オーガ討伐2 フラグ + フラグ
イルミス達が戻ってくる。
オーガが目撃された場所を聞いてきたようだ。
「これからオーガが目撃された所までいくぞ。道中油断するなよ。」
「僕達もいくよ。遅れを取らないように。」
そう言うと二つのパーティはオーガが発見された国境沿いの深い森のなかへ入っていく。
その森は木の身長が高く、20メートル程の木々が立ち並び、地面に光が届きにくく雑草があまり生えていない。
「静かだな。」
「ああ。虫の声すらしない。」
「静かでいいじゃねーの?」
「馬鹿か?それほどの何かが居るってことだ。」
「もしかして奥地にオーガが居た場合、奥地の魔物がこちら側に来ていてもおかしくないですよね?」
「そうだ。それが危ない。奥地の魔物は成体のものが多く強い種類が多いんだ。」
「なるほど。」
鈴はM4を構えながら全員の後ろをついていく。
辺りを見回しつつ歩き続けると、木がなぎ倒されている場所を見つけた。
「ここは…オーガがなぎ倒したのか?」
「そうみたいだ。この倒れ方は力任せにへし折ったって感じだね。バカ力もいいところだね。」
イルミスたちが状態を確認していると、辺りを警戒していたエリスパーティのクロイツェルが声を出した。
「皆様後ろから魔物です!」
全員が振り向くとそこには狼型の魔物の群れが二十頭ほど居た。
それらは明らかにこちらに対して敵意を持っていることがわかる。
何故なら全員が威嚇として牙を剥き出しにし、涎を垂らしている。
恐らく奥地から追い出され、腹が減ってさまよっている所を見つけたのだろう。
エリス達もイルミス達も直ぐに戦闘態勢に移ると迫り来る魔物を遊撃するために前に出る。
鈴は迫り来る魔物の群れに制圧射撃を行った。
その射撃で何体かの魔物が弾丸の餌食となり、地面に転がった。
イルミス達は既に慣れてしまった音だが、エリス達は音に驚いていた。
「何してるの!ほら来るよ!」
鈴はリロードしながらこちらを見ているエリス達に指示を飛ばしていた。
その掛け声で我に返ったのか四人は迫り来る魔物を見据えた
「行くぞ!」
「君たちこそ足を引っ張らないでくれよ。」
そう言うと前衛組は魔物へ向かって行く。
鈴とエミリアは後方から支援を行う。
鈴はM4からMP5SD3へ銃を変えると直ぐ様魔物へ向け銃弾をばら撒いていく。
以前アイリスから五月蝿いと言われた覚えがあり、エミリアの隣では消音器が付いているSD3を選択したのだ。
さらにアサルトライフルでは魔物を貫通して誤射してしまう恐れがあったのもある。
「ちょろいちょろい。」
鈴は三点バーストで魔物を仕留めていく
基本突撃しかしてこない狼型の魔物は頭に銃弾を受け即死するのだ。
胴体に銃弾を受けた魔物も動きが鈍くなり、そこを剣や槍で斬られ絶命する。
エミリアは速度が早い風の魔法を使い、魔物を切り裂いていく。
「<風よ!荒ぶり切り裂け!ウィンドスライス!>」
対象の魔物は鎌鼬のように体中を風の刃で切り裂かれ、体中から血を流し地面に倒れ伏す。
エミリアの詠唱中にこちらに向ってくる魔物が居たが全て鈴により排除されている。
「リロードリロードっと。」
鈴はリロードを始めると前衛に居たイルミスから声が掛かった。
「ちっ!鈴!でかいのがそっち行ったぞ!」
「ちょ!今リロード中!」
それはイルミス達を飛び越えると鈴に向って一直線に走ってくる鈴はリロードをキャンセルし、魔物の口に銃を横に突っ込み、なんとか耐えた。
しかし、魔物の前爪が鈴を切り裂こうと何度も目の前を切り裂く。
鈴の腕が徐々に開き始め、魔物との距離が縮まっていく。
「ぐぬぬ…!」
そこへ前線から引いてきたスチルが横一文字に剣を振るう。
魔物の背中に傷ができるが致命傷にはなっていないようだった。
魔物は鈴を諦めると一旦距離をとった。
しかしそれが誤りだった。
「うわ!涎で汚い!消して~のAK47~」
鈴は気の抜けたような声で銃を構えるとその魔物に向って引き金を引き続けた。
強化された筋力により多少はバラけるが一箇所に銃弾が撃ち込まれていく。
魔物は何が起きたのかわからず体を撃ちぬかれ、頭部はぐちゃぐちゃになったのだ。
「ありがとう!助かりました!」
「礼はいい。もう終わり。」
先ほどの大きな魔物が頭だったのか生き残った魔物たちは散り散りになって逃げていく。
イルミス達は剣に付いた血や肉を落としこちらへ歩いてくる。
「大丈夫だったか?」
「大丈夫です。」
「それにしてもえげつねーな…あの魔物頭ぐちゃぐちゃだぜ。」
「女の子に牙を向けた狼さんは処刑です。」
「アラス。お前も気をつけろよ。」
「えっ?」
突如襲ってきた魔物を撃退した鈴達は森の奥に進んでいく。
先ほどの場所は血の匂いで魔物や肉食動物が寄ってきてしまうためだ。
「それにしてもそれは恐ろしく強い武器だな。どこから現れているかわからないが、とても強い。」
「でっしょー。」
「どういう仕組なんだ?」
「なーいしょ。」
「ケチだな君は。」
そんな話をしながら奥地を探索するが一向にオーガを見つける事が出来なかった。
そして時間はそろそろ夜になろうとしている。
「そろそろ野営しよう。」
「そうだね。これ以上の探索は体力の消費も考えると休んだほうがいいね。」
「野営ってなにすればいいですか?」
「そうだな、鈴は手頃な枝を持ってきてくれ。火はあちらさんの魔法使いにつけてもらう。」
「了解~。」
鈴はそう言うと近くに落ちている枝を拾っていく。
乾燥している枝の方が火がつきやすいので、乾燥していそうなものを選んでいく。
「うーん。別に魔法でつけるんだから別に落ちてる気じゃなくても良さそうな…。枝を斬るためになにか出さないと。えーっと…89式自動小銃。さらーに銃剣をここにっと…よし!」
鈴は手頃な枝を銃剣を使い少しずつ切りつけていく。
「使いづらい…斧かなにか借りてくればよかった…って言うか、これ折った方が早くないかな?」
鈴は試しに枝に掴みかかると全力で枝を曲げる。水分を含んでいて折れにくかったがポキっと言う音とともにえだが折れた。
「これ銃剣より早い!」
鈴は銃を消すと枝をぽきぽきと降り始め、両手一杯になった枝を持ち、イルミス達の元へと戻る。
皆の場所に戻ると既に枝が集まっており鈴が一番最後だったようだ。
「では火を着けてくれないか?」
「わかったわ。」
「<火よ。我の拳に現われよ。>」
エミリアの手に炎が現れ揺らめき始めた。
それを枝に近づけ、火をつける。
エミリアは魔法を消し、その場に座り込んだ。
「温かいわね。」
「そうだね。」
「きっと鈴ちゃんとエミリアちゃんを抱き込めばもっと温か―ひぃ」
「静かにしようね?ね?」
鈴はさり気なく銃を出現させるとアラスに向けた。
もちろん玩具の銃である。
「お、おれは巡回行ってくるぜ~!」
アラスはそう言うと鈴達から駆け足で離れていった。
「扱いに慣れてるのね。」
「私の仲間から聞いたんです。アラスが変な行動を起こしたら叩くか脅すと言いって!」
「それでも反省しないなんて…なんていうか…馬鹿というか。」
「ねー。」
鈴は火が消えないように枝を継ぎ足す。
そこにアームとクロイツェルがやってきた。
「俺たちは深夜の番だから先に寝かせてもらう。」
「おやすみ~。」
そう言うと地面に横になった。
「夜襲が無いといいわね。」
「やめて!それフラグ!」
「フラグ?」
「あー。ある言葉を言うとそうなっちゃうって意味です。例えば戦争に行く人が、帰ってきたら結婚するんだって言うと死亡フラグが立ちます。」
「なにやら新しい言葉が。まあ、変なことは言うべきではないと言うことね。」
「とりあえず買ってきた食べ物でも食べるかな。」
「そうね。歩きっぱなしでお腹へったわ。」
「私はこの露店で買ったパンと干し肉!これを合わせて…少し調味料が足りないけどハンバーガーのかんせ~い。」
「ハンバーガー?ただ肉とパンを挟んだだけじゃない。」
「私の居たせ―国にはこういう食べ物が有ったのだよ。」
「ふーん。私はパン一つね。」
鈴とエミリアは食事をしているとイルミスとエリスが戻ってきた。
「食事が終わったら先に寝てろ。夜は俺たちが見張るからな。」
「それじゃ、僕は休憩させてもらうよ。」
「分かった。少し立ったら呼びに来るぞ。」
そう言うとイルミスは少し離れた位置に戻っていった。
「あー美味しかった。」
「食べ終わったら二人は寝るといいよ。夜は僕達に任せなよ。」
「恩に着ますー。」
「わかったわ。」
「何か有ったら起こすから、そこだけ許してくれよ。」
「了解さー。」
「ええ。」
エリスはイルミスが呼びに来る前に元いた場所へ戻っていった。
鈴は寝るときに砂がつかないように何か無いか道具入れを探ったが何もなかったようだ。
「寝る時服汚れちゃうなぁ。」
「そこに少しだけ草が生えてるわ。そこで寝ましょう。日を少し貰っていこう。」
「そうだね。」
鈴は火が消えないように枝を継ぎ足すと火が付いた枝を持つと寝場所の近くに火を運んだ。
「あっちっち。」
そこで改めて火を置くと枝を継ぎ足し火の勢いを上げた。
「これで寝れるわね。」
「そうだね。」
「それじゃ私は寝るわ。」
「うん。おやすみ。」
そして二人は夢の中へ落ちていく。
鈴はふっと何かに呼ばれたような気がした。
しかし頭が働いていない鈴は無意識のうちに返事をし、そのまま寝てしまうが体を揺すられ徐々に意識が覚醒してくる。
それとともに何か地響きや折れる音が聞こえてくる。
「起きろ鈴!」
「うんにゃ…まだ明け方…じゃないですか…この音なんですかぁ…。」
「分からないが、恐らくオーガだろう。こんな地響きを立てて迫ってくる魔物なんてそうは居ない。」
「わかりました。ふわぁ…。」
鈴が起きると既に全員が起きていた。
「全員起きたな!」
イルミスの声が響く。
それと同じくして地響きもこちらへ向って大きくなってくる。
「恐らくオーガだ!この狭い地形ではこちらが不利だ!まずはオーガに木をなぎ倒させるんだ!」
「僕のパーティや君たちも倒れてくる木には気をつけるんだよ!」
次第に木が倒れる音が大きくなり地響きが大きくなっていく。
そしてそれが姿を表した。
片方は深い緑色の皮膚をしているが片方は黒に近い皮膚の色をしている。
それを見たイルミスやエリス、アーム若干焦っていたようにみえる。
「変異種だ!」
鈴には何方が変異種だかわからなかった。
「どっちがですか!」
「黒だ!」
「了解です!」
「俺たちが黒をやる!エリス達はそっちを頼む!」
「わかったよ!無茶はするんじゃないよ。」
「そっちこそ!」
イルミス達前衛がオーガの足元に近づき切りつける。
しかし、変異種の皮膚は普通のより堅いのか向こうとくらべても明らか刃が通っていないように見える。
さらにイルミス達のは鋼、王国製の剣と槍のため切れ味も普通のとは違うのである。
変異種のオーガがイルミス達に気がつくと腕を振り回し始めた。イルミス達はそれを走りながら躱し、辺りの木をオーガになぎ倒させていく。
オーガになぎ倒させること五分ほど、周りの木はオーガによってなぎ倒され、オーガの体がまるまる収まるほど大きく開けていた。
「鈴!頼んだぞ!」
「おーけー!」
鈴はM4を出現させるとオーガの顔面に照準を合わせると引き金を引いた。
弾丸は正確にオーガの顔面を捉えるが、大岩ほどある顔面には豆鉄砲程度であったが、注意を引くことには成功した。
わずかながら血が流れているようにみえる。
「硬った!何あれ!アサルトライフルの弾でも少し食い込んだ程度?」
オーガは顔を片腕で隠しつつ足元のイルミス達へ攻撃を加える。
鈴はすぐにM4にグレネードランチャーを装着すると腕目掛けて引き金を引いた。
ポンっと言う音とともにグレネード弾がとんで行き腕で爆発を起こす。
しかし、オーガの腕は人間で言うかすり傷程度しかダメージを与えることが出来ずにいた。
「なにこれこわい。」
鈴はとにかく銃弾をオーガに向って打ち続けた。
覚えていただろうか。
あの時変異種が居ると離して未確認だと言ったことを。