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ナナマルでゴザル

エレインは自分を助けてくれる謎の人物の正体について考えていた。

全身を鎧で包んでいる。

その姿は昔、村に来た帝国の騎士の姿によく似ている。

しかし、こんな地下深くに騎士様が居るなんて聞いたことが無い。そこでエレインは本人に聞いてみることにした。


「あのう。貴方は帝国の騎士様なのですか?」

「ん?テイコク?それは何でゴザルか?」


当てが外れたようだ。


「じゃあ、アナタは一体・・・?」

「拙者はオウザ様を守護する魔道兵でござる。

型式はFZ70Ⅲ型でゴザル」

「まど・・・?ナナマル?」


困惑するエレイン。何一つ知っている単語が出てこない。

仕方なく別の質問に切り替える。


「あのう、お名前は何というのですか?」

「ナマエ?それは何でゴザルか?」


予想外の答えにさらに困惑するエレイン。


「何と呼べば・・・?」

「あぁ!名称でゴザルか!さっきも言った通り、FZ70Ⅲ型でゴザル」

「えふぜっと、ななまる、さんがた・・・?長い名前なんですね

「そうでゴザルか?

でもオウザ様は拙者を、そうやって呼ぶでゴザル。

・・・おっと、着いたでゴザル」


エレインの目の前の壁が音を立てて開き、エレインを朝の陽ざしが包んだ。


「さて、村でゴザルな。村・・・、村・・・、おお!北東の方角にそれらしい反応が有るでゴザルな。それがオヌシの村でゴザルか?」


エレインは困惑しながら首を縦に振る。

この辺りにはエレインの村であるナザル村しかない。

村が有ったとするならば、それはナザル村だろう。


「しっかし、外に出るのは久しぶりでゴザルなぁー!」


その開放的な声にエレインも嬉しくなる。

まさか、再び外に出られるとは思わなかったからだ。

そのせいか、思わず目の前の謎の人物への礼の言葉が飛び出した。


「あのっ!あ、ありがとうございます!ナナマルさん!」

「ナナマル?」


少女がナナマルと呼んだ、その人物の表情は鎧に遮られて読み取れない。

焦ったエレインは勢いで発してしまった言葉に後悔しながら謝罪した。


「あっ!ゴメンナサイ!その・・・名前が長くて・・・

覚えられなくて・・・」

「・・・ナナマル。拙者の名前はナナマルでゴザルか。ふむふむ。」


何やら気に入ったようで、安堵するエレイン。

再び歩き出すナナマル。

何やら気まずさを感じてエレインが黙っているとナナマルが突然、口を開いた。


「何か来るでござる」


エレインは最初、村人が来るのだと思った。

しかし、まだそこは森の奥深くであり、村人が気軽に立ち入るような場所でない事はエレインには知る由もない。

枝葉を揺らしながら現れたのはコボルトだった。

犬のような頭部を持つ人型の生物。

エレインは「ひっ!」と短く悲鳴を上げる。

その生物は幼いエレインにも良く分かる驚異だった。


「何モンだ?何してやがる?」


一団の中でも体格の大きいコボルトが問い掛けてきた。

実は、この辺りはコボルト達の縄張りなのだが、そんな事はナナマルもエレインも知るわけがない。

ナナマルは素直に応対する。


「何もしてないでゴザル。村に向かって歩いているだけでゴザル」

「ふーん・・・。とにかく、この辺りはオレ達の縄張りなんだ。

ここを通るなら通行料を払ってもらわにゃいかんなぁ・・・」

「そう言われても、拙者は何も持っていないでゴザル」

「持ってるじゃねぇか、その抱きかかえてるガキを置いていきな」

ビクッと体を強張らせるエレイン。


「そうはいかないでゴザル。この子を村に送り届けるのが使命でゴザル」

「あぁっ!?そんなのは知らねぇよ!」


体格の大きいコボルト・・・恐らくはリーダー格のコボルトは他のコボルトに顎を使って指図する。・・・襲えと。

コボルト達には自信があった。

例え全身を鎧で包んでいる騎士でも相手が1人なら自分たちが負けるはずがないと。

それは群れをまとめるリーダーの指導力によるものだった。

狩りの際の作戦やフォーメーションを細かく決め、それが上手く行くように繰り返し鍛錬する。今回の作戦は騎士に対する前後からの同時攻撃。

騎士の装備しているフルヘルムは防御力こそ高いが、視界が狭い事を知っていたからだ。それゆえ選択した作戦。その選択は間違いではない・・・相手が人間の騎士であったなら。


「なっ!?」コボルトのリーダーが驚きの声を上げる。

前後から襲い掛かった2匹のコボルト達が撃退されたからだ。

同時攻撃のタイミングは、かつてない程にピッタリだった。

しかし、獲物は襲い掛かるコボルト達の方を見もせずに左肘と右膝で迎撃した。

エレインを抱えたままで。

カウンター気味に攻撃を喰らった2匹は顎を砕かれ、声も上げずに倒れている。

それを見て後退りするコボルト達。


「では、通っても良いでゴザルな?」


コボルト達からの返答を待たずにナナマルは再び歩き出す。

コボルト達は、それを見送ることしか出来なかった。

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