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オーガ討伐3 RPG-7

幾度と無くリロードを繰り返しているとオーガが叫んだ。

鈴は何事かと思いながらも引き金を引くがオーガの顔寸前で何か見えない壁に弾かれるようにして銃弾が停止してしまった。

それは以前にも同じようなものを見たことが有る。


「あれはシールド?教皇が使ったのと同じ?」


しかしオーガの行動はそれだけではなかった。

傷口を回復魔法で癒し始めたのだ。

鈴は直ぐに銃弾を放つがシールドに阻まれオーガに到達すること無く地面へ落ち、光となって消えていく。


「何この無理ゲー!kord重機関銃!」


5.56mmから12.7mmに切り替えた鈴は力を込めオーガの顔面目掛けて引き金を引き続けた。

シールドには大きな波紋が広がるが、教皇の時のようにヒビが入ることは無かった。


「何このチート!イルミス!」

「分かっている!こちらも傷をつけた側から回復されている!奴の魔力が切れるまで待つんだ!」

「魔力切れまでまつ…?こんな巨体のを?いやいやいや…そんなの待ってたら私の腕がしびれちゃうんだけど。」


鈴は横目にもう一体の討伐状況を見てみた。

あちらは順調に傷をつけオーガの動きが鈍くなっている。

が、こちらはまだピンピンしている。


「きっついなぁ。これ以上強い運動エネルギーを持つ兵器なんて無い…無い?…いや…あるな。でもなぁ…まあいいや。」


鈴はkordを消すと狩猟用ライフルを取り出した。

装填する弾は.700ニトロ・エクスプレス弾だ

これは70口径の超大型のライフル弾であり、地球では通常生産されていない特注品の弾丸だ。

この弾の特徴としては、大人の人間が撃っても体勢を崩す事。

慣れている人は体が半分浮く程度で済むが、それだけ反動が大きい弾丸なのだ。

もちろん体が軽い鈴が撃てばどうなるかは使う前から一目瞭然である。


鈴は弾丸を込められた銃を頭に狙いを定めると引き金を引いた。

今まで以上の轟音と共に弾丸が発射され、シールドを貫通しオーガの頬の肉を抉る。

そして鈴は4歩ほど後ろへ反動で後退し、危うく倒れそうになった。


「きっつ!これ無理だこれ!」


鈴はオーガを見るとほほを抑えて苦しんでいるオーガの姿が合ったが、シールドはオーガの魔力により修復されてしまっていた。


「あー。あー。メンドクサイナー。別に倒してしまっても構わんのだろ?」


鈴はライフルを消すとRPG-7を出現させ、発射体勢に入った。

鈴はシールドを反応装甲の一種と仮定し、それに見合う弾頭を選んでいた。

それは爆発反応装甲を貫通することができるPG-7VRだ。

これは運動エネルギー兵器とは違い化学エネルギー兵器とも言われている弾頭だ。


さらに鈴は昔調べた事があったうろ覚えであるが金属は有る一点に圧力がかかると液体に似た性質になることを思い出していた。

魔力で出来た反応装甲と仮定した場合、魔力の装甲に強い衝撃波を与え、魔力の結合を緩めることによってそれを突破することができるのではないか。

それにぴったりなのがPG-7VR弾頭なのだ。

しかしそれはただの憶測でしか無く、通じるかは運次第であった。


「理屈はいい!とりあえずブチ込む!」


鈴は照準を合わせると安全装置を外し、引き金を引いた。

それと同時に弾頭が飛び出しオーガのシールドへと突き刺さる。


先端に付いている小型の成形炸薬弾が起爆し、メタルジェットが発生する。

それは魔力でできたシールドを侵食し、超高圧状態となりシールドに大きな波紋が広がる。

今までに見た波紋ではなく水の様な波紋である。

そしてそこに二段目の成形炸薬弾が起爆し、二度目のメタルジェットが発生し、シールドを易易と貫通する。

貫通したメタルジェットはオーガの肉を貫き顎の骨を容易く貫通し突き抜けていった。

運がよいのか脳へのダメージはなく、ただ頭に穴が空いただけですんでいる。


「鈴!何をした!?」

「ちょっと痛いの打ち込みました!そっちはどうですか!」

「回復がなくなっている!これから反撃する所だ!」


オーガはあまりの痛みに回復を行う余裕が無かった。

鈴は直ぐ様M4を取り出すと顔に向けて引き金を引く。

5.56mmの弾丸がオーガの目を捉えその目玉を潰した。オーガは更に声を上げ目を押さえた。

その時隣からドスンと言う音が聞こえてきた。

あちらのオーガが膝をついたようだ。

こちらもあと少しというところまで来ている。

イルミス達が足元を切りつけやっと事で変異種のオーガが膝をついた。それと同時に地面に変化が現れ、目を押さえていない手がズッポリと地面に沈み込んだ。

エミリアの魔法だ。

更にバランスを崩したオーガは顔の一部まで地面に突っ込んでしまった。

そのタイミングで土を元に戻したためオーガは身動きを取ることができなくなってしまったのだ。

そこにイルミスがよじ登り首筋目掛けて渾身の一撃を加える。

やはり首と言うことも有り、一部の皮膚が柔らかくそこに剣が食い込み横に力一杯剣を薙ぎ払う。


「どうだ!」


イルミスはオーガから飛び降り、オーガを見た。首からは血が溢れ出ている。

致命的な一撃をオーガに与えたのだ。

オーガは最初は苦しみ、痛がっていたが、次第に動きが鈍くなっていき、体から力が抜けたようにその場に崩れた。


「よし!倒したぞ!」


エリス側も倒したらしく調度良いタイミングだった。


「まさか変異種をこうも容易く倒すとは驚きだよ。僕達が早く倒して援護に行かなければならないと思っていたのだがね。」

「まぁ、俺達だけでは無理だっただろう。鈴のおかげだ。」

「え?私?」

「そうだ。さっきのあれは何だったんだ?あの筒みたいな物は。」

「ああ。RPG-7のことですね?あれは前に説明したとおり軍事用の鉄の特殊装甲馬車みたいな物を破壊するための武器です。アイリスの話を聞いたことと、実際にアレを試して科学の法則が通じることがわかったので撃ちました。(でもうつまで結果はわからなかったけどね。)」

「よくわからんが、変な形でシールドを貫通してたな。」

「どんな感じかしら?」

「シールドを破壊するんじゃなくてまるで水面に針を落とすかのように貫通してたんだ。」

「…もしかして防御魔法としての機能が一時的に損なわれたってことかしらね。」

「エミリア、どういうことだい?」

「シールドは防御魔法の一つ何だけど、これは魔力をその場で固めて身を守るものなの。だから破るには固めた魔力を砕く必要がある。でもその話だと固めた魔力がもとに戻って貫通したみたいなのよね。」

「そんなことが有るのかい?」

「分からないわ。初めてのことよ。」

「まあ常識とは日々非常識になるものだよ。(全然わからん。これでごまかそう。)」

「そうね…魔法も日々進歩してるしって、貴方のは魔法じゃないわよ。」

「バレたか…。」


鈴はイルミスをチラ見すると助けてくれっといった目線をイルミスにぶつけた。


「そんなに質問攻めにしないでくれ。鈴はうちの隠し球だからな。」

「…そう。それならいいわ。」

「ほっ。」

「とりあえず、このオーガどうするか。」

「僕達だけじゃ解体出来ないから置いておこう。だれかオーガの素材欲しい人いるかい?」

「ぶっちゃけ、加工も値段も掛かるオーガの素材とってもめんどくさいだけなんだよなぁ。国に売ったほうが儲かるんだよな。」

「それはどうだが、イルミスはどうだ?」

「俺もいらん。これ以上防具が重くなると動きづらい。剣もいいもの貰ってるしな。」

「じゃ、僕達は売り払うけど君たちも売り払うのかい?」

「一応、変異種のオーガだ。杖に使えば魔力の増幅効果が有るだろうから骨の一本は貰っていこうと思う。休んでる仲間が居るものでな。」

「そうか。ではこのオーガの処分はギルドに任せよう。」

「そうしようか。少しすまないが、そちらの魔法使いを貸してくれないだろうか。変異種の腕を一本燃やして骨にしてもらいたいんだ。」

「エミリアいいかい?」

「別にいいわよ。ただ、少し時間掛かるわよ。」

「構わない。こちらのオーガから少し金貨を差し引いいておいてくれ。今回の礼だ。」

「ありがたくさせてもらうよ。」


エミリアはイルミスと共に変異種のオーガへと歩いていく。

鈴はまったくそういう話題がわからず、別に防具もいらないので話に入らないでいた。


「(実は燃やす手段が有るなんて言えない!)」


鈴はM2火炎放射器などの火を起こす武器もあるのだが、イルミスはそのことを思い出していないようだった。


「ふぅ。それにしてもニトロ・エクスプレス弾なんて撃つものじゃないね。反動がすごかったし、今回は良かったけど、もし転んでたら危ない…。」


鈴は今回の反省をしているようだ。

大人でも慣れない人が撃てば体勢を崩す.700ニトロ・エクスプレス弾は子供には到底使えないものだったようだ。

それは魔物との戦闘で致命的なものに繋がる恐れがある。

魔物の前で体勢を崩せばまず死ぬだろう。

今回は四対一だったが、今後の事を考えるとこの弾は使えない。


「今回はRPG-7が有効的だったし、シールド持ちにはRPG-7PG7VR弾頭が良さげかな?シールドも貫通出来たし。よし、これなら勝つる!もう何も怖くない!」


鈴が頭のなかお花畑をやっている側ではイルミスとエミリアがオーガの腕の切断、焼却にとりかかっていた。


「そういえば骨は燃やしたら脆くなるのか?」

「たぶん脆くなる。魔物を燃やした時骨が脆くなっていたわ。」

「そうか…。なら関節部分を風の刃で切断できるか?」

「やってみるわ。<…風よ。集い集いてここに形をなせ……我願うは全てを切り裂く風の刃。…ウィンドカッター!>」


魔力を込め、詠唱によりイメージを確立したエミリアの魔法は変異種のオーガの関節を半分あたりまで切り裂いた。

それを見たエミリアはため息を付いた。


「はぁ。骨で魔法が止まったわ。悪いけど肉をそぎ落としてくれないかしら?」

「分かった。やろう。」


イルミスは切込みが入った所に剣を入れると力を目一杯込めると腕に沿って斬り裂いた。

刃を食いしばり手首まで肉を斬り裂いたイルミスは骨に沿って今度は刃を入れていく。

一五分ほどオーガの腕と格闘していると足元は血だまりでいっぱいになっていたが、腕の肉を剥がせたようだ。

骨がむき出しになっている。


「血なまぐさいわね。<風よ。ウィンド。>」


風がイルミス達を通り過ぎ、血なまぐさい匂いを吹き払っていく。


「ありがとう。エミリア。」

「どういたしまして。早めにやっちゃってちょうだい。また臭いがでるから。」

「ああ。ちょっと引っ張るの手伝ってくれないか?あと少しで骨が肘から外れそうなんだ。」

「いいわよ。」

「1...2...3で引っ張るぞ。」

「ええ。」

「1...2...3!」


二人は渾身の力でオーガの腕を引っ張った。

ブチブチと肉の切れる音が聞こえてくる。


「もう…少しだ!」


そのまま引っ張り続けると肘から骨が外れ、腕の骨が取れた。

若干肉がまだ繋がっているため、それを切断する。

少し休憩を置いてエミリアに魔力をためてもらい今度は手首を切断したのだった。





「おーい!腕の骨が取れたから帰ろう!」

「そうかい?では帰ろうではないか。」


イルミスは自分の腕より太い骨を抱えつつ、森の中を移動して行った。

当然イルミスは直ぐには戦闘に参加出来ないため仲間がそれをカバーする。




先日歩いた道を引き返すこと数時間、やっとのことで関所が見えてきた。


「ふぅ。疲れたぜ。早く返って休みたい。」

「同感だな。久しぶりに疲れた気がするぞ。」

「休む前に汗流してね?結構臭うよ?」

「そうか?」

「そうだよー。」

「鈴ちゃんがそういうならそうなんだよ。」


話していると関所の兵士がこちらに走ってくる。


「皆さんご無事でしたか。」

「ああ。無事だがどうかしたか?」

「実は皆さんが行った後ギルドからオーガ二体の内一体が変異種と連絡が入りまして…。」

「ああ。変異種ならここに居るぞ。」


イルミスはそう言って骨を掲げた。


「もしや倒したのですか?」

「倒してなかったらここに居ないさ。」

「で、では私は上官にこの事を伝えてまいります。帰りの馬車は来た時と同じ場所に止まっております。」

「わかった。ありがとう。」

「では。」


そう言うと兵士はまた走って行ってしまった。


「忙しい新米兵士だね。」


エリスがそういう。


「え?新米なの?」

「そうだよ。あの鎧の綺麗さと掌を見なかったのかい?アレは新米兵士だよ。」

「そうなのかー。」

「とりあえず帰ろうか。おーい。馬車出る準備してくれー。」


二つのパーティは無事オーガという巨大な魔物の討伐を終え、ルーツ王都への帰路につくのであった。




少し前の宿屋にて。

太陽が高く上り、昼ごろだろうか、アイリスが起きだした。

アイリスは鈴が居ないことに気が付き、イルミスの部屋へと移動する。

しかし、鍵は閉まっておりドアは開かない。

受付で聞いてみると皆して出て行ったことがわかった。

アイリスは直ぐ様ギルドへ向かうとイルミス達の行方を聞いたのだ。


「イルミス様は現在エリス様パーティと合同でオーガ討伐に向っております。」

「なっ!イルミスおいて行ったわね!」


アイリスはギルドの中で騒ぐと直ぐ外に出て行った。

その日王都周辺で魔物を狩り続ける蒼白の炎を操る女性の魔法使い(アイリス)が度々目撃されたとか。


魔力の盾 シールドは魔力を固め、空間に置くことで外部からの攻撃から身を守っています。

シールドは例え一部が破られてもシールドの表面は固まること無く魔力が流動しているため破られた箇所に魔力が集まり修復されます。

弾丸を撃ち込んだ時に波紋が起きるのは流動している魔力です。

今回のPG-7VRを撃ち込んだ時に起きた波紋は超高圧により魔力の結合が弱まり、固まっていた魔力が流動したことで発生しました。

なので二段目の成形炸薬弾がシールドを貫通したのです。


シールドにも強度の強弱があり、魔力の扱いが上手な人、魔物ほど強度が増します。


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