チャイルドドラゴン
それは突然やってきた。
そして誰かが叫んだ。
「チャイルドドラゴンだ!」
その言葉に盗賊は一目散に逃げていく。
チャイルドドラゴンとはドラゴンの幼体に着けられる名前である。
しかし名前に反してその体格と力は人間では到底及ばないほど大きく、強力だ。
魔物としてのランクはAに相当する。
そのチャイルドドラゴンの瞳は怒りで煮えたぎっていた。
獲物を見つけた鷹のようにチャイルドドラゴンが急降下してくる。
「物資を守るんだ!」
後衛が魔法や弓矢で攻撃するがチャイルドドラゴンは怯む事無く冒険者達に突っ込んでくる。
矢や魔法はチャイルドドラゴンの鱗ですべて弾かれているのが目に映る。
そして食べ物を積んでいる馬車ではなく冒険者を攻撃し始める。
「こいつら…!物資じゃない!こいつらは俺たちを狙ってるぞ!」
「うわ!離せ!離せえええええ!」
「誰か援護するんだ!」
「駄目です。魔法を撃てません。」
「ああああああああああああああああああ!!」
その声が断末魔となった。
男はチャイルドドラゴンの強固な顎により体を引きちぎられてしまったのだ。
いくらチャイルドドラゴンといえども簡単に人を殺す程の力を持っている。
「畜生!クリスがやられた!」
「仲間の仇だ!これでもくらい…やがれえええええ!」
「馬鹿!よせ!」
男は仲間の仇を取ろうと剣を渾身の力を込め、チャイルドドラゴンの首に振り下ろした。
しかし、剣は中程から折れてしまった。
叩くものより叩かれる物のほうが硬ければ折れるのは当たり前だろう。
冒険者は折れた剣を見ながら唖然とし、自分の目の前で燃え上がる炎弾をまじまじと見ているしかなかった。
「そ、そん―」
「ぴぎゃああ!!」
そしてチャイルドドラゴンが炎弾を非情にも放った。
超至近距離でそれを受けた冒険者は体をバラバラに散らしながら吹き飛んでいった。
「糞おおおお!」
「チャイルドドラゴンだからと言って油断するな!相手はAランクの魔物だぞ!」
冒険者達が混乱を極めている中イルミス達は商人を安全な穴の中へ一時的に避難させていた。
盗賊が残していったトラップを逆に利用していたのだ。
チャイルドドラゴンの体格では穴へは入れないためそれを利用する。
「鈴いるか!」
「居ますよ!」
「チャイルドドラゴンの相手を頼む!」
「了解です。喰らえ!」
鈴はM4をチャイルドドラゴンに向けると引き金を引き発砲した。
しかし、銃弾が硬い装甲にあたったかのような音とともに弾かれてしまった。
ドラゴンと言う種は幼いながらも身を守るために無意識にシールドを鱗の表面に展開し外部からの物理、魔法攻撃に対して高い防御を誇っている
弾かれた弾丸は光となって消えていくが、体に何かがあたった為チャイルドドラゴンの視線が鈴に固定されてしまった。
「やっば!5.56mmじゃ貫通出来ないの!?のわああああ!」
鈴は迫り来る炎弾を間一髪で躱すとM4を消し、次に口径が大きい銃を取り出した。
それはヘッケラー&コッホ社のM4カービンの近代改良版のHK417だ。
このアサルトライフルは7.62mm弾を扱うことができるライフルだ。
M4とは破壊力が違う。
再び鈴を狙っているチャイルドドラゴンに発砲するがこれまた弾かれてしまった。
「これも駄目なの!?」
「アイリス!鈴の援護だ!」
「まかせて!<蒼白の炎よ!世界に満ち溢れる酸素よ!我の力の糧とし、ここに集い炎よ燃え上がれ!蒼白の炎弾!>」
アイリスの魔法はチャイルドドラゴンに当たるとその高熱からじわじわと内部から焼き殺していく。
「ぴぎゃああああああ!」
「動きが止まった?どうせ銃弾は効かないし馬ももう暴れてるし!。なら…ダネルMGL!」
ダネルMGLとは40mmグレネードを発射するグレネードランチャーだ。
それを炎で動きが止まったチャイルドドラゴンに装填されている六発全てを撃ち込んだ。
グレネード弾はチャイルドドラゴンに当たると爆発を起こし、魔法により高熱に熱せられた鱗はグレネードの爆風に耐え切れず、砕け散り肉をえぐりとっていく。
抉り取られた部位から炎が侵入し、さらに内部を焼いていく。
「んー。グレネードランチャーも効きが悪いなぁ。やっぱりRPG-7かAT-4?でもただでさえ暴れている馬をこれ以上脅かすわけには…ぐぬぬ。」
そういいながらもダネルMGLのリロードを終えると再び撃ち込んだ。
グレネードの一部はドラゴンの顔面に当たると顔の一部を吹き飛ばす。
「ぴぎゃあぁぁぁぁ……。」
チャイルドドラゴンはそう弱々しい声を出しながら倒れていった。
近くに居た冒険者が死んだか確認を行う。
「こ、こいつ死んだのか?」
冒険者は剣でチャイルドドラゴンを突くが反応がない。
「一匹倒したぞ!後五匹だ!」
「アイリス!もう少し火力出せる?」
「大丈夫!この杖なら行ける!」
「行くわよ…!<蒼白の炎よ!世界に満ち溢れる酸素よ!我の力の糧とし、ここに集い炎よ燃え上がれ!蒼白の炎弾!>」
火力が上がり炎の大きさと勢いが上がり蒼白の炎の炎弾が生成される。
「喰らいなさい!」
鈴はチャイルドドラゴンを狙い放った。
速度が早い蒼白の炎弾は避ける事が出来ず再び炎上する。
「ぴぎゃああああ!!」
「グレネードはいかがですか~。」
ポンポンポンと六発全てのグレネード弾をきちんと撃ち込む。
魔力のシールドが炎により消滅し爆発の衝撃波により鱗が吹き飛ばされそこから炎が侵入し、焼きつくしていく。
辺りからはアイリスが放つ蒼白の炎と鈴を絶賛する声が木霊する。
「すげえ!蒼白の炎なんて初めて見た!」
「蒼白も凄いがもう一人の使ってる武器はなんだ?あたった側から爆発を起こしているぞ!」
「この調子ならチャイルドドラゴンを撃退できる!」
これらにより冒険者全体の士気が上がり、各パーティごとの連携も取れ始めてきたのだ。
「これなら行ける!」
「そうね。私達が援護してあげれば行けそう。」
「でも鈴はその武器じゃ援護できないね。」
「…そうですよね~。でもなぁ7.62mmでも貫通できなかったしどうしようかな…12.7mmなら行けるかな…?バレットM82でいいかな?」
鈴は銃を変えると、辺りが安全な位置に移動し、アイアンサイトで狙いをつける。
M82であれば鉄筋コンクリートさえ破壊する威力を誇る。
これならあのチャイルドドラゴンの鱗でも撃ち抜けるだろう。
「これでも喰らえ!」
鈴はチャイルドドラゴンの胴体に狙いを定めると引き金を引いた。
頭ではないのは曲線が多いからだ。
曲線は攻撃を受け流しやすく、いくら運動エネルギーが高い武器だからと言っても弾かれる可能性がある。
放たれた12.7mm弾は鱗を砕くとチャイルドドラゴンの体内まで食い込み消滅して行く。
もちろんサプレッサーなど付いていないM82の音は盛大に周りに轟いた。
その為冒険者、チャイルドドラゴンまでこちらを向いている。
「あ、こちらは大丈夫ですので続けてください。どうぞどうぞ。」
そして二発目を放つ。
鱗が何枚か衝撃波で弾け飛び、鱗の下に隠されていた体表が顕になる。
「でやああああ!」
そこに冒険者が剣を突き刺した。
剣は根本まで刺さると渾身の一撃となりチャイルドドラゴンは絶命した。
胴体の中央近くだったため何か重要な臓器や血管でもあったのだろう。
「三体目だ!」
「これで半分だ!今のうちに穴に落ちた仲間を助けるんだ!」
「大丈夫か!今引きずり上げてやるからな。」
「た、助かる。」
「ふふふ。この杖最高ね!さっきの鈴の銃をイメージ、構築して…ふふ。<蒼白の炎よ!世界に満ち溢れる膨大な酸素よ!我の力、魔力を糧とし、ここに集い炎よ弾けよ!蒼白の榴弾!>」
蒼白の炎弾より少し大きい炎弾が生成されるとそれはチャイルドドラゴンへ向って飛来する。魔法の弾速事態は遅いがそれでもファイアボールよりかは早い。
蒼白の榴弾を受けたチャイルドドラゴンは魔法が当たると同時に蒼白の炎が爆発を起こし、高温の熱量と衝撃波が襲いかかった。
「ぴぎゃああああ!!」
「このぐらいの魔力だとあの程度か。」
アイリスは威力はほどほどと言った感じで言っているが、チャイルドドラゴンの体は鱗が融解し、衝撃波により肉が吹き飛び無残な姿をさらけ出している。
その威力に戦っていた冒険者達は度肝を抜かれた。
もう少し魔力を込めていたらチャイルドドラゴンの胴体は半分以上が吹き飛んでいただろう。
「そこの冒険者。止めさしなさいね。」
「お、おう。」
冒険者は穴の空いたチャイルドドラゴンの腹に剣を突き立て内蔵を切りつけ肉を抉る。
チャイルドドラゴンは苦しみの声を上げながら抵抗していたが、多数の冒険者に刺され最後には息絶えてしまった。
「す、すげえ…チャイルドとはいえドラゴンを倒すなんて…!」
「呆けない。次倒すわよ!今度は魔力を思いっきり込めてあげるんだからね。」
「た、退避ー!」
「……いくよ!<蒼白の炎よ!世界に満ち溢れる膨大な酸素よ!我の力、魔力を糧とし、ここに集い炎よ弾けよ!蒼白の榴弾!>」
先ほどの魔法とは違いかなりの魔力が込められており、炎の勢いや熱量が前の比ではない。
「いけっ!」
蒼白の榴弾はチャイルドドラゴンに当たると辺り一帯に衝撃波が広がり、地面がえぐれ、熱風が吹き荒れる。
砂埃が晴れると体のほとんどが融解し、胴体に大穴を開けたチャイルドドラゴンの姿があった。
既に事切れているようだ。
「残り一体だ!呆けてる暇が有ったら体を動かせ!」
イルミスがそう叫ぶ。
一喝された冒険者達は残り一体のチャイルドドラゴンの元へ集結すると徐々に追い詰めていく。
「ぴ、ぴ…」
チャイルドドラゴンは家族を五匹も殺され怒りに染まった目はすっかり恐怖に染まっていた。
「ここで逃したらとんでもないことになる絶対にとどめを刺すんだ!」
ここで逃したら親のドラゴンが復讐しに来るだろう。
もし親が来なくとも将来このチャイルドドラゴンが成長しドラゴンになった時に復讐しに来る。
どちらにしても殺すしか無いのだ。
生け捕りにしようにも親のドラゴンがそれを見つけ出してしまい近くの町ごと焼き払われる。
「ぴぴー!」
「空に逃げるぞ!撃ち落とせ!」
空に向けて矢や魔法を撃ちこむが、シールドが消失しても鱗に弾かれ決定打を与えることが出来ない。
「鈴!撃て!」
「待ってました!」
鈴は地面に伏せ狙撃体勢に入っていた。
空気を肺一杯に吸い込むと息を止める。
アシストも機能し、鈴に聞こえるのは自分の心臓の音と曇った周りの音のみとなった。
スコープを覗きこみ照準をあわせる。
「…。」
狙うは翼の付け根。
一寸の狂いも許されず、翼が羽ばたくと同時に揺れている。
しかし、付け根部分はそれほど揺れていない。
そして引き金を引いた。
弾丸が発射され一直線に回転しながら進んでいく。
銃弾は翼の付け根を半分もぎ取るとそのまま空を進み光となり消えていった。
翼の付け根を半分もぎ取られたチャイルドドラゴンはその痛みと筋肉と骨を抉られ地に堕ちた。
「今だ!」
チャイルドドラゴンを囲んでいた冒険者達が一斉に剣を突き刺した。
それは鱗がない目や口元だ。
そのほかの冒険者は鱗の隙間に剣を入れ、鱗の下を切り裂いていく。
「ぴぎゃあがああああ…」
「た、倒したのか?」
「あ、あぁ…倒したんだ!」
冒険者達は喜び、後衛の冒険者達は穴に避難させた商人たちを引き上げていた。
商人たちは馬を宥め、落ち着かせるとともに土を使える魔法使いたちは穴の空いた道などを直していく。
もちろん戦いで目立っていた鈴とアイリスには人だかりが出来ている。
「あれって蒼白の炎ですよね!どうやったら使えるようになるんですか!」
「さっきの武器何なんですか!?新しい魔道具ですか?」
「二人共凄いな!是非うちのパーティに移籍をー!」
「うわわ…。」
「ほら!何をしている!持ち場にもどれ!」
イルミスが二人に集まっている冒険者達をそう言って散らしていく。
「ふう。まったく…うちのメンバーに何言ってるのだか…。二人も準備してくれ。」
「了解サー。」
「うん。」
鈴とアイリスは各商人たちの怪我の有無や馬車の破損の確認を行う。
一台一台確認して回っていると一台の馬車の一部部品がヒビが入っているのが確認できた。
それは馬が暴れ馬車の重みとが合わさりそうなってしまったのだろう。
その部分は馬と馬車をつなぐ部分であるためここが折れてしまうと馬車のバランスが崩れてしまい牽引できなくなってしまう。
「すみません。ここにヒビが入っています。」
「なんだって?…あちゃーこれは…補強道具持ってきてくれないか?」
「わかりました。」
鈴は自分たちの補給物資馬車へ向かうと木材と釘とトンカチを貰い破損した馬車の元へと戻っていく。
「持ってきましたよ。」
「おお。助かる。これで挟むように補強してやれば移動には耐えられるだろう。」
辺りには商人がトンカチで釘を打ち込む音が木霊する。
ここ以外にも使っている人がいるらしく、トントントンっと音が混ざり合って森に広がる。
「ふぅ…まさか銃弾が弾かれるとはなぁ…12.7mmなら貫通出来たけど、チャイルドって言うくらいだし成体のドラゴンには効かないんじゃ…でもそれならRPG-7やらAT-4があるし…それにまだ使ってない武器はある…。本当にファンタジーだなぁ…。」
鈴はあれやこれやとドラゴンへの対策を考えていた。
すると、そこへアイリスがやってきた。
「何してるの?」
「ん?ドラゴンに対しての有効打を考えてた。」
「そういえば銃弾、弾かれてたわね。」
「そうなんだよ。主力の5.56mmが弾かれると後は反動が大きいあの大きいの使うしかなくなるんだよね…アイリスは普通に焼いてたし、私どうしようかなぁ。」
「使えばいいじゃない、その大きい銃。」
「跳弾って言うものが有りましてね。もし貫通出来ずに跳ね返るとどこ飛んで行くかわからないから危ないんだよ。それに反動も凄いから狙いもずれるし、後衛からバカスカ撃てる銃じゃないんだ。」
「ならあの長い銃でもいいんじゃないかしら?鱗は貫通できたんでしょ?」
「そうだね。貫通は出来たけど威力がかなり減衰してて大したダメージになってなさそうなんだよね。」
「そのために前衛が居るんでしょ?」
「まぁ、そうなんだけど、最悪爆破するって手段もあるし…。」
「爆破って鈴辺り一体を吹き飛ばす気かしら?」
「まぁ…うん、そうなるね。」
二人が色々話していると商隊のチェックが終わったのか、タイタスが出発準備の号令を飛ばしていた。
「そろそろ出発みたいよ。行きましょ。」
「うん。そうだね。行こ。」
二人はイルミス達の後ろにつくと、護衛任務に戻るのであった。
現在地は国境を超えた森林伐採地帯だ。
この先には元伐採キャンプだった村がある。
タイタスは商隊に出発の指示を出すとその村へ向かっていく。
野営するより安全だからだ。
それに先ほどのチャイルドドラゴンとの戦闘や落とし穴により負傷した冒険者もいるため止まるしかない。
しかし、この時の判断が後に正しかったと思えることが起きるとはわからないのだった。
ドラゴン・チャイルドドラゴン
子供はチャイルドドラゴンと呼ばれ、大人はドラゴンと呼ばれます。
ドラゴンの鱗は年を重ねるに連れて鱗の上に鱗が重なるようにして新しく生えるため、歳を重ねるほど攻撃が通じづらくなる。
鱗はモース硬度15(旧10)、靭性は鋼鉄並としかも軽く更に鱗は曲線を描くような構造担っているため、チャイルドドラゴンでもこのような強い装甲を持っている。
傷が着かない上に鋼鉄並の靭性、曲線があるため鈴の5.56mm、7.62mm弾は弾かれてしまいました。
しかし12.7mmは以上の2つとは比にならない運動エネルギーを持っているためチャイルドドラゴンの鱗を貫けました。
大人のドラゴンに成長するには30年から40年かかります。
ここまでの情報を出したらすでにおわかりでしょうがドラゴンの鱗の厚さがすごいことになりますね。




