第9話 【公文書】ミレットの嘆願記録
これは、ギルド調査員のミレットがギルド長に嘆願した際の文書である。
【ミレットの嘆願】
日付:王暦125年 10月18日
担当:速記官ワット
ギルド長:
「ワット、記録を。ミレット、頼みごとがあると聞いている」
ミレット:
「はい。ここ、『拠点村』の宣伝は過激すぎます。まるで、行方不明者が増えることを望んでいるようです!」
ギルド長:
「落ち着きたまえ、ミレット。ギルドとしても、これ以上、不名誉な噂が流れるのは避けたい。冒険者なしでは、この村は成り立たない。それを理解していない連中が広報をしているのが間違っているのだ」
ミレット:
「長は分かってくださるのですね?」
ギルド長:
「部下を信じないでどうする。さて、どうするか……。長である私が注意しても村長も取り合ってくれない」
ミレット:
「つまり、村長も冒険者がいなくなることを喜んでいると?」
ギルド長:
「口を慎みたまえ。このやり取りはギルドの掟によって公文書として管理される。もしも、これが村長側に流れれば私だけでなくミレットまで糾弾される。それは、何としてでも避けたい」
ミレット:
「……。では、こうするのは、どうでしょうか。あえて、偽の音録石を村長側に渡します」
ギルド長:
「偽の音録石? つまり、冒険者が失踪したと偽り、村長の動きを観察するわけか。よし、その方向で進めよう。ワット、速記が完了次第、彼女と一緒に音録石を偽造するように」
ワット:
「かしこまりました」
ギルド長:
「まずは、様子見だな。これ以上、犠牲者が出る前にスパイを炙り出す必要がある……」
【速記官の私記】
ミレットが去ると、ギルド長は深く考えられているようだった。音録石を渡す時に、「村長を騙せる内容で頼む」と一言。ギルドと村長との亀裂は深くなるばかりだ。
【研究員のメモ】
この廃村も昔は過激な宣伝で有名だった。なんでも、「長野県なのに、琵琶湖が見える」とかなんとか。そんな馬鹿げたことはありえない。しかし、それでも人が来たそうだから、愚かとしか言いようがない。




