陰謀の影 1
鈴は帰ってきたイルミスに事のあらましを聞いた鈴は自分が起こしたことを再度説明する。
「え?私起こしましたよ?」
「いやそれは紛れもない事実なんだが、どうやら寝ぼけてて俺に指摘されるまで忘れていたようだ。」
「寝ぼけ…よくある。うん。」
「そういうものなのか。」
「私も地球に居た時は朝目覚ましがなっても気が付かずに遅刻したり…。でも目覚ましは止まってるんですよね。あ、目覚ましっていうのは設定した時間を知らせてくれる機械のことです。」
「便利なものが有るんだな。まぁ、アイリスの事だ。明日がんばれよ。」
「はい?」
鈴は帰ってきたアイリスに誘われ次の日依頼に行くことになった。
「私起こしたよね。」
「さ、さてどうだったかしら。」
「…。」
次の日。
「鈴。依頼行くわよ。」
「後三時間…ぐふう」
「寝過ぎ、行くよ。」
「アイリス…横腹に杖は無いんじゃないかな…あたた…。」
鈴は叩かれた場所を擦りながらベッドから起き上がる。
背伸びをし、体の固まった筋肉を解す。
「んー。それじゃ行きますか!」
「ええ。練習した魔法見せてあげる。」
「あー、そういえば何か噂を聞いたね。」
「噂?」
「あれ?知らないの?今街中で蒼白の炎の魔法使いとか、後なんだかって言われてるんだよ?」
「なにそれ?知らない。」
「ん~。アイリス依頼受けまくったでしょ?その時に周りに見られたんじゃないの?」
「そういえば…そうだね…。」
「ま、そうなったものはしょうが無い。依頼いこっ!」
「そうだね。」
そういうと宿を出、ギルドへ向かう二人。
朝新しく開く露店に新たなものを求め、王都の主婦や冒険者が露店を見て回っているのが目に入る。
二人はギルドへ到着すると依頼を確認する。
「鈴が居るから少しむずかしいの行こうかしらね~。」
「さてさて、何があるかなー。」
二人が掲示板の前で依頼を選んでいると後ろから声が掛かった。
「おい子供は退きな。」
「私達が最初に見ていたんです。順番守ってください。」
「だと?」
男が顔を近づけるとあきらか酒臭い。
どうやらこの男は酔っているらしい、吐出される息が酒臭い。
「―――――!―――!――!」
「ねぇアイリス。何言ってるかわかる?」
「わかんない。」
二人が話していると男はアイリスに掴みかかった。
それを見ていたギルドの職員が止めに入るが男が止まる気配が無い。
「…テーザー銃。」
鈴は特徴的な銃を出現させた。
これは非致死性兵器と呼ばれるものだ。
先端がカートリッジ仕様になっており、引き金を引くとそこから数メートルに針が発射され、針と繋がっているケーブルから五万ボルトの電気が流れる仕組みになっている。
これを撃たれた場合、どんなに体を鍛えようと筋肉が一時的に麻痺するため動かすことができなくなる。
このままではアイリスにまで電気が流れてしまうため鈴は男を力一杯蹴飛ばすと狙いを定め針を撃ち込んだ。
男に針が刺さるとそのまま引き金を引き続ける。
それにより電流が相手の体を駆け巡る。
「あががが!痛い!ああああ!」
鈴は五秒ほど引き金を引くと引き金から指を離した。
「いてえ…酔が覚めちまったぜ…。」
「それは良かったですね。何かいうことはありませんか?」
「あ?なんもねーよ。」
「そうですか。」
鈴は再び引き金を引いた。
それと同時に再び電気が流れる。
男は苦しめ始め、体をビクッっとしている。
「ああああ、わかった!わがったから!」
男は苦しみながらそう言うと鈴は引き金を引くのを止めた。
「お、俺が悪かった。謝るから許してくれよな?な?」
「どうアイリス?」
「鈴、もういいわ。依頼いきましょ。」
「うん。」
鈴はテーザー銃を消すと掲示板に張ってあった依頼書を一枚手に取った。
「これは…?……どういうこと?」
「どうしたの?これはアルルト村?結構あるわね。馬を使って行ったほうがいいね。」
「…確かに全滅させたはず。なんでまたオークが発生して…しかも今回は大量に?」
依頼書にはこう書いてある。
依頼主。
アルルト村村長
内容。
オークによって村が破壊されてしまった。
村を再建するためにオークをいったい残らず倒してほしい。
また、剣などで攻撃したが斬ったそばから回復してしまい効果が無かった。
「これどういう意味?攻撃が聞かなかったってこと?」
「そうじゃない?何かおかしいわ。これにしましょう。」
そう言うとアイリスは受付に依頼書を出しに行った。
鈴はなにか考えこむように口元に手を当てていた。
「…(あの時確かにオークは私が殲滅した。まさか生き残りが?森は広いんだ。居ても不思議ではない…仲間の敵を討ちに?いやでも、それでも攻撃が効かないなんておかしい…これじゃまるで…)」
「鈴、受けてきたよ。馬借りに行きましょ。」
「え?あ、うん。」
二人は馬を借りるべく、鈴とアイリスは以前鈴が借りた店に来店した。
「いらっしゃい。この前借りたお客さんじゃないですか。どうでした?馬の乗り心地は。」
「予想以上に良かったです。」
「それは良かった。今回は二人分ですか?」
「はい。」
「ちょうど二頭居るんだ。良かったね。それじゃ前金十銀貨の二人合わせて二十銀貨ね。」
「はい。二十銀貨です。」
「たしかに。ではお二人とも裏にどうぞ。」
二人を店の裏へ通すと馬を止めている縄を二頭分解いた。
「前にも言ったけど一日五銀貨だからね。」
「大丈夫です。今日中には戻ってきます。」
「ははは。無理せずともゆっくりでもいいのですよ?」
「またまたー。」
「鈴いくよ。」
「おっと、じゃ、借りていきます。」
「いってらっしゃいませ。」
二人は馬にまたがると城門を抜け、ルーツ国アベル領まで馬を飛ばしたのであった。
馬で走ること数時間以前鈴が立ち寄った村へ立ち寄ることにした。
そこでアルルト村で起きたことの情報を収集しようというのだ。
村へ入ると、鈴に声を掛けて来る夫妻とみられる二人がいた。
「あの、この間の冒険者さんですよね?」
「えっと?」
「あの子の母です。」
「…はい。こちらもお話があるので少し宜しいですか?」
「はい。」
夫妻は鈴にもう一度礼をするべく声をかけてきたらしい。
しかし、鈴の気持ちは複雑だった。
「ではこちらからいいですか?」
「どうぞ…村のことですよね?」
「はい。あの時私はあの場に居たオークを全て討伐しました。しかし、今回依頼を見てみればオークに襲われたと書かれていました。もしかして討伐しそこねたオークが居たのかと思いまして。」
「村を襲ってきたオークは以前に見たオークより少し違いました。」
「違う?」
「はい。まず肌の色が違いました。」
「アイリス、これって変異種ってやつ?」
「そんなポンポン変異種が居てたまるかってね。」
「じゃ、なんだろう…。」
「若者が戦ったのですが、剣で攻撃しても血の一滴も流さず、斬り口は直ぐに回復してしまうのだ。」
「…アイリス。」
「そうね。考えてることは一緒だと思う。」
「何かわかったのですか?」
「ええ。わかりました。直ぐに対処します。」
「お願いします。どうか俺たちの村を取り戻してください。」
「任せてください。」
そう言うと二人は馬にまたがりアルルト村へ走りだした。
以前と同じように二十分ほどで到着したが、アルルト村は無残にも家は壊され、田畑は荒らされ、道には赤黒いシミが点々としていた。
しかし、死体が無いのだ。
「今回の件は確実にあいつが絡んでるのは確実ね。」
「そうだね。闇ギルドのネクロマンサー。」
「鈴、今回は銃が効きそうになさそうね。」
傷が自動回復されてしまうということは下手に銃弾を撃ち込んでも撃ち込んだ側から回復されてしまう恐れがある。
12.7x99mm NATO弾ならば着弾時の運動エネルギーで吹き飛ばすことができるが、あのネクロマンサーのようにバラバラになっても再生するタイプの場合意味が無い。
「大丈夫。アレ使う。M2火炎放射器。」
「ああ、あの炎の武器ね。それなら行けると思う。」
二人は話しながら辺りを警戒しながら村の中を歩いていた。
すると廃墟の隣から青白いオークが一匹出てきたのだ。
「来たわ!<蒼白の炎よ!世界に満ち溢れる酸素よ!我の力の糧とし、ここに集い炎よ燃え上がれ!蒼白の炎弾!>」
アイリスが高速で詠唱を終わらせると蒼白の榴弾が生成されオーガへと放たれ、着弾したオーガはあっという間に蒼白の炎に包まれ灰になっていく。
「おー。アイリスすごいじゃん!なんか詠唱も独特なものになってるし!」
「昨日憂さ晴らししながら考えたのよ。」
ザッ。
後ろで物音がした。
鈴は直ぐに振り返り通路に出てくるオーク三体を確認すると火炎放射器の引き金を引いた。
炎がジェット水流のように空中を突き進みオークを焼き払っていく。
火炎放射器は炎がついた液体を放出するものであり、その炎を浴びたオークの体表には液体がつき炎が消えない。
更に体が燃料となり燃え上がっていく。
死体だからだろうか、よく燃える。
「これで四体。」
幸い村の家は石でできているため周りへの被害は少ないようだ。
「やっぱりネクロマンサーの作った屍人形と言えど灰になったら何も出来ないわね。」
「うんうん。あの時も必死に防御してたからね。炎に弱いみたいだね。」
「…団体さんのお出ましみたいよ。」
「これは…。」
そこにはオーク、人、ウェアウルフなどが混じっていた。
どれも共通していることは肌が青白く生気がないことだ。
「数が多い。恐らく村人まで屍人形にされたのね。」
「ひどい…。」
「鈴、動かないでね!<蒼白の炎よ!世界に満ち溢れる酸素よ!我の力の糧とし、此処に集い燃え上がり、不死をも殺す炎雨となれ。蒼白の五月雨>」
アイリスの魔力が辺り一帯に急速に広がると空から蒼白の炎が降り注ぐ。
唯一安全地帯はアイリスの周り一メートルだ。
蒼白の炎の雨に触れた物は例外なく燃え始め、辺り一帯が炎に包まれていく。
石は融解し、肉は焼け灰に、地面は燃え広がり蒼白の草原のように見える。
「ちょ、ちょ!アイリス村が無くなる!てか熱い!」
「<魔力よ、盾となれ!シールド!>」
「ふひい、死ぬかと思った。」
「この魔法は一人の時しか使えないね…味方に被害が多すぎる。」
「そうだね。使う前に気がつこうね。」
「ごめん。」
アイリスは敵が視界から居なくなったことを確認すると魔力供給を止め、炎の雨を消した。
団体で来ていた屍人形は一体残らず灰となり風に流されていく。そして村は鈴達が来る前より廃墟とかしていた。
「これ…どうするの?」
「……浄化の炎で村に掛かった呪いを払ったって事にしよう。」
「なんだそれー!」
「ひとまずこれで依頼は完了かな?」
「そうだね。依頼書にあったオーク…エトセトラは倒したし、完了のはず。」
「あのネクロマンサーが居ないのは気になるけど、とりあえず戻ろう。」
鈴とアイリスは村の少し前に休ませていた馬にまたがると先ほどの村へ引き返していった。
「おや?あの村に放った子達の反応が消えた。まさか倒されるとは思いもしなかったですね。」
「何いってんだい。あんな雑魚魔物に細工したところでたかが知れてるだろ。」
「まあ、そうですけど、これは実験です。」
「実験?」
「そうですよ。今回細工したのは自己再生なんですが、私みたいに理性があれば普通に魔力消費で出来ますが、命令しか聞けないあの子たちには無理なんですよね。そこで蘇生段階で術式を体に埋め込んで魂を燃料として回復を行うのですよ。魂とは膨大なエネルギーを持っていますからそれを糧とすれば自己再生できると考えたのですよ。」
「私にはシュバルツの言ってることの半分もわかりゃしないね。」
「まあ何度も斬られてしまったら魂が消滅してしまうのが欠点ですが。ですが今回は成功です。これで次の段階に入ることが出来ます。それは―」
「オーク達を討伐してくださり本当に有難うございます。」
「いえいえ。気にしないでください。」
「…討伐過程で屍人形により街が汚染されていたので申し訳ないのですが炎で浄化させてもらいました。」
「そうですか…。わかりました。」
「後報告が一つあります。」
「はい?何でしょう?」
「こんなこと聞くのも失礼ですが、少なくとも戦った若者は死にましたよね?」
「はい…。未来ある若者が何人も戦死しました。」
「やっぱりそうだね。」
「そうね。」
「あの、何のことでしょうか?」
「私達はその若者だった物と戦いました。」
「な、なんですと!?」
「街を襲わせた主犯はおそらく…いや、確実にネクロマンサー。若者達の遺体も屍人形に変えられていました。」
「なんということだ…。」
「…せめてもこれ以上苦しまないように火葬してあげました。」
「…そうか…ありがとう。この事は遺族には黙っておこうと思う。」
「そうですか。…村長さんの決断ですので私達は何もいいません。」
「ありがとう…。」
「…では私達はこれで。」
アイリスは村長から署名をもらうと鈴の後ろを追いかけるようにして出て行った。
「それじゃ王都まで帰ろ。」
「そうね。王都に帰ったらどこか食堂にいきましょ。お腹減ったからね。」
「だね。おなか減ったよー」
二人は話しながら馬を止めている縄を解くと、馬にまたがり村から出発した。
道中魔物に出くわすこともなく、安全に王都まで帰還したのであった。
「このお肉美味しい!」
「鈴太るわよ。」
王都に到着した二人は食堂で少し早い夜食を食べるのであった。
アイリスの蒼白の炎の魔法名は鈴に影響を受けており、漢字上記になっています。
今回は蒼白の五月雨。
蒼白の炎が高密度の魔力と共に燃えながら降り注ぐ魔法です。
範囲魔法ですので、自分以外の者に問答無用で攻撃してしまうため非情に危険。
詠唱の不死をも殺すとは昔から現代までゾンビやバンパイアなどが炎に弱い事を元に書きました。
魂については膨大なエネルギーを持っています。
魂とはこの世に存在し得るための物でそれをエネルギーに変換することで事象を発生させます。
簡単に一言で言いますと、存在の力ですね。
但し、記憶や存在した事実は消えません。
魂は世界と接続するためのミドルウェアです。
世界―魂―肉体
っとなり、肉体で得た記憶は魂を経由して世界に記録されます。
肉体は記憶のストレージです。
逆に普通の存在は世界から記憶を取り出すことは出来ません。
リビングデットの設定は追々説明いたします。




