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夢を見た。  作者: 雪月
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鬼子母神の夢







夢を見ていた。


江戸の長屋、病んだ女がやつれた顔で乳飲み子を抱いていた。


この子に生きてほしいと泣いていた。


別の場所、一人の男が文机に向かい、写本を作っていた。


男はこの世の不思議に少しばかり足を突っ込んでいた。


特殊な薄い墨で、赤子を喰らう妖怪が、情に絆され業に逆らい、人の子を育てようとしている話を綴っていた。その墨には様々な願いが籠められていた。


賑やかな通り。


男は女と擦れ違う。


女は若々しく病みの影もなく、こざっぱりとした身なりで、擦れ違う男に会釈して通りすぎた。


子どもを連れている気配はなかった。


そんな、悲しい夢を見ていた。









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