

"それもそうだね。加護か魔力の影響かな。"

「でもそんなことはどうでもいい。私の体を使って何をしたの!」


テーブルを拳で叩く。

その反動で角に置かれていたティーポッドが床に落下し、割れて中身があたりに飛び散る。

もう一人の鈴が何気なしに指を鳴らすと何もなかったかのようにそれは消滅し新たなティーポッドがテーブルに置かれた。


"何をしたか、ね。私の希望どおりの事をしたんだよ。"

「私の希望…?」

"そうだよ。アラスさんに死んでほしくない。そんな思いが私を表に引きずり出した。そして与えられた加護を使ってあの醜悪なデッドドラゴンを消し去った。"

「それだよ!何をしたら消滅なんて芸当ができるのよ!」

"本来加護は鈴と言う魂に結びついている。それを自我がコントロールすることで加護を扱える。もちろんのことながら自我もまた魂とつながっている。私はそこに割り込む形で表に出される。その瞬間自我と魂に綻び、歪みが生じて加護の能力が変質する"

「何が言いたいの?」

"私の能力が銃火器及び爆発物を創造する能力なら私は想像を具現化する能力"

「私私って紛らわしい。何、貴方は想像したものをそのまま出せるっていうの?」

"あら、もう使ってるけど。"

「え―」

"さっき私が落としたティーポッド。あれは何処から出てきたの?それにこの椅子とテーブルは?"

「それは…。」

"例えばこんなふうにしてこうする。"


そう言うと鈴の近くにデッドドラゴンが現れた。

鈴は咄嗟に立ち上がり武器を取り出そうとするが、それより早くデッドドラゴンが光の粒子になり消滅した。


「それは…」

"これ?QDG、クアンタムデコンポーションガンって言うの。簡単に言うと量子分解銃ね。"

「そんなの知識にない…。」

"言ったでしょ。私の能力は想像を具現化する。銃の設定、フォルム、さえ考えればそれだけで具現化できる細かいところはすべて省略される。ただ、こういう武器があればいいと考えればそうなる。そんな能力。"

「チートもいいところじゃない。」

"私だって人のこと言えないでしょ。"

「まぁ、いいや。今後出て来ないで。」

"無理無理。私の精神が不安定になって限界に達した時に私が呼び出される。人間の精神はそういうふうに出来てるからね。"

「貴方が出てきたらろくな事にならないのよ!」

"何?あのいじめっ子のこと?あぁ、懐かしいね。私が出て半殺しにしちゃったんだっけ。その後貧血で倒れたみたいだけど。"

「確かに虐めはなくなった。でもそれからずっとひとりぼっちよ。…アラスを守ってくれたことは感謝してる。だけど貴方の異常性がまたあの人達を怖がらせることになると考えると私は!」

"私の異常性?違うよ。あれは本来人間がもつ自己防衛本能。私という存在は人間の本能と私の記憶とともに形成されてる。だから私にも私のような加虐性があるっていうことよ。"

「違う!違う!私は貴方とは違う!」

"おっと、これ以上は私が危ない。私は私の役目を果たさないと。"


そう言うと頭を押さえ込んでいる鈴にもう一人の鈴が手を乗せると、鈴は一瞬にして力が抜け地面に崩れ落ちた。





"おやすみ私。"





量子分解銃で存在が消えた理由は魂は波動存在として設定しているため、その空間にあったすべての物、魂は分解されました。


もう一人の鈴の能力

想像を具現化する能力

これは本来有り得ないものも具現化させるため世界に歪みを与えます。

QDGはまだ小さいためいいですが、巨大なものになるほど大きな歪みを与えます。


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