2/31
ランプの夢
魔法のランプの夢だ。
ランプの精の元に一人の男が来た。
彼は自らの不幸を望んでいた。
昔、彼は魔法のランプを手に入れた。そして幸福を得た。
けれどもう富を手放し、地位も名誉もなく、妻と共に老いて死にたいと言う。妻も同じ思いだと。
しかし、男は自分のランプの精を解放してみたが、それで今までの幸福の魔法が終わるわけではなかった。
その上、彼に幸福を与えたランプは彼を不幸にすることができない。
そういう決まりだ。
だから男は、彼を幸せにしたことのない、彼を不幸できるランプを探していたのだ。
ランプの精は歓喜にふるえた。
持ち主が欲にまみれた幸福ではなく、不幸を望むこと。
それこそは正にこのランプの精がランプの呪縛から解放されるための条件なのだ。
しかし、他の精霊が叶えた願いをホゴにしてそれに反する望みを叶えるためには、男はいくつかの試練を乗り越えなくてはならなかった。
・・・・けれども結局夢は夢。穏やかな老いを得られるのならば、それはどれほど幸福なことかと願いながらも、その結末を知ることはできない。