オーガ討伐1
夕食を食べ終わり部屋に戻ってきた鈴とアイリス。
鈴は先ほど思ったことを聞いてみることにした。
「アイリス~。魔法ってどうやって発動してるの~?」
「魔法が気になるの?」
「それはもちろん。だって私の世界に魔法なんて無かったし。」
「それじゃ少し説明するわ。」
「はーい。」
「魔法は魔力とイメージで発動するの。詠唱はイメージを固めるためのワードでしかない。だから詠唱は本来いらないものなの。また精神状態が悪いと魔法をうまく発動できない。例えば寝起きや混濁状態。」
「ふむ…。」
「これが魔法の基本よ。属性は火、水、風、土 癒、特殊属性で光と闇があるわ。」
「ネクロマンサーとパーラが闇と光だったね。」
「そうね。パーラの方は知らないけど。」
「そっかー。ふむふむ…。アイリス、ちょっと良い話聞いてみない?」
「良い話?」
「そそ。さっきの蒼白の炎の話と今の話を聞いてピーンっと来たのよ。蒼白の炎は魔法の真理ではなく、技術の基礎を手にしたっていう話。」
「どういうこと?」
「私の世界は技術…科学が進歩していることは話したよね?私達の世界では小学生…子供の学校ね、そこでは理科と言う科学の勉強があるの。そこで炎を扱うんだけど、橙の炎から青い炎に変えられるのよ。」
「青い炎って魔法で言ってもかなり上級の魔法使いしか使えない色よ。どうやったらそんなことを…。」
「簡単なことだよ。人間って何があって生きてられる?」
「?水と食べ物でしょ?」
「惜しい!あとひとつ!」
「…空気?」
「当たり!そう空気、酸素なのよ!炎は酸素を供給することによって色を変えるの。沢山酸素を供給することで炎の燃焼効率をあげることができるの。(たしか)」
「それならだれでも蒼白を使えるようになるってこと?」
「そうだね。こっちの世界だとイメージが難しいと思うんだけど、魔法のイメージの段階で酸素を炎の魔力に酸素を沢山入れるように想像してみて。」
「うーん。<炎よ。>」
アイリスが掌に小さな炎の玉を出現させるが橙色のままだ。
「難しいわね…。」
「詠唱も変えてみたら?さっき言ってたし。」
「そうね。えーっと……<炎よ。空の息吹と合わさり、炎よ燃え盛れ!>」
アイリスがそう言うと炎が荒々しく手から噴き上げた。
「うわ!」
「っ!」
アイリスは直ぐに魔法を消したため宿に被害は無かった。
しかしアイリスは何かに気がついたようだ。
「今の魔法消費魔力が変わらないのにあんなに火力が…。」
「あーびっくりした。今のは酸素というより風だね。」
「難しいわね。空気…酸素だっけ?と風ってどう違うのよ?」
「同じものだけど、噴き上げる感じではないんだよね…そうだね。そよ風を想像してみて。それを掻い摘んで炎に取り込むように。」
「……<炎よ。空を取り込み炎を燃やせ。炎は青く高らかに!>」
するとアイリスの手元にまだ橙色が混じっているが輪郭が青い炎が出現した。
「やったじゃん!アイリス成功だよ!」
「なんだか…うれしいのだけど、今までの常識が崩れ去ったみたいよ。」
「常識なんて世界を超えれば非常識だよ。」
「…そうね。」
「科学は世界の理を求める物だからね。(たぶん)」
アイリスはその日一つ非常識になった。
その後魔法の練度をあげるべく夜遅くまで炎を出し続けたアイリスは言うまでもなく次の日寝不足と魔力消費による倦怠感に襲われるのであった。
次の日、ムクリっと鈴がベッドから起き上がるとアイリスがまだ寝ていた。
いつもは鈴が起こされる側なのだが、夜更かしが祟ったようだ。
「ふわぁぁ……。おーはーよーあーいーりーず!?」
「…五月蝿い。」
アイリスは如何にも眠そうな表情で立てかけてあった杖を振り下ろした。
しかしその杖にはいつもの威力は無くコツンっと当たる程度だった。
「痛…くない。ちょっとアイリスどうしたの?」
「…寝不足…後魔力使い過ぎた。」
「え?もしかして私が寝た後も魔法の練習してたの?」
「たぶん明け方ぐらい…」
「徹夜じゃん!今日は寝てなよ。」
「…そうする…。」
アイリスはそう言うと鈴と反対側に寝返りをうつと寝息を立て始める。
「早っ!?…まぁイルミスさんの部屋でも行こうかな」
そう言うと道具入れを腰に巻きつけるとイルミスの部屋に向う。
扉をノックし、イルミス達の部屋に入ると挨拶をする。
「おはようございますー。」
「おはよう。」
「鈴ちゃんおはよー。あれ?アイリスちゃんは?」
「おはよう。そうだなアイリスはどうした?」
「徹夜して魔法のトレーニングしてたみたいで、今も寝てます。」
「アイリスにしては珍しいな。何か有ったのか?」
「ちょっとしたことを教えただけです。」
「…?まぁいいか。俺は宿に追加料金を払ってくる。」
「了解です。」
そう言うとイルミスは受付に行ってしまった。
そこで鈴は一つ思い出した。
馬のレンタル料金を支払っていない。
恐らくアラスが立て替えてくれたのだろうか?
「アラスさん。馬の料金請求されましたよね?」
「うん?そうだね。」
「払います。五銀貨でしたよね。」
「いやいや、いいんだよ。男であるもの女性からお金をもらうなど、ましては役に立てただけでも光栄だぜ!」
「そ、そうですか。」
「とりあえず今日はパーティで依頼を受けようと思っていたんだ。」
「そうなんですか?」
「おうよ!アイリスちゃんが参加出来ないのは残念だが、鈴ちゃんがいるから俺満足!」
「あはは…。依頼って何の依頼を受けるんですか?」
「それはイルミスから聞いてくれ。俺は”良さそうな依頼が有った”っとしか聞いていないんだ。」
「そうなんですか。そろそろ帰ってくる頃かな。」
「そうだな。」
それから数十秒後イルミスは部屋に戻ってきた。
「おかえりなさい。」
「とりあえず二日延長してきたぞ。」
「イルミスさん、今日の依頼って何を受けるんですか?」
「ああ、今日はオーガ討伐に行こうかと思う。」
「これまたオーガと来たか。」
「うへえ。めんどくさ。」
「?? どうしたんですか?」
「ああ、鈴は知らないか。オーガって言うのは簡単に言うとオークを巨大にしたような魔物だ。知能はオークより高く、厄介な魔物に分類される。今回はオーガ二体が現れたようで他のパーティと二パーティで殲滅することとなる。」
「オークより大きいとなると骨密度も肉の硬さも大きくなるから…また重機関銃か…あれ肩が痛くなるんだよねぇ。」
「後中には変異種と呼ばれる魔法を扱うタイプもいるそうだ。今回は未確認だそうだ。」
「とにかく死なないように頑張ろう。鈴、後方支援は任せたぞ。」
「了解であります。」
「アイリスちゃんが居ないのが痛いなぁ…。」
一行はその依頼を受けるためギルドへ向かって行く。
アイリスは完全に熟睡していたのだった。
ギルドへ到着するとイルミスは予めに持っていた依頼書を受付にて手続きを進めていく。
「どのパーティがオーガ討伐するパーティなんだろう?」
「さぁ。俺にもわからん。」
とそこに横から割り込むように声が掛かった。
「君たちもオーガを倒しに行くのかい?」
「ん?君たちもっということは君たちが今回の仲間か。」
「その言い方だとそうみたいだね。」
「(なんかキザ男っぽい。)」
「おやぁ?そちらの丸腰の女性は誰だい?そんな子連れのパーティと組むなんて僕達もついていないな。」
「いきなり侮辱するとは…うちの後方支援を舐めてもらっては困るな。」
「後方支援?武器も魔力も持たずに?何を言っているんだい?」
「実践になればわかるさ。せいぜいその時腰を抜かさないようにな。」
「おいおい何やってるんだ?」
喧嘩腰になり始めていた相手パーティとアームの間にイルミスが入ってきた。
「どうも。そちらのリーダーは君か?」
「ああ。僕だよ。ランクBさ。」
「俺もBだ。今日はよろしく頼むよ。」
「とりあえず、自己紹介と行こうじゃないか。僕の名前はエリス・クトロアーツだよ。前衛さ。」
「私はエミリア・ハートネス。後衛の魔法使いよ。」
「クロイツェル・クロードです。以後、お見知り置きを。前衛でございます。」
「スチル・プローパ。よろしく。前衛。」
「こちらの紹介は終わったよ。君たちの番だ。」
そう言うと変に威張ったかのような感じで目配せをしてくる。
「俺はリーダーのイルミス・カーボイド。前衛だ。」
「アーム・スミスだ。よろしく。前衛を担当している。」
「アラス・アミランだぜ!よろしくな!前衛を担当してるぜ!エミリアちゃんぜひお茶で―ウガツ!」
「えーっとこうでいいのかな?」
鈴はアイリスに教えられたように近くにあったモップをアラスの頭にたたきつけた。
「酷いぜ鈴ちゃん…アイリスに似ちゃ駄目!」
「えっと?もう一発?」
「あ、ごめんなさい。」
「それじゃぁ…私は倉木 鈴。家名は倉木で、名前は鈴です。珍しい名前だと思いますがよろしくお願いします。おもに後衛を担当します。」
「石でも投げてるのかい?」
エリスは鈴を小馬鹿にするようにそう言うがあながち間違っていない。
しかし鈴の飛ばしているのは違うのだが。
「鉛球ぶち込みますよ。」
「なんだって?」
「なんでもないですよ。とりあえず、自己紹介も終わりましたし行きましょうイルミスさん。」
「ああ、行こうか。君たちも準備はいいか?」
「もちろんだとも。そちらこそ本当にいいのかい?」
「これでいいのさ。それでは行こう。」
「馬車を用意させてもらったよ。何せ国境沿いまで行かなければならないからね。」
「すまない。恩に着る。」
「別にいいさ。オーガでの働きで返してもらうよ。」
そう言うとギルドの外に止めてあった馬車の荷台に上がると馬車は出発した。
オーガが出没したというのはルーツ国とルドルフ皇国との国境付近の山間部だ。
巡回中の国境警備兵が見つけ報告されたそうだ。
ギルドに討伐依頼を出すことにより、兵士や国の税金を使わないという節約術となる。
もちろん冒険者にも利点があり、オーガなどの魔物が珍しい物を持っていたとしても国は一切関与することが出来ない。
それが例え国宝であろうとも。しかし謎の死を遂げる冒険者も居るとか。
オーガの骨は加工することで剣の柄や杖の材料になるため貴重である。
更には鎧の一部として使うことで防御力を得ることもできる。
しかしBランク級と高い魔物のためあまり市場に出回らないのだ。
一行は王国を抜け、六時間ほど馬車に揺られていた。
途中一回休憩をはさみ、馬の餌や水を与え二つのパーティは食事をとったりしていた。
「国境まであと少しってところか?」
運転手に声をかけるイルミス。
「ええ。国境まで後少しです。」
「この馬車は何処で止まるんだ?」
「国境の関所で止まります。皆さんのお帰りを待っています。」
「分かった。」
「さて、オーガをどうやって倒すか話しあおうじゃないか。」
「そうだな…こういうのはどうだ?」
「なんだい?」
「まず1:1の戦場を作り出し、敵の足を集中して攻撃する。これは当たり前と言えば当たり前なのだが、後衛には相手の顔を狙ってもらう。それにより足元への攻撃頻度が下がる。そこで足を出来るだけメッタ斬りにし、膝を着かせる。そこで相手の体によじ登り剣で首裏を斬りつける。後頭部は剣が通らないからこれしか方法はないと思うが、どうだろうか。」
「そうだね。人間と同じ構造をしているならばある程度深い傷を追わせれば倒すことができるだろうね。ただ、よじ登るのは少し厳しいだろうね。相手もただで登らせてくれるわけはない。」
「そこで、だ。こちらには魔法使いが今日休んでいてしまって居ないのだが、相手が手をつく瞬間地面を柔らかくし、手を地面に埋める。そこを元の硬さに戻し動きを封じる。後は剣を突き立てつつ登るという作戦だ。」
「いい作戦だね。それで行こう。」
「よし。決定だ。鈴、お前は顔を狙って撃ってくれ。」
「了解サー。」
「いい加減手ぶらなのはやめてくれないか?ここまでするという事はなにかあるのだろ?」
「鈴、出してみろ。」
「はい。」
鈴は掌にデザートイーグルを出現させる。
突然何もない場所に出現したそれに相手パーティは驚いた。
普通驚くのは当たり前である。
「それはなんだい?魔力も矢も付いていないじゃないか。本当にそんなのが使えるのかい?」
「ああ。鈴の話だとオークを肉塊にしたそうだ。」
「まあ違うのだけどね。」
「疑わしいな。まあ実践で見させてもらおう。」
「後注意だ。鈴の攻撃は相当五月蝿い。そこだけ気をつけてくれ。」
「五月蝿い?わかった。気をつけようじゃないか。」
作戦会議が終わり馬車に少しの間揺られると国境沿いの関所に到着した。馬車は関所の隣に止まりイルミス達は依頼書を関所の管理者に見せに行っている。
鈴たちは出発できるように待機中だ。
「うーん。オーガってどんな魔物なんだろう。AT-4とかRPG-7とか用意しておいたほうがいいかなぁ。」
鈴はまだ見ぬ巨大な魔物に対抗手段を過剰に考えていた。
「うーん。聞いた話だと巨体だからアサルトライフルの5.56mm弾は豆鉄砲レベルかなぁ?皮膚も硬そうだし…12.7mmのkord使うか…?でも顔を狙うから5.56mmでも大丈夫そうかな?」
鈴は一人で納得するとM4を出現させ待機することにしたのだった。
魔法にも科学の概念が使えるの世界の始まりが同じだからです。
そこで魔力により酸素の供給量をあげることにより炎を一段上にあげることが可能になります。