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強制立ち退き
「…あれ、俺の部屋は?」
不思議そうな顔をして男は呟いた。男の名は室生鼎。ただ今大学二年生。あっけらかんな表情は代わる代わる変化をする。
今度は大きな声で絶叫マシーンに乗っているときよりも大きな声で叫んだ。
「俺の部屋が何故空っぽなんだーーっ!!」
視線の先には、一人暮らしにはちょうどよい大きさの部屋があった。だが、そこには家具は何一つなく扉の前にダンボールに入れられ積み上げてある。一番手前の段ボール箱には白いコピー用紙でこう書いてあった。
"室生さんへ。
家賃をぜんぜん払ってくれないので、出て行ってもらいます。もう、入居者は決まっていますので荷物を部屋に戻さないでください。
大家より。"
その簡潔すぎる文に読み終わると同時に青筋を立てた。
「あの糞ばばあぁぁあ!!」
紙を握りつぶすと力の限りそれを投げ捨てる。空を漂いぽとっと力無い音を立てて地面に落ちる様に、彼の怒りは更に煽り立てられた。
地団駄を踏み締め、最低限の荷物を旅行鞄に詰め込む。
詰め込んだ後には唯、虚しさだけが残った。