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神様企画

地球のとあるマンション。

そこにベッドに横たわりヘルメットをつけた女性が横になっていた。


ヘルメットにはVR-ECHOS01と書かれている。

このヘルメットは装着者にVR空間を提供する最新の機械なのだ。

装着者の脳波を観測し、体の各部に伝わる前に遮断する機能を持ち、ゲームデータを脳に直接フィードバックすることで自分があたかもゲーム内に居るかのように遊ぶことができるのだ。

更に健康面も重視しており、常に体の状態をモニタリングしている。

体に異常が出た場合はVR装置が強制停止し、警告アラームが鳴り響くようになっている。

ヘルメットは専用のケーブルでパソコンに繋がれていて比較的ベッドに近い位置にパソコンが置いてある。


このVR-ECHOS01は世間からの日当たりは良くなかった。

初めてのVRゲームができるとゲーマーの間で爆発的に広まり、ゲームと現実の区別をつけることができなくなる若者が大量に現れたのだ。

それはテレビ、新聞各紙でも取り上げられ開発会社は対策が急がれた。

VR接続時間は当初の六時間から三時間に引き下げられ、再接続には三十分の休憩が必要になったのだ。

この大幅な規制により世間からの日当たりは良くなったが、ゲーマーからは不満が漏れていた。

この女性その一人だ。





「ラエルからチームへ。B通路のスナイパーを排除した。」


そう言いつつB通路を進んでいく。

物陰に隠れながら戦績を確認するとこちらは残り三人、相手は一人となっていた。


「(後一人倒せば勝てる!)」


彼女は手に持ったアサルトライフル、AK-47を握り締めると物陰から飛び出した。

クリアリングを行うと更に先に進む。


「アリからチームへ。A-B通路に敵を発見。援護を求む。」

「ラエル了解。」

「ぱーる了解。」


それと同時に銃撃音が鳴り響いてきた。

互いに制圧射撃を行なっているのだろう。


ラエルがA-B通路に到着するとリロード中の敵チームの兵士が居た。


「ラエルからチームへ。B通路からA-B通路へ閃光手榴弾を投擲する。」

「アリ了解。」

「ぱーる了解。」


そこに閃光手榴弾を投げ込むと足元に落ちた物体にふっと目が行ってしまった。

転がった閃光手榴弾見て驚いた顔をしたが、その瞬間閃光手榴弾が炸裂し敵の視界、聴覚を奪い去った。

それを合図にラエルは通路へ飛び出した。


「もらった!」


ラエルがAK-47を構え、敵兵士に狙いを定めた。

そしてトリガーを――――引けなかった。


「あれ?」


【三時間が経過しました。接続を切断します。】


そのメッセージ音声と共に周りが暗闇に包まれ、見慣れた天井が目に入ってきた。


「…あ?ああああああああああ!あと少しだったのに!この糞システム!ああああああ!」


彼女はヘルメットを外すとベッドの上でジタバタと暴れていた。

すると壁を叩く音が聞こえてきた。

隣の部屋は妹の部屋なのだ。

いわゆる"壁ドン"っと言うやつだ。


「…。はぁ…どうせ残りの二人が倒してくれたからいいかぁ。まじショックなんですけど。後でVRMMOで癒されに行こ…。」


彼女こと倉木 鈴はVRFPSを主にプレイしているゲーマーで有るが、VRMMOもプレイしているのだ。

戦場で殺伐としているFPS、と違い、MMOはのんびりとした雰囲気のゲームである。

動植物から素材を集めそれを元に裁縫、料理、鍛冶など様々な活動ができる。


「あーっと、制限時間か。宿題でもやろっと。」


鈴は机に向かうと参考書とノート、プリントを取り出した。

参考書には"できる!高校の数学Ⅰ"とかかれている。

ノートや参考書を見ながらプリントにすらすらと書き込んでいく。

国語、数学Ⅰ、現代社会の宿題をささっと終わらせるとヘルメットを着け、ベッドに入り込んでいった。



VR-ECHOS01を起動するといつもどおりの画面が表示され、VRMMOを選択した。

が、いつになっても画面が白いまま進まないのである。

いつもならタイトルロゴが目の前に表示され、コンソールを使いログインするだけなのだ。

しかし、コンソールもタイトルロゴも何処にもなかった。


「ん?フリーズしたのかな?なら強制終了信号を…。」


強制終了信号とは、特定の脳波を観測させることでリンクを強制的に切断するシステムだ。


「あれ?終了しないな、始めて起動した時あんなに練習したのになぁ。もしかして鈍った?」


なんどか工夫して信号を送ってみるが一向に終了せず、白い空間のままだ。


「…どうしよう。これじゃ三時間もここで待機ってこと?うっそ…。」


鈴は戦場の盛り上がった所で落とされ、傷ついた心を癒そうと始めたと思ったら三時間もこの白い空間に閉じ込められると言う不遇さに嘆いていた。


「あー。適当に宿題を終わらせたのが原因なのかなー。罰があたったのかなー。あー。神様仏様ごめんなさい。これからは宿題をちゃんとやるのでここから早く出してください。」

「それは無理。」

「そんなこと言わずに早く出してください。お願いします。宿題しますから。」

「無理は無理。」

「そんなこと言わずに早く出してください。お願いします。宿題しますから。」

「しつこいぞ!」

「そんなこと言わずに早く出してください。お願いします。宿題しますから。」

「お前は村人Aか!」

「…?誰?」

「え?やっとなの?君馬鹿なの?」


鈴はこの空間に自分以外の人が居ることに気がついた。

通常この空間には人は自分しか存在しないはずだ。

それがこの機械の仕様。


「あ、あなた緊急時のAIね!なら早く出して!」

「AI?何を言っているんだ?私はAIでもなければ人でもない。神だ。」

「紙?」

「神だ、神様だ。」

「(あれ…?今思ったこと読まれた?)」

「それはそうだ。私は神だからな!」


神はどや顔をしている。

対照的に鈴は胡散臭そうな顔をしていた。


「どうせ私の脳波を観測して答えたんでしょ?早く出して!」

「む…。まだ信じないか。」

「当たり前でしょ?」

「ならこれでどうだ。」


自称神のAIが指を鳴らすと白い空間が切り替わった。

それは見慣れた空間だった。


「え…?私?」

「AIが、機械がここまでのことをできると思っているのか?」

「それは…出来ないけど。(実際にこの状態の私を見たこと無いから脳から投影出来ないし。これは…。)」

「そう。人間の想像力は驚愕に値するが、それは不鮮明でもある。一度も見たこと無い物をここまで鮮明に投影することなどできるはずがない。」

「…で?貴方の目的は何なの?」

「おや?切り替えが早いね。」

「いや、この状況でそれ言われても。」

「それはそうだ。で、目的なんだが隣の世界の神と神様企画って言うものを開催してな、世界から一人を選んで交換留学生みたいな感じのことをやろうと思ったんだ。」

「はぁ?」

「それで世界中の約六十億人から君が選ばれたのだ!おめでとう!」

「ふざけ―――。」

「おっと、その言葉はこれを聞いてからにしてくれ。君が行く世界は剣と魔法の世界、君たちの言うファンタジーの世界だ。」

「なるほど連れてけ。」

「…変わり身早いな。で…だ。このまま送り込んでも君は直ぐに死んでしまうだろう。」

「やっぱりお断り―――。」

「そこで君の願いを一つ聞いてやろう。」

「なんでも?」

「ああ、戻せ以外なら聞いてやろう。今言ったからな?これから言おうとしていたみたいだが言わせん。」

「ちっ。…なら銃火器、爆弾系も含むを創造する能力が欲しい。もちろんシステムアシストも必須だからね。新人なんかが銃火器を扱えるわけがないからね。」

「…それもそうだな。それに君の体は銃を扱うには少々貧弱だな。おまけに身体強化の加護も付けてやろう。後言語の自動翻訳もな。」

「貧弱って…。」


VRFPSではシステムにより動作がアシストされており、どんな初心者でも熟練軍人並に銃を扱うことができるのだ。

それがない場合、まったくの初心者が銃を使うことになりゲームにならないのだ。

さらにそれを異世界、リアル(現実)で扱うには更に反動と言うデメリットも発生し腕力がない者が撃つとあらぬ方向に飛んでいきかねない。

最悪の場合はフレンドリーファイア、同士討ちを起こしてしまう。


「ではこれで向こうの世界に送らせてもらおう。」

「ちょっと待って、私には学校も家族も居るんだけど、どうなるの?」

「気にするな。お前の記録は世界線から抹消され、矛盾はすべて世界の修正力で無かったことになる。」

「無かったことって…。」

「向こうの世界には組み込むだけだから何も必要ない。」

「そう。無かったことかぁ…少し寂しいな。」

「ふむ。寂しいという気持ちはわかるぞ。…まあ、私が言えたことではないが。」

「ええい!女は度胸!いいよ、どこにでも送りなさい!」

「いいぞその度胸。人に見られないように森に送るから何か有ったら能力使って生き延びろよ。使い方は念じれば良い。銃の種類はおまけで知識に入れといてやる。一種類とかじゃつまらないからな。」

「よ!太っ腹!」

「それじゃ送るぞ。達者でな~。」


そう言うと鈴の意識は暗転していった。


「行ったのかい?」

「ん~?あ、お前か!どっちは誰を選んだんだ?」

「こちらからは名のある魔法使いをそっちの世界に送ったよ。」

「魔法使いか。それはさぞ過ごし辛いだろうな。こっちの世界には魔力と言うものが無いからな。」

「そうだね。魔力がない世界で魔法を使えば世界に修正され魔法の発動は無かったことにされる。魔法使いにとってはとても辛いと思う。」

「で、何を渡したんだ?」

「こっちの世界の知識。後おまけに家と三ヶ月分のお金かな?」

「おいおい、サービスしすぎじゃないか?」

「君こそサービスしてたじゃないか。」

「あー。だって一つだけじゃつまらないだろ?」

「それはそうだけどね。」

「まあ、俺達はこいつらを見守ろうじゃないか。」

「そうだね。永劫の存在の僕達にとっては人は面白い。その一瞬を強く生きる意思が。」


そう言うと二人の神は自分たちの世界に帰っていった。

それと同時に二人の人間の記録が世界から削除され、矛盾は世界により修正されたのだった。

そして世界に二つの記録が新しく追加される。


これからどのように生きるのか。

それは本人たち次第だ。



13/11/7 誤字修正

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