表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/217

反射的にこうするしか無かった。後悔はしていない。

鈴は三人が教会門前で何かを話しているのがスコープ越しに見えていた。

すると一人がスコープからフィードアウトすると三人は何かを話しているようだった。

十二倍でズームされたスコープで口元が動いているのがわかる。


「(何か話しているのかな…?)」


八倍にズームアウトすると再び辺りの警戒を始める。

今のところは異常は見受けられない。


次第に鈴の心拍数も上がっていく。

VRFPSで幾度と無く経験している事だが、今度は本物の人間の命が掛かっているのだ。


スコープを覗いているといかにも偉そうな格好をした人物が出てきた。

その人物とアゼリアが会話をしているようだ。

すると突然偉そうな人物がアゼリアを抱え込むように護衛の二人から遠ざけた。


「(ん?何をして…!!)」


その時である。

八倍にして覗いていたスコープに光が反射してきたのだ。

まだ夕日が光を反射できるほど強く残っていたため暗殺者の(やじり)が光に反射し、スコープに写り込んだのだ。


鈴は流れるように十二倍ズームインすると微かにだが腕が見えた。

息を吸い、息を止める。

呼吸によるブレを抑えるためだ。

そして暗殺者の腕と言う細い的にアシストと経験から狙いを定め、引き金を引いた。

パシュっという音と小さな金属音が木霊する。

7.62mmの弾丸は風に流されること無く螺旋を描き的(暗殺者)へと飛んでゆく。

弾丸は見事に的(暗殺者)の腕を貫き床板に穴を開ける。


腕が落ちる事は無かったが、銃弾により腕には穴が空き使い物にならないだろう。


「ぷはぁ!…よし!」


鈴はコッキングレバーで次弾を装填する。

空になった薬莢は排出され光の粒子となって消えていく。


再びスコープを覗くとイルミスがこちらを見ていた。

恐らく大丈夫なんだろう。

兵士が城の方向へ走っていくのがスコープの端に見える。

恐らく増援を呼ぶのだろう。

イルミスは偉そうな人を掴み教会の中に入れようとしているのを止めているようだ。


暗殺者は今頃逃げ出そうとしているだろうが、腕から流れる血で直ぐに足がつくだろう。

そう考えているのかイルミスは暗殺者に見向きもしない。


鈴は一応出口や窓を監視しているが目立った異常は見受けられない。


「(一安心なのかな…?)」


鈴は警戒を続けながらもアゼリアの安全に一息ついていた。

しばらくすると十人ほどの兵士がやってきた。

恐らく暗殺者の確保とアゼリアの保護に来たのだろう。


三人が宿へと入っていき八人がガッチリと周りを囲みアゼリアを城へと連れて行っている。

宿からはやはり逃げれなかったのか黒いフードを被った血塗れの人間が兵士と共に出てきたのだった。


「(ん~。あのままだと出血多量死だなぁ。)」


鈴はそう思いながらもスコープから目を離した。


「さーて。お城に戻るかな。」


鈴は階段を下り、塔から出て行った。


塔を見張っている兵士は何をしていたのかさっぱりわからなかったそうだ。


鈴はいち早く城に戻ろうと大通りを走っていると鎧を着た集団が見えた。

思いの外歩く速度が遅く、鈴が走っていたら追いついてしまったのだ。

これでも身体強化の加護が掛かっているのだ。

元の世界だったらオリンピックでも一位を取れるだろう。


「お、居た居た。イルミスさーん!」


鈴が叫ぶと他の兵士がイルミスを見た。

それは良い表情ではなかった。

場を弁えろと言わんばかりの表情だ。

イルミスは走って向かってくる鈴に顔を向けた。


「鈴、静かにしろ。」

「了解。」

「おお、鈴中に入れ。」

「あ、はい。」


兵士が一人分の隙間を開けると鈴がその間に入り込んだ。


「見事な腕前だ。あの距離から暗殺者を狙うなど。」

「いえいえ。滅相もない。」

「今度は何を使ったのだ?」

「狙撃銃と言う種類の銃を使いました。」

「ほう。見せてみろ。」

「これですね。」


そう言うとM24A3を手元に出現させた。

突然の光に兵士は驚いていたが、隊列は崩さず歩いている。


「大きいな。剣位の大きさはありそうな銃だ。」

「遠くの標的を狙撃するために開発された銃ですからバレルが長いのです。」

「バレルとはこの部分か?」


そう言うと銃のバレル部分を指さした。


「その通りです。よくわかりましたね。」

「長いと言ったらそこしか無くてな。」

「ですよね。そういえば暗殺者は兵士に捕まえられていましたよ。」

「よし。しかしまぁ、喋らないと思うが。」

「?」

「いいか?暗殺者はその職柄喋るくらいなら死ぬのだよ。」

「自殺ですか?」

「そうだ。」

「そうなんですか…。」


その時アゼリアの隣を守っていた兵士が悲鳴を上げ倒れこんだ。

それと同時に周りに居た国民達が悲鳴を上げて逃げていく。


「な、なんだ!?」


兵士の鎧には穴が開いておりそこから太い鉄の棒が出ていた。


「クロスボウか!」

「盾を構えろ!鎧を貫かれるぞ!」

「敵は何処だ!」

「屋根の上にいるぞ!」

「これでは動けないぞ!」

「大丈夫だ!こちらには射手がいる!」


イルミスがそう叫ぶ。

そしてアゼリアと鈴はしゃがみながら話していた。


「鈴。屋根の上に居る敵を倒してくれないか?」

「任せて。」



鈴は手元にMP5SD3を出現させると屋根の上を見始めた。

敵は次弾を装填しているのか姿が見当たらない。

兵士がやられた方向の屋根に狙いを定めていると後ろから声が上がった。


「屋根の上にいるぞ!」


鈴は直ぐに振り返るがドンっとクロスボウのボルトが盾にあたった音がした。

敵は油断しているらしく撃った後直ぐに姿を隠さなかったのが仇となった。


鈴は標的目掛けて引き金を引くと屋根の上に居る標的はクロスボウを持ったまま踊るようにして銃弾を体にうけ屋根から滑り落ちていった。


「一人殺ったぞ!」

「今のはなんだ?」

「もう一人居るぞ!今度は左だ!」

「グアッ!あ、足が!」


鈴は直ぐに振り返り引き金を引くが、相手は直ぐに身を隠し銃弾は屋根や空へ飛んでいった。


「あぁ!学習された!ならこうしてやる!」


MP5SD3を消すとM4カービンを出現させた。

サブマシンガンより貫通力が断然に違うアサルトライフルは家の屋根程度なら貫通するだろう。

鈴は弾痕を目安にM4の照準をを合わせ三点バーストで銃弾を撃ち込んだ。

弾丸は家の屋根を貫通し、裏に隠れている敵に命中させた。

さすがに木を貫通したことで威力が落ちてしまっている弾丸は相手の体に食い込んだ。

そして弾丸は光の粒子となって消えていく。


標的は悲鳴を上げながら屋根から滑り落ちていく。


「敵を見てくる。」


イルミスがそう言うと盾を構えながら家の裏に回りこんでいく。


「私も反対側見てきます。」


鈴はM4を消しベレッタM92Fを出現させるといつでも撃てるように体勢を取りながら家の裏へと回っていく。


鈴は家の角のクリアリングを済ませると滑り落ちた男に近寄る。

念のため銃を向けながら近寄り声をかける。


「生きてますかー。」

「ちく…しょう…!体中が…いて…ぇ」

「死にかけ…か。威力が落ちたとはいえアサルトライフルの銃弾を体に受けたんだもんな。」

「死ぬ前に一つだけ聞かせて。あなた達を雇ったのは教皇?」

「へ…誰が…教えるか!」


そう言うと男は舌を噛みきってしまった。

血が大量に吹き出し、男はこんどこそ絶命した。


「……本当に自殺するんだね…。」


鈴は辺りを確認し、男の服や袋を確認し始めた。


「袋の中身は何もなし…服は…大型のボルトが沢山…証拠は出てこないか。」


そう言うと鈴はアゼリアの元へ戻っていく。

戻るときも周囲の警戒は怠らない。

家の角をクリアリングし、大通りへ出て行く。

イルミスは既に終わっていたらしく既に戻っていた。


「どうだった?」

「自殺しました。」

「そうか。こっちは既に死んでいた。」

「そうですか。」


兵士達は怪我をした同僚のため近くに合った診療所から包帯を貰ってきていた。

鎧を脱がし、突き刺さったボルトを引き抜く。

引きぬく瞬間兵士は苦痛の表情と小さい悲鳴を漏らす。


「うがぁ!も、もう少し優しくやってくれ。」

「ゆっくり抜いて痛みを味わいたいならそうしてやる。」


怪我をした所に包帯を巻き、城へと移動する一行。鈴は常に銃を構え警戒をすることとなった。

イルミスは後ろ、鈴は前の通行人を警戒する。

通行人の中に暗殺者が紛れ込んでいる可能性もありえるのだ。


「なあ鈴。」

「何でしょうか?」

「まだ暗殺者来ると思うか?」

「どうでしょうね…イルミスさんはどう思いますか?」

「暗殺者が闇ギルドから派遣されている場合はまだ来るだろうな。」

「だそうです。って闇ギルドって何なんです?」

「む、そうか。闇ギルドと言うのは窃盗から暗殺まで影の仕事を行うギルドの事を言う。冒険者ギルドとは真反対のギルドだな。」

「そんなものが…。」

「闇ギルドは国として放って置けないギルドだ。発見次第潰しているが彼奴等の情報網も凄くてな、潰しに行った時にはもぬけの殻なんだ。」

「スパイでも城に入ってるんでは?」

「その線も有るのだが見つからないんだ。」


兵士達は二人の関係を不思議がっていた。


「ルーツ姫様。その、彼女とはどういった関係で?」

「なんだ?知らないのか。私の命の恩人の仲間だ。」

「そうだったのですか。失礼いたしました。」

「良い良い、先ほどの事だ。知らなくてもしょうが無い。」


城も近づき、日も落ち始めた時だった。

薄汚れた衣服を来ている男性が近づいてきた。

鈴は直ぐに銃を向け静止させた。


「止まって!」

「ちょっと待った!変なもの向けないでくれ。」


その人物を見た兵士の一人が声を掛けた。


「お前いつも広場で物乞いをしている浮浪者じゃないか。」

「おや?あんたは見回りをしている兵士さんじゃないか。いつも恵みをありがとう。」

「なんだ?お前金をあげていたのか?」

「はい。自分の給料から少し与えておりました…で、お前は何の用だ?今見ればわかるだろうがそんな時間はないんだ。」

「ちょっとだけ、いつももらってばかりだからお返しをしようと思ってな買ってきたものが有るんだ。」

「何?」

「これです。」


男がポケットに手を突っ込むと素早く何かを取り出した。

それはナイフだった。

男は素早くナイフを投擲する。

動きから男は恐らく新人ではないことは明白だ。

鈴は銃を握っていたためアシストによるスローモーションで見えていた。

飛来するナイフを撃ち落とすなど出来やしないため、身体強化された肉体を無意識に素早く動かしナイフとアゼリアの斜線上に割り込んだ。

ナイフは鈴の左肩に突き刺さると苦痛の悲鳴が漏れた。


「ああああ!――ッ!」

「鈴!貴様!取り押さえ―――!?」


その時銃声が鳴り響いた。

左肩にナイフが突き刺さった鈴の右手に握られているベレッタには硝煙が出ていた。

男の眉間には穴が開いており、そこから血やら色々な物をぶち撒けながら倒れた。

それと同時に鈴の手からベレッタが消え、倒れこんだ。

ギリギリ手を伸ばしたイルミスが鈴を支えるが、完全に気を失っており起きる気配は無かった。


「男は放っておいて直ぐに城に運ぶんだ!イルミス先にいけ!アイリスを直ぐ呼ぶのだ!王宮魔法使いを呼ぶより早い!」

「しかし、ルーツ姫様は―。」

「いいから行けと言っている!」

「…わかりました。お先に行かせてもらいます。」





少し前の城の応接間では…。


「あー!つまらねえ!メイドさんにナンパしようとしたら兵士に睨まれるし、リーダーも帰ってこないしよう。」

「お前は少し落ち着けないのか?」

「だってよ!ここのメイドかなりびじ―ヒギィ!」

「さっきからうるさ―。」

「あ。」


アイリスの杖の先が必死に説明しようとし、立ち上がったアラスの股間にクリティカルヒットしてしまった。

本来は腹を突くつもりだったのだが立ち上がったことにより狙いが外れてあらぬ所に当たってしまったのだった。


「ッ~!――!――――――!!!!!」


アラスは地面に這いつくばりながら股間を押さえ悶えている。

アイリスは杖の先端をアラスの服で拭いている。


「あー。アラス…まぁ…頑張れ。」

「汚い…。これで落ちたかな。」


「お”お”お”お”お”!!」


床を叩きながら悶えているアラス。


「何そんなに痛いの?」

「アイリスにはわからないだろうな。」

「アーム、そうなの?」

「あぁ…。」


その時部屋の外が騒がしくなってきたのだ。


「なんだ?何か合ったのか?」


何かが走っている足音が聞こえてくる。

それと同時に部屋にリーダーが鈴を抱えて駆け込んできた。

走ってきた後には血がポツポツと垂れている。

それは突き刺さったナイフと皮膚の隙間から溢れでた血だ。

血はイルミスの鎧を汚しながら床へと垂れる。


「アイリス!」

「了解。合図でナイフ抜いて。」

「分かった。」

「一…二…三!」


ナイフが引き抜かれると同時に血が溢れ出す。

それを癒しの魔法で癒していく。

ゆっくりだが刺傷がふさがり、出血の量も減っていく。


「後どのくらいだ?」

「後少し。」


魔法をかけ始めてから5分ほどで刺傷は後を残すこと無く綺麗に治ったのだ。


「これで大丈夫。」

「治り早くないか?」

「これは鈴の体質。恐らく自然治癒能力が高いんだと思うよ。」

「そうか。とりあえず血を落とさないとな。」

「鈴の方は私が血を落とす。」

「まかせた。俺は外で鎧を洗ってくる。」


そう言うとイルミスは外へ出て行ったのだった。


「さて私も…まずは血を洗い流して…服を洗って…大変ね。」


アイリスは魔法で身体強化を行うと自分が血で汚れないようにしながら持ち上げ、部屋を出て行った。


そして部屋に残されたのは未だに悶えているアラスとアームの二人だけとなった。



「まだ痛いのか?」

「―!いてぇ…!」

「そうか。不能にならなければいいな。」


その後十分ほど悶えていたという。



アラスはボケでアイリスはツッコミです。

そして今回は当たりどころが悪かったのです。


書いてて何か同情したくなりました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ