陰謀の影2 商隊護衛任務なり
アルルト村上空。
そこには青白いワイバーンに乗ったシュバルツが居た。
「おやまぁ…あの子たちは灰になってしまいましたか。恐らく回復が追いつかずに灰になったのでしょうね。魂は辛うじて残ったでしょうね。それにしても…周りの建物まで溶けているとは相当な火力だったのでしょうね。彼意外に誰がこんな火力を出せるのでしょうか。彼は行方不明だというのに…。少し情報を仕入れたほうが良さそうですね。戻りますよ。」
そう言うとワイバーンは空高く上昇すると闇ギルドへと戻っていくのであった。
その頃王都では…。
「今日は護衛任務を受けようと思うのだが、皆はどうだ?」
「何処までの護衛だ?」
「隣の国のルドルフ皇国までだ。今回は大量の食料を輸送する。」
「大量の食料?」
「そうだ。ルドルフ皇国では干ばつが続き、食糧難に国民が喘いでいる。」
「それで大量の食料を運ぶんですね。」
「ああ。運ぶものが物だから匂いに釣られて魔物が寄ってくる恐れがある。俺たちはそれらを討伐する。もちろん賊からもな。」
「私の新しい魔法を見せてあげる。」
「よし、ならこの依頼受けるぞ。」
イルミスは依頼書を受付へと提出する。
「皆は準備大丈夫?」
「ああ。俺は大丈夫だ。」
「俺も大丈夫だぜ!」
「私も大丈夫。」
四人が装備の点検をしている間にイルミスは受付で依頼の処理を進めていた。
「今回はタイタス商隊の護衛になります。現在五パーティが参加を申請しており、商隊リーダーはタイタス様になります。」
「タイタスだな。」
「はい。場所はルドルフ皇国オルギス領イーニャ街ギルドまでとなります。」
「そうか。そうすると二日は掛かるか。」
「そうですね。その間商隊を守りぬいてください。商隊の中には今回依頼に参加する冒険者の為の食料や物資もあるので気をつけてください。」
「そうだな。それを襲われたら俺たちの物資が無くなってしまうからな。ついでに聞くが、五パーティは何人なんだ?」
「少々お待ちください……二十八人です」
「大体五人か。小隊規模は?」
「登録では十三台となっています。」
「俺たちが入って三十二人か、十分だな。」
「では依頼に参加なされますか?」
「ああ。参加するよ。」
「わかりました。登録させてもらいます。」
そう言うと職員は水晶体に向って情報を入力していく。
水晶は淡い光を放ち、インターフェイスが表示されている。
「本当に便利な水晶体だな。それどうなってるんだ?」
「ギルドトップレベルの機密事項になります。例え国にも情報は開示されません。」
「相当なものなんだな。」
「はい。私もよくわからないまま使っています。」
「そうか。」
「では処理が完了しました。完了手続きはルドルフ皇国オルギス領イーニャ街ギルドでよろしくお願いします。」
依頼の手続き処理が完了したイルミスは四人のもとに戻ると、要件を伝える。
「今回の依頼は俺たちを含めて六パーティ三十二名で構成される。場所はルドルフ皇国オルギス領イーニャ街ギルドまでだ。大体二日位だな。護衛対象はタイタス商隊だ。」
「これは結構遠いな。」
「これ俺たちは大丈夫だけどアイリスちゃんと鈴ちゃんには徒歩はちときついんじゃないか?」
「私は大丈夫ですが、なるべく高い位置…馬車の上がいいです。そのほうが銃で狙いやすいので。」
「私もそうね…混戦状態だと魔法は使いにくいんだよね。鈴と同じく上が良いわ。」
「そこは相談次第だな。とりあえず集合場所まで行くか。集合場所は王都北門広場だ。商隊だから目につくと思うぞ。」
「わかった。行こうか。」
そういうと五人は集合場所に歩いていく。
イルミスは羊皮紙の依頼書を丸め、道具入れにしまう。
そこに唐突にアラスが何かに気がついたように鈴に声を掛ける。
「あ、そうだ。鈴ちゃん。」
「なんですか?アラスさん。」
「銃なんだけど、その音でもしかすると馬が暴れてしまう可能性があると思うだ。そこんところ気をつけて扱ってくれよ~。」
「そうだな。鈴の武器の音は大きすぎるからな。」
「あー。そうですね。サプレッサーを装着するのでこれで大丈夫かと思います。」
「それならいいんじゃないかな。」
「そうだな。音が小さくなればいいからな。」
「QDSS-NT4サプレッサーをM4に装着して少しは音が下がるはず…。ハンドガンだと火力に難があるからなぁ。」
「何言ってるかわからないがまかせたぞ。」
「了解サー。」
アラスとアームから銃を使う時の警告を受けると鈴は直ぐに知識から解決策を導き出したのだ。
これで弾丸が発射されるときに生じる音を低減することができる。
これなら馬を脅かす心配は無いだろう。
歩きながら使う武器の選定をしているとどうやら集合場所についたようだ。
一三台の商隊が並び、戦闘に何やら人が集まっている。
馬車はリヤカーの様な形をしておりその上にカバーがかぶせてあるだけのようだ。
よって、馬車の上から攻撃するということはできなくなってしまった。
イルミス達はその集まっている中へ入っていく。
その中には如何にも商人らしい格好をしている人物がいる。
恐らく商隊を仕切っているタイタスと言う人物だろう。
イルミスはその人物に近寄ると依頼書を出し声を掛けた。
「依頼を受けたイルミスと言うものですが。」
「おお。依頼を受けてくれたか。助かる。」
「いえ。俺達にはお構いなく。」
「君たちは…五人パーティだね。商隊の右側を頼むよ。」
「わかりました。ではサインをお願いします。」
「…よし。これでいいか?」
「大丈夫です。全力で護衛をさせていただきます。」
「頼んだぞ。」
イルミスは四人に護衛場所を伝えると出発の合図を待っていた。
するとそこへ長い包を持った男がイルミスの元へ走ってきた。
「おーい!イルミスさんよー!」
「ん?ああ、魔法商店の店主じゃないか。どうしたんだ?」
「へへ。実はな完成させたんだ。」
「二~三日掛かるんじゃなかったのか?」
「実はあの後店を閉めて徹夜してまでも作っていたんだ。ちょうどそこに最高級の金属と最高級の魔石、最高級の柄が有れば、誰だってそうなるものだよ。」
「そうなのか?」
「冒険者が強い敵に挑むのと同じさ!で、これが完成品だ。」
そう言うと包を外し、杖を見せた。
太く大きかった骨は人が握れる大きさまで削られており、見事なほどに装飾が飾り付けられている。
骨は太陽に反射し、それに巻き付くかのようにミスリルが薄く巻かれている。そして骨故に砕けやすく劣化しやすい石突きには鉄が使用されており耐久性も確保されている。
そして何よりも目立つのがミスリルで装飾された所に大きく装着されている大きな魔石。
大人の握りこぶし一つは有るだろう。
ミスリルには術式が書き込まれ、大気中にある魔力を吸い込み、術式がほのかに発光している。
「これは魔法使いじゃない俺が見ても凄いな。」
「ついつい本気で作ってしまったんだ!使ってくれ!…本音を言うとちょっと金額の割に合わない。」
「だろうな。」
イルミスは苦笑いしつつアイリスを呼び寄せた。
「何?呼んだ?」
「杖出来たぞ。」
「本当!見せて!」
目をキラキラさせるアイリスに店の店主は杖を手渡した。
「…これは…。」
「どうだい?すごいだろう。」
アイリスが杖を握るとほのかに光っていた杖が輝きを増した。
「すごい魔力の伝導性…それに増幅もすごい…。」
「やっぱりわかるね!」
「これいいの?」
「いいってことよ。ギルドから既にお金は預かっているからな。」
「そう!ならこれは私のね!」
「古い杖引き取ろうか?」
「あ、お願いするわ。」
そう言うとアイリスが肩から掛けていた杖を取ると、紐を外し手渡した。
新しい杖に紐をつけると肩に掛けた。
「それではまたのご利用をお待ちしていますよ!」
「また何か有ったら頼んだわよー!」
アイリスとイルミス達が騒いでるのを尻目に鈴は何となく上を向くと太陽が真上にあった。
時間は十二時ぐらいだろうか。
各自が自由に準備し、話しながら待っていると商隊リーダーのタイタスが出発の合図を出した。
「商隊出発準備!」
タイタスの大きな声が広場に響き渡る。
鈴達は駆け足で右側に移動する。
そこが鈴達、イルミスパーティの持ち場だ。
「出発!」
それと同時に先頭の馬車が動き出した。
それに続くように冒険者や後続の馬車が動きだし、街を囲む防壁を潜る。
「さてさて。ルドルフ皇国はどんなところなんだろう!楽しみだな~。(それに護衛任務とかFPSのCOOPみたいで不謹慎だけどワクワクする!)」
「ルドルフ皇国はルーツ国とルル和親条約を結んでいる国で、今回の依頼も元は国からのものだろうな。」
「そうなんですか?」
「ああ。商人だって商売で物を売るんだ。売らずに届けるということはこの食べ物は既に売られて運ぶ最中の物と言うことだ。こんな商隊に積めるほど用意することができるのは国ぐらいなものだろうからな。」
「アームさん物知りなんですね。」
「まあ、長年冒険者やってれば感でわかるようになるさ。」
「そうなんですか。私もわかるようになるかなぁ。」
「そのうちなるさ。」
「よーし!私も立派な冒険者になるぞー!」
「その意気でこの依頼もがんばれよ。」
「おー!」
六時間後…
「せんせー…歩き疲れました。」
「さっき立派な冒険者になると言っただろ?」
「それはそうだけど…。今何処らへん?」
「この間通った道覚えてるか?」
「オーガの時の道?さすがに一回で覚えれないなぁ。」
「後三十分くらいで国境の関所に到着する」
「後三十分頑張る!」
「やれやれ。もう暗いから気をつけろよ。」
「野戦ですね!気をつけます!」
「やれやれ。」
しかし何事も無く関所に到着した商隊は国境を超えるための手続きをしていた。
冒険者達は松明を持ちながら馬車の警護をしている。
関所は裏側が森になっており、表側は平原だ。
森の奥には高い岩山がそびえている。
鈴達後衛のメンバーは馬車に張り付き前衛の援護をするためにマンツーマンで行動をしている。
鈴のパートナーはアームだ。
鈴は直ぐに撃てるようにM4を出現させている。
もちろん馬を脅かさないようにサプレッサーを装着している。
いつものことながら周りからは奇妙な目で鈴が見られている。
弓でもクロスボウでもない黒い塊の様な何かを持っているようにしか見えない。
「アームさん何か居ますか?」
「いや、何も見えないな。」
しばらく警戒をしているとタイタスが戻ってきた。
「皆聞いてくれ!この先に最近山賊が出没しているらしい!今日は此処で野宿することにした!各自休憩をはさみながら警戒してくれ!」
アームは槍を下げると鈴に声をかけた。
「だそうだ。鈴、疲れているだろ?少し安め。」
「あ、ありがとう。」
鈴はそうアームに感謝しつつ馬車により掛かり目をつぶった。
歩き疲れたのか鈴は直ぐに夢の中へ落ちていった。
その頃イルミスとアイリスは…。
「さあ!なんでも出てきなさい!私の新しい杖が敵を焼きつくすわ!」
「…はぁ。アイリスの新しい物好きどうにかならないのか…。」
普段隠されたアイリスの裏の顔が此処に現れていたのだった。
「おい。彼処を見てみろ。」
「ありゃあ商隊の馬車だな。」
「最近ウチのアジトも食糧不足だっただろ?アレを襲えば一気に解決できるぜ?」
「でも相手は数が多い。どうするんだ?」
「まぁ任せろ。お頭に報告するぞ。」
ギルドネットワーク
作った人物は世界の歪みによりこの魔法世界に落ちた技術世界の技術者。
簡単に言うと水晶体を核としたネットワークです。
それに術式が仕込まれ魔力でディスプレイとキーボードが出現します。
この術式事態がギルドの最高機密である。
この術式にはこの世界には無い文字で書かれており解読することは出来ない。(実は英語だから異世界人にはわからない。)
創った本人はとっくに死んでいるため、複製することしか出来ない。
ギルドを破棄する場合はこれを破壊することが義務付けられている。
入力されたデータは各支部のデータと魔力で通信され同期される。
この時に情報を保存するために水晶体が利用されている。
水晶体事態の制御にはミスリルの台座がある。
それにはびっしりと術式が組み込まれている。
依頼を受けた冒険者の平均ランクはCです。
イルミスとアームはBなので護衛隊の中でも強い方です。