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風船の夢
夢を見た。
それが少年だったのか、少女だったのか。そこが街だったのか山だったのかも覚えていない、そんな曖昧な夢だ。
けれどもきっとそれは幼い頃の自分であり、そしてそこは思い出の中の家の前の道なのだ。
手に黄色い風船を持っていた。
糸を持つその手を放すと風船は、青空に向かって真っ直ぐに飛んでいった。
しかし空には無数の電線が走っていて、風船は、どこまでも上ることができず、一番下の電線にぶつかって、割れた。
風船の中には紙吹雪に使う真っ白な紙切れが詰まっていて、青空に花を咲かせたかのように、弾けて散った。
たくさんの、悲しみが詰まった風船の色は、黄色。