第73話 【手紙】遺族への返信
王歴125年10月16日
アターシャ様
お尋ねの件ですが、当ギルドの記録によれば、当該冒険者は現在も「安らぎの洞窟」の最奥にて順調に活動中であり、死亡の事実は確認されておりません。よろしくお願いいたします。
以上
王歴125年10月17日
ミア様
お尋ねの件ですが、当ギルドの記録によれば、当該冒険者は現在も「安らぎの洞窟」の最奥にて順調に活動中であり、死亡の事実は確認されておりません。よろしくお願いいたします。
以上
王歴125年10月19日
オレアン様
お尋ねの件ですが、当ギルドの記録によれば、当該冒険者は現在も「安らぎの洞窟」の最奥にて順調に活動中であり、死亡の事実は確認されておりません。よろしくお願いいたします。
以上
備考:これ、本当に受付嬢の仕事かしら。まあ、テンプレでいいし、生死を確認しなくていいから楽だけど。
【研究員のメモ】
私のPCのメールボックスにも、大学の事務局から「学生たちの安否確認」のメールが届いている。私は、受付嬢が使っていたのと同じ「テンプレ」で返信した。
「順調に調査進行中。死亡の事実は確認されておりません」
【研究員のメモ:追記】
学生が私の背後で、その返信を見てクスクスと笑っている。彼の指はもう10本以上になり、キーボードを叩く音は「骨が砕ける音」に変わっている。
「先生、楽でいいですね。生死を確認しなくていいんですから」
私も、笑った。
「ああ、その通りだな」
いつか、私の生死も確認せずに放置されるのであろう。




