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第69話 【個人手記】調査員ミレットの記録19
暗い廊下を歩いていると、壁の向こうから「私が、私が」という声が聞こえる。最初は自分の声だと思ったけれど、違う。壁に耳を当てると、壁そのものが震えて、私の声を真似している。ふと足元を見ると、昨日落とした赤ペンが、勝手に「私が」と床に書き連ねている。その文字は、アイゼンの筆跡に変わっていった。
【研究員のメモ】
腹部の焼印が熱い。そこから「合格」という文字が、青い光を放って浮き出てくる。その時、プレハブの壁がドクン、ドクンと脈動を始めた。外の「長野」が消える。代わりに、肉の壁でできた「安らぎの村」が姿を現す。プレハブの壁を指で押すと、指がズブズブと沈み込み、そこから温かい膿のような液体が溢れ出した。その表面には、無数の小さな産毛のようなものが生えており、私の指に絡みついてくる。よく見ると、壁の筋繊維の合間に、アイゼンが着ていた「赤と黒の縞模様」の繊維が血管のように張り巡らされていた。
【研究員のメモ:追記】
腹部の青い光とプレハブの肉の壁の赤のコントラストが心地いい。ああ、私は今、最高の気分だ。21時に、私は「収穫」されるだろう。




