表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界と私と銃とファンタジー  作者: 白築 える
人間の限界を超えし者
34/217

デッドドラゴン討伐

最強の屍人形のデッドドラゴンがパーティの目の前に立ちふさがる。


「なに。もう一回殺してやろうじゃねえか!」


そう言うとシュナイダーはデッドドラゴンに斬りかかった。

渾身の力を込め、腹の甲殻部分へ大剣を振り下ろす。

甲殻をその重さと衝撃でヒビを入れ内側に隠れていた腹部の露出に成功したが、それもつかぬ間の出来事だった。

ヒビはすぐに修復され元通りになってしまったのだ。


「なんだと?」


そこにドラゴンの腕が振り下ろされる。

屍人形と化した生き物はリミッターが外れるためとんでもない力になる。

それ故今の状況は危険だといえる。


そこに銃声が鳴り響き腕の振り下ろし位置がずらされたのだ。

すぐさまシュナイダーは後方へ回避する。


「いてて。やっぱり腕に来るなぁオーバーロードは。」

「助かった。」

「お構いなく!」

「今度は僕が行くよ!援護頼んだよ!」

「おい!ミミ!お前の剣では無理だ!」


ミミは駆け出していくとドラゴンの目の前で体を回転させるとドラゴンの鱗をぬいながら直接体表に攻撃をし始める。

それは先程までのスピードではなく剣に反射する光がまるで舞っているかのように素早い動きをしていた。


「いやこれ、援護無理でしょ?」

「下手に打ち込むと味方に当たるわね…。」


そんなことを言いながら鈴はレールガンを再び出現させ、セットしていた。


「さて!お前は何回切り刻めば死ぬのかな!」


デッドドラゴンはその動きについていけずただただ攻撃を受けるだけになっている。

しかし、回復速度もさながらで攻撃を受けたそばから回復してしまっている。


「さすがAパーティは違いますね。人間の限界を軽々と超えてみせる。たまに生まれるんですよね、そういう存在が。ふむ…あの鈴とか言う女性はその類では無いでしょう。もっと特別な何か…そう。例えば神に祝福されているとか。」


「さすがに疲れてきたんだよ!早く死んでほしいな!」


少しずつだがミミの移動速度が落ち始めてきたのだ。

そして疲れにより集中力が切れかかっていた時、片足がいきなり攣ってしまったのだ。

それによりミミは地面に転がることとなった。


「いったい!足が!」


そこにデッドドラゴンの炎弾が準備される。


「イルミス!鈴撃てえぇ!」


アイリスがそう叫んだ。

ミミが倒れている近くにはイルミスがいる。

アイリスの叫び声に反応したイルミスはすぐさまミミの救助に行く。


「そこだ!」


レールガンが轟音を発しながら再び合金弾が放たれた。

それはデッドドラゴンが溜めていた炎弾に当たると、弾丸が魔力の炎弾と反応しデッドドラゴンの顔面で大爆発を起こしたのだった。


爆風による砂埃が晴れるとそこには頭部を再生しているデッドドラゴンの姿があった。


「まだまだ!AT-4 AST弾頭」


緑色の筒…無反動砲が現れると、それを担ぎ安全装置を解除し、デッドドラゴンの胴体に狙いを定めた。

引き金を引くとバックブラストが発生し、大した反動が起こらずに弾頭が発射された。

あっという間に弾頭はドラゴンに接触すると鱗をバンカーで貫通しデッドドラゴン内部で起爆をした。

その瞬間デッドドラゴンは内部からバラバラに吹き飛ぶ。

AST弾頭はたとえ土嚢や壁で遮られていようとも簡易バンカーが貫通し、その後起爆するため無意味なのだ。

ドラゴンとてそれは同じである。


「よし。」


鈴はAT-4を消すと爆風で砂埃が舞っている中心を見ていた。

その時空から声がかかった。


「ドラゴンの魂はこの世界で一番のエネルギーを持っているのです。これで倒せたと思わないことですね。」

「いい加減降りてきたらどうだ!」

「私が下りないのには理由があるのですよ。私が降りるということは――あなた方を殺すと言うことです。」

「言ってくれるじゃねえか!」

「ふふふ…。」


爆風が晴れると肉塊がミチミチと蠢き徐々に回復している光景が見えてきた。


「うぇ!まだ回復するの?」

「そうみたいね…。ドラゴンの性質上炎には強いから今焼き払うのは無理ね。魔力があれば私ができたんだけど…。」

「そりゃそうだよね、炎を扱う生物が炎に弱かったら話にならないし…。」

「何かないの?一撃で倒せそうな物とか。」

「いや…あるにはあるんだけど、使ったらこの場にいる全員が死ぬ。」

「…却下よ。」


鈴の言っている兵器とは核爆弾のことである。

そんなものと使った日にはここにいる全員が核の炎に焼かれ炭化、あたりの街に黒い雨が降り注ぐだろう。


「後は…なんだろう…ナパームは炎だし…うーん…ん~?」


鈴はふっとデッドドラゴンを見ると回復しきっていない体を持ち上げ、猛スピードである一人のところへ向かっていた。


「アラス避けろ!」

「へへへ…実はさっきので結構体がやられててな…そんな簡単に避けられないんだ…。」


アラスは周りに聞こえないほどのつぶやきをしていた。

そんな中一番近くにいるアームはドラゴンに槍を突き出すがそのまま弾き飛ばされてしまう。


「グッ!」

「アラス!!」

「アラス逃げなさい!アラス!」

「AT-4!」


鈴はもう一度AT-4をデッドドラゴンに撃ちこむが、対象が移動していることもあり後ろ足を吹き飛ばすぐらいにしかならず、動きを止めるに至らなかった。


「(ヤバイヤバイ!アラスさんが死ぬ!死んじゃう!何か何か!無い無い無い無い無い!嫌だ!失いたくない、死んでほしくない、嫌だ!)」


鈴の中で強迫観念が広がっていき精神があっという間に不安定になっていく。


そんな中アラスが鈴とアイリスの方を見て笑った。


「アラス!」


それが鈴が見た最後の瞬間だった。

次の瞬間には鈴の意識はブラックアウトし、深い闇に沈んでいった。

それと同時に鈴に与えられた加護にわずかに歪みが生じたのだった。



鈴はミミよりも早く動きドラゴンに迫った。

さすがにそれに一同は驚いたがイルミスはまた鈴が以前のように暴走をしてしまっているのだと感じた。


鈴はドラゴンの前に先回りするとアラスの目の前に立ちふさがった。


「ふふふ…今度は死にそうじゃなくて殺されちゃいそうで呼び出されるなんて余程慕っているみたいだね。」


デッドドラゴンは鈴に狙いを変えると、そのまま喰おうと口を開けたが鈴にそれを捕まれ動けなくなってしまった。

今の鈴は筋力のリミッターが百パーセント外れており、人間が発揮できるすべての力を出している。

更に歪んでしまった身体強化の加護は鈴の力の係数に累乗する形になってしまった為に以前よりも力が増しているのだ。


鈴の体が悲鳴を上げるが、それをお構いなしに鈴は力を入れドラゴンの口を引き裂いた。

更に銃火器、爆発物創造も歪んでいるため鈴には使えなかった物を出現させる。

今までは白い光とともに銃火器が現れていたが今は黒い光と共に銃火器が現れる。


それは鈴の片腕に絡まるかのように手に収まる。

銃身は長く、九十センチほどあるだろうか。

光の線が幾何学的模様に銃全体に走っている。

そして腕に絡まっている光の線からは常に光を吸収するかのように光が目に見える粒子となり線に吸収されていく。


「Quantum Decomposition gun output one hundred percent――SHOT!」

“クアンタムデコンポーションガン 出力百パーセント――発射!”


幾何学的文様が更に光り出し銃身にエネルギーが収束される。

それを引き裂いた口の中に突き入れると引き金を引いた。

その瞬間デッドドラゴンの頭部を残し後ろすべてが光の粒子と化して消失した。

そう、まるで元から何もなかったかのように。


鈴は持っていたドラゴンの頭に銃口を向けると再び引き金を引いた。

先程より出力が落ちていたが、頭を消し飛ばすにはちょうどよい出力だったようだ。


そして再びあたりの光を吸収し始める。

銃口の向ける先はシュバルツだ。


「っ!」


シュバルツは背筋に悪寒が走り咄嗟にワイバーンから飛び降りた。その瞬間ワイバーンとシュバルツの右腕は光の粒子を残しつつ消え失せてしまった。

これでもシールドを全開で張っていたのである。


「これはこれは…予想外ですね…まさか存在ごと消されてしまうとは思いませんでした。もったいないことをしましたね…。」

「降りてきやがったな。」

「下りざる負えなかったが正しいですが、下りてしまいましたね。しかし、私の相手をしていていいのですか?お仲間さんが一人負傷、一人魔力切れですよ?」

「こちらのセリフだ。片腕をなくしてる状態で俺に勝てると思っているのか?」

「私はネクロマンサーですよそれぐらい――!!」


シュバルツは再び回避を行った。

なぜなら鈴の銃口がこちらに向いたからだ。ネクロマンサーが立っていたはるか背後の外壁が光の粒子になり消滅していく。


シュバルツはシュナイダーのいる位置を逆手に取り鈴との射線上にシュナイダーを配置した。

これにより鈴は今いる場所からQ(クアンタム)D(デコンポーション)G(ガン)を撃てなくなってしまった。

そして鈴はその場から動けない理由があった。


「隠れられちゃったな。足も腕も使いものにならないし、手詰まりってやつだね。」

「鈴…ちゃん?」

「アラスさん。この子は割りとこのパーティを気に入ってるみたいだから悲しませちゃ駄目だからね。」

「一体何を―。」

「また何かあったら出てくるからそれまでサヨナラ。」


そう言うと手に持っている銃は消滅し、鈴は地面に倒れこんでしまったのだ。

それと同時に歪んでいた加護ももとに戻り、正常な状態になった。


アラスは痛みに耐えながらも鈴に駆け寄ると体を調べた。

それはひと目で分かるほどひどかった。


両手両足が赤く腫れあがり、痛々しい光景だった。


「これは…きっとさっきのドラゴンを止めた時にこうなったんだ。糞!俺には何もできない!アイリスちゃんなら…。アイリスちゃん!ちょっと…早く来てくれ!」

「ちょっと…待ちなさい…。」


アイリスが鈴の元へ到着するとすぐに治癒魔法をかけ始めた


「まったく!…この間と同じじゃない…相変わらずの回復具合だけど、魔力が足りない…わ。」


次第にアイリスの魔法は光を失っていき、最後には魔法が止まってしまったのだ。

まだ鈴の片腕しか治っていない。

しかし、アイリスの魔力はほぼ空に等しい。


「ごめん。ちょっと…疲れた…。」


そう言うとアイリスまで倒れてしまった。


「アイリスちゃん!イルミス!」

「満身創痍だな…シュナイダー!」

「ああ、分かった!お前とはまた今度決着を付けさせてもらう!」

「嫌ですねぇ。私は穏便に解決したいのですよ。あなた方の力は私も認めているのですからね。それ故に私があなた達についていないと私以外の者があなた達を襲いに来るでしょうからね。それだけは回避したいものです。それではまた勧誘に来ます。次こそ良い返事を期待していますよ。」


そう言うともう一匹のワイバーンが何処からかやって来てシュバルツを乗せて去っていった。


「そっちは大丈夫か?」

「負傷が二人と魔力切れが一人だ。うち一人はあの有り様だ。」


イルミスが鈴を見るとシュナイダーも鈴を見た。


「ありゃあ骨ヒビ入ってるな。どういう使い方したらああなるんだ?」

「わからん。時々あるんだ。」

「そうか、とりあえず動かすのは危険だな。そっちの魔法使いが起きるのを待ってから行動しよう。それまでに置きてしまったら痛いの我慢してもらおうか。」

「そうするしかないな。」

「ミミ、お前は大丈夫か?」

「大丈夫!イルミスに助けてもらった!」

「そうか。ありがとな。」

「お互い様だ。」


こうして鈴の暴走と引き換えにドラゴンは二度葬られ、戦いは終わった。

しかし、アイリスの魔力切れ、鈴、アラスの負傷は決して小さいものではなかった。

アイリスの回復とともに二人の負傷も回復することだろう。



時が流れ夕刻時、アイリスが目を覚ました。


「ん…。」

「目を覚ましたか。」

「…ダルいけどね…。」

「早速で悪いんだか、二人の治療してくれないか?」

「えぇ…鈴からね…。」


アイリスは隠そうともしないダルそうな気分で治癒魔法を鈴にかけていく。

ある程度回復した魔力で残りの片腕と両足を完治させたアイリスは、これまたダルそうにアラスの元へと移動した。


「治しに来たわよ…。」

「アイリスちゃんすっげーダルそうだな。」

「うるさい…」


アイリスはアラスを治癒するとイルミスに薪に火をつけるように頼まれ、火をつけてまた寝てしまった。

魔力の枯渇による倦怠感は人によるがものすごく体が重くなるのだ。

まだ回復しきっていないアイリスに魔法を使わせれば更に倦怠感が増すだろう。


「ふぅ。アイリスが置きてくれて助かったな。」

「だな。今日はここで野宿しよう。街があった場所だ。魔物も寄り付かないだろうしドラゴンの匂いが残っているから来ないだろうな。」

「そうだな。心配する必要はなさそうだ。」

「僕疲れたんだよ!もう寝るね!」

「ミミは本当に疲れているのかわからんな。さて、積もる話もあるだろうが、世間話でもしてようや。」

「いいだろう。たまには世間話もいいな。」


二人は夜遅くまで語り合っていたのだった。



Quantum Decomposition gun

量子分解銃


この作品オリジナルの兵器です。

はっきり言ってチートです。

何処にでもあるフォトン(光子)をエネルギーに変換し、エネルギー弾を発射する銃になります。

放たれたエネルギー弾はあたった対象を量子分解する効果を持ちます。

どんな物質、硬度、靱性だろうと分解します。

模様はエネルギーの残量を表す光にもなります。

射程は200メートル、重さ35kg、全長(吸収線を含む)150センチ


おそらくこの銃はこの先出さないと思います。

よくあるイベント戦専用スキル、武器だと思ってください。

出してしまったらどんな強敵でもこれを出せば終わってしまいますからね。

どんな感じの兵器かはHL2のパルスライフルのセカンダリー、PSYCHO-PASSのドミネータのデコンポーザーモードだと思ってくださればわかりやすいと思われます。

例外は居ますが。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ