ギルドランクあげちゃうぞー!
Cランク任務はちょっと注意
翌朝鈴は妙に張り切っていた。
「(ランクを上げて!お金貰って!名声も上がる!一石三鳥だ!)」
ベッドから起き上がり、窓を開ける。
外は雲ひとつ無い快晴だ。
「よーし!今日も元気にいってみよー!」
鈴が部屋で騒いでいるとアイリスの手が杖に伸びていき、杖を掴んだ。
「五月蝿い。」
アイリスはベッドに入ったまま鈴に杖を振り下ろした。
「あべし!…きゅぅ…。」
アイリスは杖を壁に立てかけると再び寝に入った。
鈴は後頭部を叩かれベッドに突っ伏すようにして気絶したのだった。
「…きな…。…鈴…な…さい。」
「ほぶぅ!?」
アイリスの杖がベッドに突っ伏している鈴の尻に勢い良くたたきつけられた。
「鈴、起きなさい。ギルド行くわよ。」
「お尻いた~い。…あれ?私起きてなかったっけ?」
そう言いつつアイリスの後ろをついていく。
部屋に鍵を掛け、宿を出て行く。
家々が立ち並び、店の店員が客集めをしている中歩いている。
道は石で舗装されており歩きやすい。さすが王都と言ったところか。
しばらく歩き、ギルドに到着すると中へ入っていく。
アイリスと鈴は受付にいる女性に声をかけた。
「すみません。昇格試験うけたいんですけど。」
「はい。ギルドカードを確認させてください。」
「えっと…あったあった。どうぞ。」
「FランクですのでEランクへの昇級試験ですね。」
「はい。」
「これが試験内容となっています。」
「どれどれ…ウェアウルフ討伐?」
「はい。何処にでも居るオーソドックスな魔物になります。王都からでた草原にも居ると思われます。」
「わかりました。すぐに戻ってきます。」
「お気をつけて。」
そう言うと鈴はギルドから飛び出していった。
街の中を走り、王都を囲う城壁からでると草原まで走り続けた。
「ウェアウルフぅぅぅぅぅ!どこだあぁぁぁぁぁぁ!」
一人騒がしく草原を駆けて行く。
もちろんそんなに物音を立てている鈴に魔物が気が付かないはずもなく関係ない魔物までもが鈴に寄ってくる。
「お前違う!ベレッタ!」
迫り来る魔物に9mmの弾丸が撃ち込まれた。
撃ち込まれた魔物はその場に倒れ伏せ当たりに血の匂いが広がる。
「そうだ!いいこと考えた。」
鈴は近くの草むらに伏せると死んだ魔物を見るようにしていた。
血の匂いでウェアウルフをおびき寄せようという作戦だ。
待つこと数分向かいの茂みから何かが出てきた。
それは狼のような体格をしており、青と白の毛並みだ。
鈴は羊皮紙を広げると特徴を確認した。
そこには青と白の毛並みをした狼型の魔物と書かれていた。
「こいつだ…」
鈴の目は完全に狩り人の目だ。
ウェアウルフは魔物の死体を食べ始める。
それと同時に鈴が茂みから飛び出した。
ウェアウルフは何事かとこちらを見るが、時既に遅し。
鈴の強化された蹴りがウェアウルフの脇腹に当たる。
「シュート!」
ウェアウルフは鈴の蹴りで体が空に浮かび数秒後に地面にたたきつけられた。
「からの~九ミリ弾デース!」
乾いた音が鳴り響きウェアウルフは絶命した。
鈴はベレッタを消すと銃剣を取り付けられる銃を出現させた。
銃剣のアタッチメントを装着するとウェアウルフの毛を一部切り取った。
これで討伐の証を手に入れる事が出来た。
鈴は直ぐ様体を反転させると銃を消しながら王都のギルドに向って走りだした。
「すみません!戻ってきました!」
「早いですね。どうかしましたか?」
「これで良いんですよね?」
「え?た、確かに討伐の証を受け取りました。ギルドカードをお渡しください。」
「はい!」
職員はなにかの水晶球から伸びている板にギルドカードを乗せると何やら操作している。
一瞬カードが光ったかと思えば職員はカードを手に持ちこちらに戻ってきた。
「更新が完了しました。Eランク昇格おめでとうございます。」
「Dランク昇格試験お願いします!」
「え?腕鳴らしをしなくても大丈夫ですか?」
これはギルド職員としての警告だった。
Eランクから討伐系の以来が増えるためそれを心配している。
だが鈴の目は既に昇格試験で埋まっている。
「で、ではこちらがDランクへの昇格試験です。パーティで受けることを推奨します。」
渡された羊皮紙にはゴブリンの巣の壊滅と書かれていた。
場所は王都からそんなに離れていない。
鈴が全力で走れば三十分ほどでつくだろう。
「大丈夫!余裕です!では行ってきます!」
そう言うとまたしても鈴はギルドを飛び出していった。
「大丈夫かしらあの子…。」
そう言うと職員は自分の仕事に戻っていった。
「さ、さすがに疲れた…。」
王都からでて十五分。全力で走っていた鈴はさすがに息切れを起こしていた。
そこからは歩きでゴブリンの巣へ向っていた。羊皮紙には適当なマップが書かれており、当たりを見渡しつつ移動している。
「ん~。読めるには読めるけど、英語と同じく日常語以外はさっぱり読めない…これなんて書いてあるんだろう。」
鈴は羊皮紙に書いてあることを完全には理解出来ていないのだ。
しかし、ある程度わかれば脳内補完で対応できる。
「えーっと証明部位はボスゴブリンの牙?なのかな。叩き折ればいいかな。折れなかったら銃撃しよう。」
羊皮紙と当たりを見渡しつつ移動していく。
二十分ほど歩くと羊皮紙に書かれている場所と似ているような場所にでた。
鈴は念のためMP5SD3を出現させ茂みの中の探索を開始した。
いつでも撃てるように引き金には指を掛けている状態だ。
しばらく探索していると誰かが踏んだように草が倒れているのが目についた。
「これは…。」
鈴はその後を辿って行くと一つの洞窟があった。洞窟の外には動物の骨と思われる物が散乱していた。
「あたりってやつだね…。」
鈴は骨を踏まないように歩きで移動を始めた。
アシストのお陰で足音が立たないのがメリットだ。
洞窟を進みおくまで行くと多数のゴブリン達が肉を頬張っている光景が見えてきた。鈴は見つからないように身を屈めつつ洞窟に開いている隙間に体を滑りこました。
「突入は閃光手榴弾が定番だね…M84スタングレネード。」
安全ピンを外すとレバーを倒し、宴を行っている中に投げ込んだ。
それは煙を出しつつボスゴブリンの手前まで飛んでいった。
案の定ゴブリン達はいきなり飛んできた手榴弾に釘付けになり、ボスゴブリンがそれを拾い上げた。
ゴブリン達が不思議がっていると一瞬のうちに爆音と光が広場を包んだ。
洞窟内であるため反響し、音が大きく感じられた。
閃光手榴弾を手で持っていたボスゴブリンの指は破裂と同時に吹き飛び痛みでのたうちまわっていた。他のゴブリン達は一時的に視覚、聴覚を奪われ目を抑えつつ歩きまわっている。
そこに鈴が突入し、MP5SD3を三点バーストで撃ちぬいていく。
予想以上に数が多かったため一度リロードし、再びゴブリン達を撃ちぬいていく。
最後にボスゴブリンの頭を撃ちぬくと鈴の先頭は終了した。
「さーて。証明部位の回収っと。」
鈴がボスゴブリンに近づくと片方の牙だけ異常に長い事がわかった。
その他のゴブリンにはない特徴だ。
「何か鈍器になるものは…。剣、剣、剣、剣、石斧。石斧で砕けるかな…?」
鈴は試しにボスゴブリンの歯茎目掛けて斧を振り下ろした。
それと同時に何かが砕ける音がした。
それは骨の音だ。
長い牙がポトリと折れて地面に落ちる。
鈴はそれを回収すると道具入れに詰め込んだ。
「買っておいてよかった道具入れ~♫」
鈴は満面の笑みでゴブリンの巣を後にした。
洞窟には硝煙の匂いと穴が開いたゴブリンの死体だけが残っていた。
「疲れた…。さっきも同じことを言ったような…。」
ゴブリンの巣から街道に出て全力疾走した結果がこれである。
息切れを起こし街道をあるいている。
「今日中にはCにしたいなぁ…。」
そんなことを呟きながら歩いていく鈴。
息を整えると再び走りだす。
ルーツ国の城門にいる兵士は今日四度目の走り抜けていく鈴の姿を見ていた。
「子供は元気だなぁ…。」
「おい仕事しろよ。」
ギルドに戻ると先ほどと同じ職員が受付に立っていた。
「終わりました!」
「え?で、では、証明部位をお願いします。」
「これですよね?」
鈴は長い牙を取り出すとそれを職員に手渡した。
それを受け取るとまじまじとそれを見つめる。
「…討伐達成です。確かに討伐の証を受け取りました。ギルドカードをお渡しください。」
職員は満面の笑みを浮かべている鈴からカードを受け取ると更新処理を行った。
「Dランクおめでとうござ―」
「Cランクの昇格試験お願いします!」
「…はい?」
職員が言い終わるより前に鈴が昇格試験を行いたいと言い出したことに職員は呆気にとられていた。
「次は何ですか!」
「えーっと。これです。」
「オークの群れの討伐?場所は…って遠っ!」
それは四時間ほど掛かる距離だった。
ルーツ王都からルーツ国アベル領までの任務である。
「くっ…今の時間はお昼…いや、馬を使えば二時間で行けそう?よーし!お昼食べて行くぞー!」
鈴は羊皮紙を畳むとすぐにギルドから飛び出していった。
「あの子は一体何なんでしょうか…。」
職員は気になりギルドネットワークで確認をするのであった。
「この御飯美味しい。」
鈴は昼食を近場の食堂で取るとすぐに馬を探しに行く。
感を頼りに防壁手前まで来ると当たりを見渡した。
「うーん。どこかに馬貸してくれる店無いかな?」
少しさまよい歩くと、馬を止めている店を見つける事ができた。
鈴は直ぐ様店に向って走って行く。
店に入るとスズの音が鳴り響き、中から店主が出てきた。
「いらっしゃい。」
「馬一頭貸してください!」
「いいですよ。一日貸出五銀貨だよ。前金十銀貨ね。」
「前金ってなんですか?」
「ああ。たまに馬をそのまま盗んでいく奴が居るんだ。だからお金をとっているんだよ。」
「そんなこともあるんですか。じゃ、前金十銀貨お渡ししますね。」
「たしかに。では裏へどうぞ。」
そう言うと店主は鈴を裏へ通した。
そこには馬が三頭縄で繋がれていた。
「(今思った。私乗馬したこと無い。)」
鈴は馬を見ていた。
「おや、まさか乗馬の経験がないとか?」
「…はい。」
「ははは!まさか馬を借りに来たお嬢ちゃんが乗馬の経験がないとは。これは驚いた。」
店主は馬に鞍をつけながらそう話した。
「うぅ…。」
「しょうが無い。教えてあげよう。」
そう言うと店主は最初からある程度馬を扱えるように鈴に手取り足取り教えるのであった。
馬の扱い方を付け焼き刃だが覚えた鈴は馬に乗り王都から飛び出した。
「えっとアベル領はこっちで…」
商人に聞いたルートでアベル領目指して馬で走る。
馬でなら門が閉まる前までには戻ってこられると鈴は考えていた。
オークがどんな魔物だかわからないが、とりあえず見敵必殺と考えている。
馬を走らす事二時間。
目的のアベル領に到着した。
近くの村に入り、オークの目撃証言が無いか村人に聞きまわる鈴。
するとアルルト村と言う村で目撃証言が有ることを突き止めたのだ。
休ませていた馬にまたがるとアルルト村へのルートを聞くと馬を走りださせた。
アルルト村は今いる村から馬で二十分ほどの場所らしい。
街道にそって馬を走らせること二十分。
アルルト村に到着した鈴はオークの情報を聞き込みしていた。
なんでも、村の作物が荒らされたり家が壊されるなどの被害が出ているようだった。
中に行方不明になった女性もいるようだ。
オークはこの村の裏手に有る森の中に住んでいると言う情報を手に入れた。
鈴は馬を話してくれた人に一時的に預かってもらうと森に向って走りだす。
意外と時間が掛かってしまいのんびり歩いているのが惜しいのだ。
森へ入ると走るのを辞め、歩きに変更した。
さすがに草木があるためかアシストが働いている状態でも音が立ってしまう。
鈴はCへのランクアップの昇格試験だけあって装備はアサルトライフルであるM4カービンを出現させていた。
M4にはM203グレネードランチャーも保険として装備する。
森のなかをしばらく歩くと何か変な匂いが漂ってくる。
「何この匂い…臭い…。」
慎重にその匂いの方に進んでいくと何やら緑色の二~三メートルありそうな魔物が六体ほど何かに群がっていた。
鈴は用心深くそれを見ると人間の女性のようだった。
しかし、腕はあらぬ方向に折れ曲がり、目には既に光がなく体にはあちらこちらに痣が出来ている。
そして何よりも彼女達の下には白い液体が大量に垂れており、鈴は理解してしまった。
「彼奴等狂ってやがる…!」
これには鈴も頭に来たようだ。
鈴は直ぐ様行動に移った。
茂みから盛っているオーク目掛けてグレネードを発射。
豚のよう丸い上半身をその爆発で吹き飛ばす。
続けざまに茂みから鈴は飛び出し、残りのオークに5.56mm弾を浴びせる。
さすがに体格がでかく、厚い肉に阻まれ銃弾の効果が薄いが、鈴はそれに気がつくと直ぐに狙いを頭に変更した。
放たれる銃弾がオークの頭に食い込む。
しかし人間と骨密度や大きさが違うのか頭にあたったのだがなかなか倒れない。
棍棒を振り上げるオークの攻撃をバックステップで回避する。
「絶対許さいないんだからね!」
鈴は少し無理をすることにする。
鈴の手元には身長ほどある重機関銃が出現し、鈴は力を最大限まで込めると引き金を引いた。
今までの銃声の比ではない銃声を轟かせ、放たれた銃弾はオークの肉を抉り飛ばす。
頭にあたった銃弾は衝撃波により頭を吹き飛ばし貫通する。
鈴が今使っている銃はkord重機関銃、口径は12.7x108mmの銃弾を使う銃だ。
地球の軽装甲車両なら易易と貫通できる程の威力を持っている銃だ。
鈴に掛かっている身体強化の加護を持ってしても銃身がぶれ、思うように扱うことが出来ない。
だが、敵を倒すには十分だった。
放たれた銃弾は敵を次々にミンチにしていく。
仲間を五人も殺られたオークは逃げ出そうとするが、銃弾に足を吹き飛ばされ地に這いつくばった。
更に腕を吹き飛ばすとオークの口の中に銃口を突き入れた。
「逆に突っ込まれるのはどう!じゃ!死ね!」
鈴は引き金を引いた。
それは銃弾を撃ち尽くすまで続く。
銃弾を撃ち尽くした頃には既に頭は無く、地面には穴が空いていた。
銃弾がなくなった銃を消すと鈴は討伐の証明部位である棍棒を拾った。
それはオークの血が付着し、血の匂いが漂っている。
鈴は既に事切れている女性を抱えると森から出て行った。
残ったのは体を抉られ、吹き飛ばされている惨殺されたオークの死体のみだった。
何をされていたか気がついてしまった人は1D6のSAN値チェックです。




