第77話 【神話】異国の国生みの神話
混沌としていた世界に、天から男神イザナギと女神イザナミの二柱の神が降り立ちました。二柱は「天の浮橋」から矛で下界をかき混ぜ、滴り落ちた塩から島を造りました。
島に降りた二柱は巨大な柱を周り、結婚の儀式を行います。最初は女神から声をかけたため不完全な子が生まれてしまいましたが、男神から声をかけ直すことで、淡路島を筆頭に日本の島々を次々と生み出しました。
国を生み終えた二柱は、次に石、土、海、風などの自然の神々を生み出しました。しかし、最後に「火の神」を生んだ際、イザナミは火傷を負って命を落としてしまいます。
怒り狂ったイザナギは、「火の神」の首をはねました。イザナギはイザナミに会いたい一心で、死者が住む「黄泉の国」まで追いかけていきました。
イザナギを見つけたイザナミは「私は黄泉の国の食べ物を食べてしまったので、簡単には戻れない。お願いだから、私の姿を決して覗き見ないで」と約束させます。しかし、待ちきれなくなったイザナギは、松明に火を灯してイザナミの姿を覗き見てしまいました。
そこに映っていたのは、かつての美しい妻の姿ではなく、ウジがたかり、腐り果てたおぞましい姿でした。イザナギは恐怖のあまり逃げ出します。約束を破られたイザナミは怒り、黄泉の国の魔物にイザナギを追いかけさせました。
最後には、イザナギは巨大な岩で黄泉の国と現世の境界を塞ぎ、二人は永遠の別れを告げます。これが「死」というものが世界に確定した瞬間とされています。
【ミレットのメモ】
不思議な本を読んだけど、異国にも似た神話があるのね。やっぱり、「拠点村」から完全に抜け出すことはできないのかな……。
【研究員のメモ】
なんということだ、ミレットが日本神話を読んでいる。これは、民俗学史上すばらしき瞬間だ。今、私とミレットの世界線は交わりだした。この境界がなくなるのも時間の問題だろう。
【研究員のメモ:追記】
学生が「先生、覗いちゃダメですよ」と笑いながら、私の目に青い粘液を塗りつけてきた。私に見えているのは、腐敗したイザナミの姿か、それとも鏡に映った「収穫」目前の自分自身か。死というものが世界に確定した。そして、私の腹部からも、新しい神が生まれようとしている。




