第2話 【公文書】回収報告書1
【音録石の回収報告書】
日付:王暦125年 10月15日
担当:ギルド調査員ミレット
「安らぎの洞窟」の地下1階、座標(22.15)にて、音録石を回収。血液以外の粘液状の物体が付着。正体は不明。付着していた粘液は、触れるとわずかに体温のような熱を持っており、甘い花の香りがした。報告書作成時点でも乾燥する兆候がない。現場に残っていたのは、カイル氏の剣のみ。ルナ氏の杖は半分ほどが消失。切断面には、「咀嚼されたような痕跡」が確認された。回収時、「安らぎの村」の村人たちは、血のついた現場の横で平然と収穫祭の準備を進めていた。彼らの倫理観は理解しがたい。
【事後処理記録:案件1042】
処理担当:ギルド運営課
・カイル氏の鋼鉄剣:村の「ドニ武器店」へ、備品補充として委託。
・捜索協力費:金貨1枚。村の「若衆会」へ、夜間パトロールの謝礼として支払い。
・特記事項:「安らぎの村」の村長より、遺失物の早期発見および原状復帰に対する感謝状を受領。
本報告書を以て、当ギルド所在地の「拠点村」と「安らぎの村」の間に締結されている「安全保障に関する協定」に基づき、事後処理を終了とする。
【研究員のメモ】
復元された報告書には「甘い花の香り」とあるが、信じがたいことに、同じ香りが漂い始めている。芳香剤の類ではない。死体が腐敗する直前の、あるいは獲物を誘い寄せる植物のような、ねっとりとした甘い匂いだ。




