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異世界式アサルトライフルの作り方…でもやっぱり難しい。


「あのぅ…なんでしょうか。」


鈴は一人王座の間に残されていた。

頭のなかでは王様、側近、近衛騎士イコール偉い人っと結び付けられ、以前一度アルバイトの面接の時に店長(偉い人)と話したときの緊張感が思い出されていた。


「あの時の約束を覚えているか?」

「あの時…ですか?」

「そうだ。火縄銃の約束だ。」

「ああ!あの事ですね、是非提供させて頂きます。」

「娘よ。あの事とはなんだ?」

「ああ、お父様には話していなかったな。鈴から銃の技術提供を受ける予定になっているのだ。」

「ほう。」


鈴はフリントロック式の短銃を出現させた。

それは鈴の世界の古い時代に居た海賊が持っていそうな短めの銃だ


「近衛騎士にもたせようとおもってな。」

「どれ…威力を見せてもらおうか。宰相よ、移動するぞ。」

「ハッ。仰せのままに。」


国王とアゼリアが席を立つと同時に近衛騎士も動き出した。


「鈴様こちらへ。」


宰相が鈴に声を掛ける。


「はい。」


一同は城の中庭に集まると兵士の一人が一般兵士の着る鎧を持ち出してきた。


「鈴、撃ってみろ。」

「はい。」


鈴は鎧に狙いを定めると撃鉄を起こし、引き金を引いた。

撃鉄はもとの位置に戻ろうと勢い良く前に倒れ、撃鉄に付けられているフリント(ひうちいし)とフリズンが擦れ火花が発生する。

フリズンは撃鉄により手前に倒れるがバネにより定位置へ戻ろうとする。

それにより発生した火花は火皿の中へ封じ込められ、火薬に点火する。

そして硝煙と発砲音と共に弾丸が発射された。


弾丸は空気抵抗を受けつつ若干狙った位置をずれたが鎧を貫通し、丸い穴を開けた。

弾丸は鎧を支えている木製の鎧立てに食い込み弾丸は止まった。


それを見ていた兵士や国王、宰相、貴族たちのどよめきが広がった。


「鈴、お見事だ。どれ私も撃ってみようじゃないか。」

「え?はい。」


鈴は銃口から弾薬と弾丸を詰め込み、撃鉄を軽く起こしフリズンを開け火皿に出現させた火薬を入れ、フリズンを閉じる。

そして撃鉄を更に起こすとアゼリアに銃を手渡した。


「どれどれ…。あの黒いのと同じように使えばいいのか?」

「はい。しっかり鎧に狙いを定めて、足を開いて…そうです。しっかり握ったら引き金を引いてください。」

「こうか!」


アゼリアは引き金を引くと硝煙が上がり弾丸が発射された。

弾丸は鎧の肩部分に当たると鎧を貫通し、腕を通り凹んだ銃弾が落ちてきた。


「おぉ…やはり強いな。しかし、次撃つまで時間がかかるな。」

「もう少し時代を進めると雷管方式で直ぐに撃てるようになりますけど、いきなりそこまでの製造技術は無いだろうし、私知らないしですし…。」

「ふむ…む?…ふむ…。ちょっとそこの魔法使い。」

「はい。」

「ではな…。」

「…可能です。」


アゼリアは鈴を他所に一人で何かを考え付き、魔法使いと何かと話している。


「(何をはなしているんだろう。)」


鈴が二人を見ているとアゼリアが話を終えたのか話しかけてきた。


「鈴、考えが纏まった。少し場所を移すぞ。」

「あ、はい。」


その様子を見ていた国王は兵に穴の空いた鎧を片付けるように指示を飛ばしていた。


「パーラ隊長は私と一緒に武器工房まで来るように。」

「ハッ!」


鈴が声をした方を見ると他の魔法使いとは違う服装の女性がこちらに歩き出していた。


「パーラ隊長、先ほど部下から聞いたのだが魔石で一種類の魔法を扱うことは可能か?」

「可能です。ただ、魔石の周りに術式を書くため少し大きくなります。」

「確認は良しとしよう。その魔法を常に固定の場所に放つことは可能か?」

「それも可能です。場所を指定するために術式がまた大きくなりますが大丈夫でしょうか?」

「問題ない。」

「あのぅ、先程から何のお話を?」

「ああ、火薬の代わりに魔法で代用しようかと思ってな。その話だ。」

「魔法を…?」

「ああ。あの街で使った長いの出してくれ。」

「これですか?」


鈴はM24A3を出現させた。

隣ではパーラが驚いているがそれを無視してアゼリアは話を進めていく。


「違う、それじゃない。もう少し小さいのだ。」

「これですか?」


次にM4カービンを出現させる。

パーラは相変わらず驚いているが話は進んでいく。


「そうそう、それだ。それを参考に作らせようとおもってな。」

「いきなりハードル上げましたね。」

「うむ。小さいサイズだと不格好になってしまうおそれがあるから大きいほうがいいかと思ってな。パーラ、このサイズなら仕込めるか?」

「恐らく問題ないでしょう。」

「それならよい。このレバーみたいなものを引くと銃弾が発射されるようだからここを引いたら魔法が発動するようにしてほしい。」

「そう…ですね。術式を分割して引いた時だけ合致するようにすれば可能ですね。後は魔石の魔力が魔法を発現させるので問題ないでしょう。」

「そうか!鈴、銃の機構について教えてくれ!」

「いいですよ。(なんとなく想像出来たけど、マスケット銃とパーカッション式が合体したようなものになりそうな。)」


鈴に銃の機構について詳しく聞きながら歩いていると少し大きな扉の前で足が止まった。


「ここだ。失礼するぞー。」

「ん?パーラお前がここに来るのは珍し…ルーツ姫!このような場所に来られるとは!」

「あー。よいよい。いつもどおりでいい。今日は新しい武器の提案に来たのだ。」

「新しい武器?そいつはどんな武器で?」

「魔法と技術の融合品になる予定だ。形状はこんな感じに仕上げてくれ。」


そう言うと鈴のM4を指さした。


「ちょっと貸してもらってもいいか?」

「どうぞ。」


鈴はマガジンと装填されている弾丸を抜くとM4を手渡した。


「?軽いな。コレが本当に武器になるんです?見たところ飛び道具みたいですが。」

「エルガー殿、その武器の強さはルーツ姫様直々のものだ。」

「そうか。すみませんルーツ姫。」

「良い。で、できるか?」

「…ちょっとここまでの造形は出来ませんがそれなりのものにはなりそうです。」

「そうか!でな、機構と構造何だが…」


そういうと四人は集まって一つの大きな羊皮紙を広げたテーブルへ向った。

エルガーが鈴、パーラ、アゼリアの言葉を羊皮紙に書き込み、M4の内部構造や形状を真似て設計図を書いていく。


「久しぶりに新しい物を作る創作感がわいてきましたよ。」

「そうか!よろしく頼むぞ!」

「任せてください!おい!野郎ども!新しい仕事だ!」


そう言うとエルガーは工房の奥へ設計図を持って入っていってしまった。


「よし。後はパーラ頼んだぞ!」

「了解です。これから作業に取り掛かりたいと思います。」




「鈴は皆の所に戻るが良い。」

「わかりまし…道がわかりません。」


鈴は城の内部がわからず部屋への道がわからない。


「しょうが無い。私自ら案内してやる。」

「ありがとうございます。」

「いいのだ。鈴ももう敬語はいらないぞ。既に二人共居ないからな。」

「あ、はい。」

「ほら行くぞ。」


アゼリアは工房から出ようとしいたため鈴もすかさず工房から出て行く。


「アゼリア?作る銃すっごく重くなりそうだけど、大丈夫なの?」

「兵士だから大丈夫だ。」

「(その理屈は…。)」

「む…。こっちだったか。いや、あっちだったか?」

「(あれ…?)」

「むむ?客間はどっちだっけ?」

「(やっぱりだー!)アゼリア?もしかして―」

「いうな!決して迷ってなどいない!」

「(そこまで言ってないんだけどなぁ…。)…。」


その後アゼリアはメイドに客間の場所を聞き出すと、イルミス達がいる客間へ戻っていったのだった。

アゼリアは途中から無言であったとさ。


「アゼリアありがと。」

「う、うむ。」


そう言うと鈴は部屋の中へ入っていった。


「さて、お父様の所にもど…ここ何処だっけ?あ、そこのメイド!」


意外な所でアゼリアの方向音痴が発覚したのだった。





「さて、鈴が戻ってきたところで話を始めよう。」

「おーけー。リーダーなんだ?ナンパか?それともガッ!」

「おとなしく話を聞く!」

「アイリス酷いぜ…」


アラスは頭を擦りながら苦笑いしている。


「で、だ。鈴の事なんだが、鈴お前から話せ。」

「何かあったのか?」

「あー。記憶喪失のことなんですけど…嘘でした!ゆるしてね!てへぺろ!」


最後の一言で部屋の空気が凍ったような気がした。


「あ、ご、ごめんなさい。嘘を付いていたのは謝ります。でもあの状況ではそうするしか無かったんです。」


「…。」

「あのぅ…。」

「まあいいんじゃないか?」

「そうだな。まあ!俺はパーティに色気が増えただけでもいいけどな!」

「っ!そ、そうね!男だけで蒸さいパーティだったからね。」


アイリスは杖をアラスに振り下ろしたが、それを掴まれてしまっている。

アラスはニヤニヤし、アイリスは悔しそうな表情を浮かべていた。

「で、鈴はどこの人間なんだ?」

「異世界地球の日本って場所から転移してきたんだ。」

「アイリス、異世界ってなんだ?」

「世界は一つじゃなく、数多の世界がこの世界と隣り合わせになってる。その世界のことを異世界っていうの。」

「へぇ。鈴ちゃんそこんところ詳しく。」

「それはカクカクシカジカで…」


鈴は身に起こったこと、能力のことを皆に話していく。

皆何も言わずに鈴の話を聞いている。



…少女説明中…。



鈴は一通りの話しを終えた。


「って事はあんな森に居たのは神のせいだったのか。」

「そういうことだ。このことはパーティ内だけの秘密とする。誰にもバラすなよ?」

「へーい、了解。」

「わかりました。」

「了解。」


イルミスが全員に確認を取ると次の話を始める。


「っと次の話なんだが、ルーツ国王の頼みのことだ。」

「別にいいけどよう、俺達が居ても当事者じゃないから何もわからないぜ?」

「そうだね。私達居ても何の役に立たないわよ?」

「もしかして、俺達が居たほうが都合が良かったりするのか?」

「ああ、そうだ。ルーツ国王は言っていなかったが補佐の役目もある。闇ギルドの暗殺者を送り込んでくる奴がただで捕まるわけが無いだろう?」

「たしかに…ありえそうだな…。」

「そこで俺たちの出番というわけだ。暴れれば取り押さえ、闇ギルドの連中がくれば返り討ちにする、そういうことだ。」

「了解した。」

「リーダー、私乱戦とかの近接戦無理なんだけど…。」


アイリスは魔法使いだ、

近接戦闘には向かず、さらには乱戦になるであろう場所に居るのは危険なのだ。

イルミスは少し考えた後、指示を出した。


「アイリスは鈴と一緒に居てくれ。鈴、お前は少し離れた場所でこちらの様子を伺っててくれないか?恐らく追い詰められた教皇の本性が出るのは拘束するときだろう。それと同時に闇ギルドの連中が現れると思う。そうなったら二人で後方支援をたのむ。」

「わかった。」

「わかりました。」


話が終わるとタイミングを読んだかのように客室に一人の男性が入ってきた。


「失礼します。工房の者ですが、鈴さんいらっしゃいますか?」

「はい?」

「エルガーさんがもう一度見せてほしいそうです。」

「わかりました。じゃ、イルミスさんちょっと行ってきます。」

「わかった。いってこい。」


そう言うと呼びに来た男性と鈴は部屋を出て行った。


「作成の方は進んでいますか?」

「はい。エルガーさんも久しぶりに燃えていますよ。私は比較的最近入った者ですが、エルガーさんがあんなになっているのは初めて見ます。」

「職人魂に火をつけちゃったかな?」

「みたいですね。」


二人は話しながら工房へと向っていた。

工房に近づくにつれて金属音が聞こえてきた。


二人が中に入ると何やら金属を伸ばしているエルガーの姿があった。


「お、来たな。」

「来ました。」

「早速で悪いがさっきのちょいともう一回見せてくれないか?その、バネとか言うのがうまく作れなくてな。もう一度見てみようと思ったんだ。お前は作業に戻ってろ。」

「はい!」

「良いですよ。」


鈴はM4を出現させるとマガジンを外し、分解を始めた。

そしてマガジンからバネを取り外すとそれをエルガーに手渡した。


「どこから出てきてるのかは気になるが…この細いのが弾を送り出すのに必要な物なんだよな。」

「はい。バネの弾性を使って弾を押し上げるのに必要なんです。」

「しかし、まぁ…こんな細くするのは難しいな…なにか良い方法はないか…?」


エルガーはバネを見ながら考えを巡らせていた。


「細くなくてもいいのでは?」

「いや、作ってみたんだが反発が強すぎて使い物にならなくてな。」

「え!?もう作ったんですか?」

「ああ。試作品なら一個出来ているぞ。」


そう言うと一個のバネを鈴に投げ渡した。


「っとと。…ちょっと堅いですね。」

「意外と力有るじゃねえか!そうなんだよ、太すぎるせいでどうしようもないんだこりゃあ。」

「うーん…。」


鈴は工房の中を見渡した。

鉄を溶かすのに使われているだろう炉、鉄床、砥石、グラインダーと思われる足踏式の物。


「あー。鉄を細く作って削ってみてはどうですか?」

「たしかに細くできるが、時間がかかりすぎるだろ。」

「うーん。」


二人は工房のテーブルで唸りながら考え込んでいた。


「エルガーさんが悩むなんて珍しい。」

「明日槍でも降るんじゃないか?」


ハハハっと笑っていると、二人に拳骨が降り注いだのだった。

バネも針金も開発されていないので、マガジンに使われるバネに悪戦苦闘しています。

バネは引き伸ばして徐々に細くして行くのですが、そんなこと知るわけもないのであえて悩ませています。

全てがうまくいくとは限りません。

火薬は魔法で代用することにより解決しましたが…。

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