ぱーてぃほうこくかい
その頃村では、森のなかから何かわからない魔法のような爆発音が響いてくることに不安がっていた。
先ほど森のなかに一人の冒険者の少女が入ってくのは少人数だか見ていた。
それは村の中でどんどんと広がり村の若い男たちが武器を片手に森に警戒を向けていた。
そこに小さな人影が現れた。
村人の若い者達は警戒したがそれが森に入った冒険者だとわかると武器をおろした。
次第に近づいてくる鈴にある村人が反応した。
「おい、あの冒険者が抱えてるのってこの間行方不明になった子じゃないか?」
その一言に辺り一帯はざわめきだす。
鈴が村人の前まで来るとその女性を地面におろした。
その女性に向かってくる夫婦が居た。
「ああ…なんてこと…。」
「…すまない。娘を…娘はどうなっていたんだ。」
「…オーク達に捕まって…後は見たとおりです。」
「…糞!あの時娘と一緒に逃げていれば…!」
「彼女を殺したオークは全て殺しました。今は彼女の体を洗ってあげてください。彼女もそんなに汚れた体は嫌でしょうから。」
「…そうだな。すまなかった。娘を連れ帰ってきてくれて。」
「いえ。お構いなく…。褒められたことなんてしてませんから。」
鈴は馬を預けていた村人から馬を引き取るとルーツ王都へ向って馬を走らせた。
「鈴ちゃん遅いなー。」
「そうだな。どこまで依頼をやりに行ってるんだか。」
「そろそろ門が閉まっちゃうぜ。」
アームとアラスが門の所で鈴の帰りを待っていると、こちらに馬が走ってくるのが見えた。
閉門ギリギリの所で馬が一頭駆け込んできた。
「ってきたみたいだぞ。」
「鈴ちゃーんおかえりーってそれどうした?」
「んえ?ああ、この血?オークの返り血だよ。」
「遠距離主体の鈴が返り血を浴びるなんて珍しいな。」
「ちょっとね。」
「それにこの匂いは―」
「アラスさんストップ。それ以上言わないで。後で話すからね。アームさん。アイリス帰ってきてますか?」
「ああ、宿に居るよ。」
「新しい服買ってきてくれるように頼んでもらってもいいですか?…ちょっとこの服匂いがですね…。」
「分かった。ちょっと待っててくれ。」
そう言うとアームは宿へと駈け出した。
「アラスは彼処の店に馬を返しに行ってくれるかな?」
「了解サー。」
アラスは手綱を引いて馬を店に返しに行く。
「あーこの服結構気に入ってたんだけどなぁ。」
そんなことを考えながら棍棒を持ち血塗れの服で城壁の側に立っていた。
もちろんそんな姿を見た人はギョッとしている人も居た。
少しの間待っているとアイリスとアームがやってきた。
「これはひどい。」
「とりあえず服買ってきたからどこかの井戸で血と匂いを洗い流そう。」
鈴達は井戸のある場所に移動し、井戸から水を桶で掬い、頭から水をかぶる。
「つめたい!」
「はいはい。どんどん掛けるよ。」
「ちょ、アイリスつめたっ、そこくすぐったい!」
「早めに終わらせろよー。」
アームは後ろを向き人が来ないか見張っている。
「これで良さそうね。ほらタオルもあるから体拭きなさい。」
「ありがとー。」
「これ下着。でこっちは服ね。」
「うん。」
っとそこに声が響いた。
「ちょ、おま!おす―ギャー!」
アラスが井戸のある広場に倒れこんできたのだ。
「え?」
「<水よ。敵を撃て。ウォーターボール>」
「え?ちょ!魔法は―うげえ!」
「なんでもないわ。ささ、着替えましょう。」
「え?あ、うん。」
新しい服に着替え終わると魔法で吹き飛んで倒れているアラスとアームの居るところに行った。
「アラスが覗きをしようとしてたから止めたんだが、言うことを聞かなくてな。少し手伝ってやったんだ。」
「アームもそうじゃなくて力づくでも止めなさい。」
「アラスさん宿に戻りますよー。」
「うっ…む、無念。」
「あ、そうだ。私ギルドによってから行きますね。」
「分かった。宿の場所はわかるか?」
「ええ。覚えましたから大丈夫です。」
「それでは俺たちは先に戻ってるぞ。」
そう言うとアーム達と鈴はわかれた。
鈴は達成報告に行くためにギルドへ向った。
町並みも夜になり昼間とは違うようだ。
ギルドに到着すると受付の職員はさすがに変わっていた。
「すみません。Cランクの昇格試験の証明部位もってきました。」
「はい。こちらにお渡しください。」
「どうぞ。」
鈴は血の付いた棍棒を手渡した。
「たしかにこれはオークの物ですね。」
「(よく分かるよな―。これなら作って偽装出来そうだけど。)」
「ギルドカードをお渡しください。」
「はいどうぞ。」
職員は鈴のギルドカードの更新手続きをすると鈴にギルドカードを手渡した。
「今日でFからCまであげるとはさすが期待の新人さんですね。」
「え?それどういう意味ですか?」
「ギルドにはネットワークがあってね、それぞれのギルドで情報共有をしてるのです。そこに貴方の名前と情報があったのです。」
「いや~。期待なんてしないでください。普通ですからね?」
「ふふ。普通の方が一日でCまで上がるとお思いですか?」
「…。」
「お疲れ様でした。改めてCランクおめでとうございます。」
「ありがとうございます。」
そう言うと鈴はギルドから出て行った。
それの後に続く者達もいた。
ギルドからでた鈴は宿に戻ろうと宿の方へ歩き出そうとするが後ろから肩を掴まれた。
「よう、嬢ちゃんちょっと話が有るんだがいいか?」
「なんですか?」
「ここじゃなんだから裏いこうや。」
「…。」
鈴は三人の男に路地裏に連れ込まれた。
男たちは鈴を囲うと話を始める。
「見てたぜ~?お前さんFからCに一日で上げたんだって?」
「それがどうかしましたか?」
「なぁ?証明部位の偽装どうやったんだ?教えてくれよ。」
「偽装なんてしてません。」
「なぁ?いいだろ?誰にもいわねーからよ。」
「だから違います。」
「おい嬢ちゃん。いい加減に吐いたほうがいいぜ。じゃないと殺すぞ。」
「いいですよ。殺してみてくださいよ。」
鈴は後ろに回した両手にベレッタM92Fを出現させた。
弾丸はもちろんゴム弾を使用する。
「この女がなめやがって!」
男が剣を振り上げる。
それと同時に鈴は男の脇に飛ぶように移動すると両手に持っているベレッタを発砲した。
ゴム弾は飛翔と同時に十字に開き男の手に命中する。
二発のゴム弾が近距離であたったことによる痛みで剣を落としてしまう。
それを見ていた二人も剣を抜くが、一人の男を踏み台に鈴が空中へ跳躍する。
アシストにより一瞬で狙いを定めた鈴は引き金を連続して引く。
発砲音が響き多数のゴム弾が男たちの頭に降り注ぐ。
「いてて!」
「ふざけやがって!」
鈴は空中で弾切れを起こしたバレッタを手放すとM84閃光手榴弾のピンを抜きその場に落とし、地面に着地した。そしてその場から離れた。鈴が表通りに出ると同時にパンっと言う破裂音が響き、薄暗くなっていた街の一角を一瞬明るく照らした。
それにより鈴に視線が集まるがそれを無視して宿に戻るのであった。
「ただいまー。」
「おそかったわね。」
「いやーちょっと暴漢三人組に襲われたから気絶させてきただけだよ。」
「それをさらっというのはどうかと思うわ。イルミス達の部屋に行きましょう。」
「はーい。」
そう言うと部屋を出てイルミス達の部屋へと向った。
部屋にはいると今日の成果報告が始まった。
「皆どうだった?俺はBまで上がったぞ。」
「俺もBだな。」
「Cまでしか上がらなかったな~」
「私もC。」
「Cです。」
「皆上がったな。特に鈴はものすごい勢いだ。で、鈴は何が有ったんだ?何か騒がしかったようだが。」
「ちょっとCランクへの昇格試験で色々有ったもので…。」
「何かトラブルでも有ったのか?」
「アベル領のアルルト村付近でオーク討伐だったのですが、その村で聞き込みをしていたら女性が一人行方不明になってると聞いたんです。」
「それで?」
「私はオークを追って森に入りオークを見つけました。その時オーク達は…何をしていたと思いますか?」
「さ~。飯でもくってたのか?」
「…ええ。全然違います。」
「じゃ、何してたんだ?もしかして行方不明の女性とオークがにゃんにゃんしてたのか?なーんて―」
「その通りです。」
「は?」
「結果から言うと彼女は死んでいました。恐らくオークの握力による圧死。彼女は死んでもオーク達に死姦されていました。」
「オークには人間の女性を攫って欲を満たす性質がある。おそらくその女性はその対象にされたんだと思うわ。」
「だから殺した。惨たらしく、肉塊にしてやった。そのせいで肩が痛い。で、汚れた彼女を背負って村の夫妻に引き渡したの。だからあの匂いと血で汚れてたの。」
「…なるほど。そんなことが有ったのか。」
「その後アラスが着替えを覗いた。」
「ちょ!アイリスちゃんそれは言わないでくれよ~。」
「…まぁ、アラスの事はおいおい…鈴は大変だったようだな。しかし、オークか。何体居たんだ?」
イルミスはアラスの件で頭を抱えたが、直ぐに視線を鈴に戻した。
「六体居ましたよ。」
「六体ってパーティ組んで殺るレベルだぞ。オークは見たとおり体が大きい。そんなのに六体も囲まれたら死ねるぞ。」
「確かに体が大きくてアサルトライフルの効きが悪かったです。頭に当てても仰け反るぐらいで弾丸が通らなかったり。」
「オークの骨はあの体格を支えるだけあって魔物の中では堅いなんだ。」
「通りで…。」
「だが肉塊と言うんだからそれほど酷いくらいに殺したんだろ?」
「そうですね。これ使いました。」
そう言うと鈴はkord重機関銃を取り出した。
床に銃底を置いたためドンと言う音が部屋に響いた。
「これは…大きいな。」
このkord重機関銃は歩兵向けの6P50だ。
全長一メートル九十八センチ、重さは二十五キロである。
「これを使えば大抵の魔物は粉砕できます。」
と、言いつつkordを消す。
「また規格外な武器がでてくるわね。」
「規格内だよ~。元の世界でだけど。」
「もう鈴居ればAランク行けるんじゃね!ほら!ドラゴンとかドドドンってさ!」
アラスが茶化すようにそういう。
しかしアームとイルミスが難色を見せる。
「ドラゴンは物理、魔法に対して高い耐性を持っている。それに体格もオークの比じゃない。オークの十倍は有るだろう。」
「それにドラゴンを覆う鱗は鎧みたいなものだ。それは大型クロスボウでも貫通どころかヒビ一つつけることは出来ない。」
「なにそれこわい。」
「ドラゴンによっては高い治癒能力を持っているもいる。ドラゴン討伐は果てしなく遠い。BからAには通称、人間の壁っと言うものが有る。この間失踪…恐らく入れ替えられた魔法使いは…そうだな。アイリスならよく知っているんじゃないか?」
「ええ。知ってるわよ。あの人はもはや一国の一個中隊とも互角に戦える魔法使いなの。魔法の真理を極めた天才で蒼白の炎って呼ばれてる。これは使う魔法が蒼白の炎魔法だからそうついたの。その魔法はあらゆる物を焼き払う。」
「…ん?」
「どうしたの?」
「いやちょっと気になったところがあってね。」
「そう?」
「っと言うことだ。普通の魔法使いじゃ一個中隊なんて無理だ。魔力が切れるか、囲まれるかで終わりだ。それに彼の仲間も人外だな。身の丈ほど有る大剣を軽々振り回し、かなり素早いメンバーも居るとか聞いたこと有るな。」
「なるほど…人外パーティってことですね。」
「そうなるな。だから大抵の人間はBで止まって終わるんだ。」
「なる~。」
「とりあえず、俺達はこれでそれなりに有名になるはずだ。依頼も回ってきやすくなる。」
「そういうものなのですか?」
「そういうものだ。名がある冒険者には信頼が発生する。もちろんそれに対しての責任も発生するがな。とりあえず今日は解散だな。そろそろ夕食の時間だろう。」
「腹減ったー!うんじゃ、俺は食ってくるわー。」
そう言うとアラスは部屋から出て行った。
それに触発されたかのようにそれぞれが解散して行く。
鈴は先ほどの魔法使いの話で気になっていることが有った。
炎とは酸素の供給量により橙、青、白、青白と色が変化するのだ。
蒼白とは酸素供給量が最大の炎なのではないだろうかっと鈴は思ったのだ。
これは地球では小学校の理科の実験で習う基礎的な物なので鈴でも知っている。
そして色が青白に近づくに連れて温度は上がっていくのだ。
アイリスの説明と合うのだ。
「(これはもしかして?ちょっと魔法に関して聞いてみようかな。)」
そう思うと鈴も夕食を食べに食堂に向ったのだった。