ラターク街
ラターク街内部
商隊は無事ラターク街に到着することができた。
こちらでもイーニャ街の惨状は伝わっているようだった。
タイタスはラターク街支部へ荷物の話をするために出かけているため冒険者は馬車を護衛を続けている。
十分ほどだろうか、タイタスが戻ってきた。
隣にはギルド職員と思われる男性が付き添っている。
「皆ご苦労だった!食料は一旦ギルドに収納し、扱いは任せることになった。冒険者達は達成サインをするからこっちに来てくれ。ではあとは任せました。」
「はい。あとはお任せください。」
イルミス達も達成サインをもらうためにタイタスの方へ向かいタイタスが空くのを待っている。
馬車はギルド職員に誘導され、ギルドの倉庫へ向かっていった。
やがて冒険者達はサインを貰い終えタイタスの周りは大分人だかりが少なくなってきた。
「サインを。」
「今回はありがとう。途中はどうなるかと思ったよ。」
「そうですね。こっちもアイリスと鈴がいなかったら危なかった。」
「よし。サイン終わったぞ。」
「ありがとう。また何かあったらよろしく。」
「ああ、こちらこそ。」
イルミスはサインをもらうと四人を呼び寄せた。
「ギルド行くから皆集まれ。」
「へいへーい。ギルドの後は休みたいぜ。」
「私もつかれたー。」
「鈴ちゃんもつかれたのか。どうだい?俺と一緒に寝な―あだ!」
「はいはい。行きましょうね。」
「ひどいぜ…。」
「いつもどおりだな。」
五人はギルドに入るとイルミスが依頼の処理を完了するまで適当にギルド内で休むことにした。
鈴は依頼掲示板が気になったので見てみると、そこにはほとんどが食料収集系の依頼だった。
「やっぱり食糧不足なのね…。こっちは野菜、こっちは肉…水が多い。」
鈴は掲示板を見終えると皆が座っているテーブルの椅子に腰を下ろす。
「ふぅ…疲れた。」
「宿についたら休むといい。」
「そうさせてもらいます。」
鈴達がテーブルで休んでいる頃イルミスと言うと…。
「依頼達成おめでとうございます。それとルーツ王都支部からの連絡で重要事項があります。」
「なんだ?」
「ギルドに請求された金額分の収入が入らなかったため、請求がイルミス様に移りました。建て替えはしましたが一金六百五十銀貨をお支払いお願いします。」
「ちょっとまて、それはどういうことだ?あのオーガの素材は売れなかったということなのか?」
「それがですね、オーガを回収に向かった回収員が全滅、オーガの死体は消失と事件がありまして、そのためこのような事になっているのです。」
「回収員が全滅?オーガの死体が消失だと?何があった?」
「少々お待ちください。」
そう言うとギルドネットワークにアクセスし、詳細情報を読み取っていく。
ひと通り見終わると職員が戻ってきた。
「調査班からの報告によれば一部の遺体を除き、傷が一つ無いのに死んでいたそうです。そして腐敗し、切りつけられた後がある遺体からは回収員のカードが見つかりました。以上の結果からネクロマンサーが関わった可能性があると判断されました。」
「闇ギルドか。」
「お答えできません。」
「別にいいんだ。闇ギルドのネクロマンサーとは一回戦っているからな。」
「…。」
「で、今回の依頼だが…聞いているよな?」
「はい。チャイルドドラゴンとの戦闘、シルスウルフとの戦闘これは護衛任務でもAに分類される依頼です。」
「そこもきちんと報酬に加算されるよな?」
「はい。今回収員が素材の回収に向かっています。今回の報酬は一パーティ百銀貨でしたが、これらの事案を合わせて一金貨になります。」
「十倍か。大盤振る舞いだな。」
「チャイルドとはいえドラゴンの素材は高く売れます。それを考えたら安いものです。…これは内緒ですよ。」
「そうだな。では今回の報酬を支払に回してくれ。」
「分かりました。残り六百五十銀貨になります。」
「後は今度返す。そういうことにしておいてくれ。」
「はい。わかりました。」
イルミスは受付を離れテーブルを囲っている四人の元へ戻っていく。
「おつかれさ~ん。今回の報酬いくら~?」
「零だ。」
「ん?」
「アイリスの杖の代金がオーガから下りなくてな。その支払に回ったんだ。詳しい話は宿でしよう。ここで話す問題ではないからな。」
「ああ、分かった。」
イルミス達はギルドを出ると宿を探し始めた。
「その前にお腹すいたね。」
「そうだな。今はちょうど昼時だな。」
「宿より食堂を先に行くか。」
「さんせーい!」
「よっしゃあ!飯だ」
「いえーい!」
アラスと鈴はハイタッチを交わした。
そこに呆れ顔のアイリスから一言。
「あなた達元気ね。」
しばらく探していると先に宿が見つかった。
宿の場所を覚えておくとそのまま通過し、食堂を探し始めた。
だが食堂はそんなに遠い場所にはなかった。宿の近くに一件の食堂があった。
「意外と近くにあったな。」
「そうだな。ただ、値段がどうなっているか…だ。」
鈴達が食堂に入ると中は冒険者ぐらいしか見当たらなかった。
それでも少なく三~四人といったところだ。
「人少ないね」
「そうだね。」
五人は席に座ると奥の厨房から女性が出てきた。
「えっとメニューはどこかしら?」
「メニューをお持ちしました。」
「?ありがとう。って高いわね。」
例えて言うならばレストランのライスが千円になっているようなものである。
「すみません。食材の価格が高騰してまして…。」
「ふーん。だからメニューをテーブルに置いてないのね。」
「そんなことはいいから早く食べようぜ!俺はこのステーキ二枚組とライスを頼むぜ。」
「俺はスープとパンでいい。」
「俺はそうだな…俺も同じで」
イルミスとアームは同じ物を頼むようだ。
「私はパスタサラダでいいわ。」
「あ、それ美味しそう。私もそれで!」
鈴はアイリスと同じ物を頼む。
ぶっちゃけメニューが読めずに美味しそうな料理を頼んだのである。
「ステーキ二枚ライス付き六銀貨、スープとパン二組四銀貨、パスタサラダ二組七銀貨ですね。合計十七銀貨になります。」
「あれ?食後じゃないんだ。」
「すみませんが、これも食い逃げ防止なのです…。」
「なるほどねぇ~。」
各自がお金を出し合い、一つにまとめて店員に手渡した。
「いち、に、さん……ではご用意致しますので少々お待ちください。」
「ふぅ。しかし高いな。肉よりパスタが高いって何でだ?」
「パスタは小麦粉を使うので小麦が取れない今は高騰してるんだと思いますよ。」
「へえ、鈴ちゃん物知りだな。」
「それくらいしかわからないんだけどね。」
「鈴ちゃんは良い嫁になりそうだあ”」
「変なこと言わない。」
アラスは色目で鈴を見ていたためアイリスによって制裁された。
足をおもいっきり踏まれたのだ。
それもつま先。
「ひ、ひどいぜ…いてて…。」
「アラス、お前は自重と言う言葉を知らないのか?」
「おう。」
「…。」
アームが手を顔に当て黙りこんでしまった。
アラスの即答具合には呆れているようだ。
イルミスは肩を上げ、やれやれと言ったようにしている。
鈴は苦笑いだ。
さり気なくテーブルの下でエアガンを出していたのは内緒だ。
しばらく談笑をしていると料理が運ばれてきた。
料理の量は王都と変わらず、値段だけが高い。
鈴の世界では量も減って値段が上がるという事になっているが、この食堂は大丈夫なようだ。
「お待たせしました。ステーキ二枚組ライスです。お料理を運んでまいりますので少々お待ちください。」
「うっひょー!ウマそうだぜ!」
アラスはナイフとフォークを持つと早速食べ始めた。
「美味しそうだね~。」
「そうね、肉に掛かってるタレの匂いかしら。食欲を唆るね。」
「そのタレ実はこの食堂特性のタレなんです。」
「おおほうはふか!ほおりでおいひいわへだぜ!」
「食べながら喋らない。」
「そうだよー。汚いよー。」
「スープとパン二組です。」
「ありがとう。」
「どうも。」
イルミスとアームの料理が運ばれてきた。
これもスープは薄くなく、パンも固くなく通常以上の品質といえる物だ。
「うん。うまいな。」
アームが絶賛する。
「ありがとうございます。最後のお料理を運んでまいります。」
「最近お肉しか食べてなかったから野菜が恋しかったんだよね。」
「そうね。鈴お肉ばっかり食べてたからね。」
「だってお肉美味しいんだもん…。」
「太るわよ。」
「大変お待たせしました。パスタサラダ二組です。」
「おお!美味しそう!」
「そうね。」
「やっぱりヘルシーな野菜も食べないとね!」
鈴はフォークを持つとサラダ用のタレがかかっている野菜とパスタを絡めとり食べ始めた。
「ん~!美味しい!この甘酸っぱいタレがいい具合にマッチしていい感じ。」
「ふふふ。それもこの食堂だけなんですよ。最近は原材料も高騰してしまって大変なんです。」
「やっぱり大変なんですね。」
「ええ…。」
鈴たちは少し高い昼食を済ませると、宿に向かった。
やはりというべきか、宿の値段も他の街と比べると幾分か高い。
イルミスはそれを支払うと、二部屋借りた。
いつもどおり男部屋と女部屋だ。
食事は夕食のみでおそらくこれが値上げの原因となっているのだろう。
「ふええぇぇぇ。疲れたよぅ。」
「何言ってるのよ。」
鈴は体をベットに投げ出し枕を抱きしめ足をバタつかせている。
「だってあの距離を歩いたんだよー?それに大変なこともあったし~。」
「私はそんなに疲れてないよ?」
「だってアイリスと私じゃ基礎体力が違うし~私なんてほぼ引きこもりだったんだからね。」
「なんで引きこもりなんてしてたのよ。」
「まぁ…色々とね。」
「…ふーん…。まぁ、イルミスのところ行くわよ。」
「はいよ~。」
鈴はまくらを投げ出すとベッドから起き上がるとアイリスの後に続き部屋から出て行く。
鈴はアイリスから鍵を受け取ると部屋の扉の鍵を閉める。
「オーガの件で何があったんだろうね。」
「さぁ。これからその話をするんじゃない。」
「そうだけどねー」
そう言いながらイルミス達が止まっている扉をノックした。
「鈴か?アイリスか?」
中から返答が帰ってくる。
「二人共です。」
「そうか。入って来い。」
アイリスが扉を開け二人は部屋に入っていく。
「よし、来たか。」
「鈴ちゃんアイリスちゃん久しぶりー俺寂しくて、いで!?」
「アラスさーん?寂しくてなんですって~?」
「鈴その調子よ。」
「もう少し逝っとく?」
「あだだ!ちょ!それ微妙に痛い!鈴ちゃんヤメテ!」
「はっ!無意識にアラスさんを!」
鈴は棒読みでそう言っていた。
「鈴できるようになったね。」
「ちょちょ!すごい棒読み!それわざとでしょ!」
「ばれた?」
「バレバレだよ!?」
「茶番は置いておいて、話を始めよう。」
「そうしよう。」
「その辺座ってくれ。アラスはその辺に立ってろ。」
「え!?」
鈴とアイリスは椅子に腰掛けるとアラスの座る椅子がなくなってしまったため、しょうがなく床に座ることにした。
「で、オーガの件なんだが。」
「そうだよ。オーガだよ!俺たちがあんなに苦労して倒したのによー。ギルドの連中は何をしでかしたんだ?」
「まあ落ち着け。これからそれを話すんだ。まずオーガの素材の売却をすることにしたことは覚えてるよな?」
「ああ。覚えてるぞ。」
「それでギルドの回収員が素材の回収に向かったのだが、結論から言うと全滅した。」
「は?おいおい、全滅って何があったんだよ?」
「ただ事じゃないわね。」
「聞いた話だとそれをやったのは教皇の部屋で戦ったネクロマンサーだということがわかった。オーガの死体も無かったことからおそらくネクロマンサーの手駒にされたんだろう。」
「まじかよ~せっかく倒したのにまーた戦うことになるかもしれないってことか。」
「俺達はまんまと利用されたのか?」
「わからんな。だが用心するだけはいいだろう。」
「そういえば…私と鈴が依頼に行った時もあのネクロマンサーが関わってたよ。」
「そうですね。私が前に依頼で行った村が屍人形だらけでした。しかも自己再生付きの。」
「自己再生するだと?聞いたことがないぞ。」
「そこはまぁ…鈴と私で焼き払ったから何とかなったけどね。」
鈴はそこに”村ごとねー”と付け足していた。
「そうか。そこまであいつの手が伸びているのか…なぜそんなことをしているんだ…?」
「考えるだけ無駄でしょ。あいつは闇ギルド。思考なんてわかりゃあしないよ。わかったときはすでにそっち側の人間だよ。」
「アラスさんがいいこと言ってる…。」
「明日は雨ね。」
「あれ?扱いひどくね?」
「とりあえず報酬がなかったのはこれのためだ。納得できたか?」
「ああ。」
「なっとくです。」
「へーい」
「まあ、私の杖の代金なら仕方ないね。」
その後細かい打ち合わせを行い、鈴とアイリスが部屋に戻ろうとした時部屋の扉がノックされた。
「うん?どなたですか?」
「失礼。冒険者…としか言えないが話があるんだ。開けてくれないか?」
扉の外から野太い声が話しかけてくる。
鈴とアイリスは振り返りイルミスへ確認をとる。
イルミスは少し考えた末剣を腰に携帯すると首を縦に振った。
それを見たアームとアラスは動揺にいつでも剣。槍を振るえるように携帯した。
「今開けますー。」
鈴は扉の鍵を開けると扉を開けた。
そこには身の丈ほどある大きな大剣を背負った男と小型な剣を二本ぶら下げている小柄な女性が居た。
「入っていいか?」
「ど、どうぞ。」
鈴とアイリスは部屋の中まで戻ると二人を招き入れた。
「…済まない警戒させてしまっているようだな。武器を置こう。ミミ、武器を置け。」
「はいなー。」
二人は持っている武器を床に置くと手を上げ無害アピールをする。
それを見ていたイルミスは警戒と解いた。
それを見たアームとアラスも警戒解き、息を吐いた。
「警戒して悪かった。そこの椅子にでも腰掛けてくれ。」
「悪いね。」
二人は椅子に座ると一呼吸置いて話を始めるのであった。
どうでもいいですけど、セブン-イレブンのラーメンサラダ美味しいですよね。
パスタサラダはそれをモチーフにしています。
今回は特に説明を入れる話もないのであとがきは少なめです。
鈴はアイリスに教育されアラスに対する対処法を獲得しています。
アラスの扱いが酷いですが、アラス本人はどうとも思っていません。