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歌が聞こえる
夢を見たのだ。
ある町があった。
そして刑事がいた。
まずひとつ目の事件があり、年寄りの冷や水的な騒動で、その時囃し立てるような歌を誰かが大きな声で歌った。
ふたつ目の事件が起きた。
悪そうでいて根が善人な青年が倒れたが、周りの人はそんなに健康そうじゃないかと言った。
刑事は彼を背負って町の中を走った。
それを見ていた町の人の耳に蘇る歌があった。
ひとつ目の事件の時の歌だ。
誰かがそれを優しい調子で歌い始めた。
世界は繋がっていて孤独ではなく、そこにいる人の名を問う歌詞だった。
まるで頑張れと言っているようにも聞こえる歌だった。
そんな、黄昏色が似合う夢だった。