初めての休日?
初めて獲物を仕留めた日からは魔法の練習をしながら数日おきに鳥や猪(?)の魔物を数頭狩る日を繰り返していた。今日は初めての休日。と言っても今まで僕が休んでいなかっただけなんだけど。今日は礼拝がある日。教会で礼拝があるのは週に1日。週の初めの日だけあるようであとは家でお祈りするみたい。礼拝がある日は休日になっている。宿屋や牧場で働いている人は仕事をしているけどそれ以外の職種の人はお休みになっている。僕もそろそろ教会に行こうかな。そう思った瞬間にコンコンと扉を叩く音がした後に扉が開き、イブちゃんが入ってきた。
「スピカお姉ちゃん、一緒に教会に行こ?」
今日もイブちゃん可愛い。
「いいよ。ノエルちゃんも一緒?」
「ううん。お姉ちゃんはお友達と先に行っちゃった」
「そうなの?」
いつもノエルちゃんと行っていたはずなんだけど。
「うん。私がお寝坊したから先に行っちゃった」
「そうだったんだ。時間は大丈夫?」
寝坊したということはノエルちゃんたちがいつも出ている時間を過ぎているはず。
「うん。お姉ちゃんたちは今日当番だから先に行ったの」
当番というのは教会の掃除のこと。大人と子供が2人ずつ交代で礼拝が始まる前に教会の掃除をしている。どうやら今日はノエルちゃんの当番の日だったようだ。ちなみに当番は10歳以上の子供からのためイブちゃんはまだ当番になることはない。
「それじゃあ、行こっか」
「うん!」
イブちゃんの元気な返事を聞くとこっちも元気になる。
礼拝のプログラムにあるお祈り。それは神様に今日も無事に過ごせるようにと願うもの。
『スピカさん。先週も大きな怪我無く過ごせたようですね』
『はい。フィリア様の祝福のおかげさまです』
神様から祝福。それはゲームでいうバフみたいなものではない。一週間を幸せに、怪我無く過ごせるように祝われるもの。それが祝福。完全に怪我無く過ごせるものではなくてお守りのようなものなんだけどね。
『ふふ、スピカさんは信仰深いですね。私の祝福はどれくらい信仰しているかによって影響力は変わりますから。それでは今週も貴女に精霊の守護がありますように』
礼拝が終わったらイブちゃんが近づいてきた。
「お姉ちゃん、今日も森に行くの?」
「ううん。今日はお休みの日だよ」
「そうなの!?」
イブちゃんがキラキラした目で見て来た。あれ?これもしかして
「ねぇ、お姉ちゃん、魔法教えてほしい」
「あの私も教えてほしいです」
いつの間にかノエルちゃんも近くに来ていた。一緒に遊ぼうとかじゃないんだ。でもどうしよう。僕だって初心者だ。簡単な魔法は使えるようになったけど他人に教えられるほどでもない。
「えっと、お姉ちゃんが最近魔法の練習を始めたことは知っていますがその……お母さんたちにはまだ教えるには早いと言われていて、でも早く魔法を使えるようになりたくて……」
そう言うことか。でも僕の魔法はこの世界のものではないはず。フィリア様から頂いた『創造魔法』のおかげだろう。どうしよう。
「だめですか?」
ノエルちゃんは少し涙目になりつつ聞いてきた。うぅ、そんな顔をされると断りずらい。
「えーと、僕教えるの下手だと思うよ?」
「それでも教えてほしいです!」
どうしよう。まだこの世界のことを良く知らないから僕のスキルのことはあまり話したくない。でも断りずらい。
「……いいよ。村の外に出ても大丈夫?」
僕は折れてしまった。ノエルちゃんとイブちゃんなら教えても大丈夫なはず。
「ありがとうございます!大丈夫です」
「ありがとう!」
ノエルちゃんとイブちゃんの笑顔が痛い。
「スピカちゃん、大変そうだなぁ。スピカちゃんに願っている少女たちは敬虔な信徒たちみたいだね。今回は私も手助けしちゃお~。これくらいは問題ないよね」
僕はいつもの草原にノエルちゃんとイブちゃんを連れてきていた。
「えっと、まず魔法を使うときに大切なことが3つあって、1つ目はどんな魔法を使いたいかを想像すること。これは魔法の形を決めるの。2つ目はどれくらい魔力を込めるのか。これは魔法の威力を決めるの。3つ目は魔力の流れを綺麗に循環……えっと回すこと。これは魔法を保つ」
これは『創造魔法』の効果だろうからおそらくこの方法では使うことができないはず。でも教えるって言ってしまったからには僕の方法でも教えるべきだよね。使えないってわかった時のケアどうしようかな。
「まずは見本を見せるね。ん~水球を出そうかな。こぶしより少し大きい水の球を想像してから魔力を込める。ここでただ魔力を込めるだけだとだめで魔法を使うって意思を持つことが大切なの。ただ魔力を込めて唱えるだけだと『ウォーターボール』」
いつも通りイメージして魔力を込めても何も起きない。そう、どんな魔法を使いたいをイメージするかと魔力を込めるだけでは魔法は発現しない。魔法を発現させるという意思が最後のトリガーとなっている。多分不意の発現を防ぐためのセーフティとなっているんだろう。
「魔法を使う意思がないとこんな感じで何も出ないの。はっきりとどんな魔法を使いたいかを想像することと魔力を込めること、そしてしっかりと魔法を使う意思を持つことが必要なの」
2人とも真剣に聞いてくれている。反応してくれるから教えやすい。
「魔力は込めるほど威力が上がるからちょうどいい量を込めることが大切だよ」
ノエルちゃんから
「あの魔力を込め過ぎるとどうなりますか?」
ノエルちゃんが質問してきた。そうだよね。気になるよね。
「例えばあそこの木を狙ったとき、ちょうどいい量が少しへこむくらいだとすると少なかったら傷がつかないぐらい、多すぎると木が引きちぎられたみたいになるよ」
制御できるならそれくらい。そう、制御できる範囲の量なら。
「でもそれは魔法をちゃんと操ることができるとき。操ることができないくらい魔力が多かったら自分を巻き込むこともあるから気を付けてね」
これは前の失敗からの発言。幸いにも無事だったけど毎回無事とは限らない。
「ありがとうございます。わかりました」
「じゃあ見本を見せるからそのあとに練習にしよっか。少し離れていてね」
魔法を見せるためにノエルちゃんとイブちゃんを少しだけ離させる。
「じゃあ、そこの木を狙うね。まずは魔力がちょうどいい量込めた時の魔法ね。『ウォーターアロー』」
僕はここから50mほど離れた木を狙い魔法を行使する。すると水の矢が発現し狙った先に飛んで行きバキッという音と共に木の幹を凹ませる。
「次は今の半分の魔力量で使うね。『ウォーターアロー』」
さっきよりも魔力を減らして魔法を行使する。見た目は同じ。速度も同じ。でも木に当たっても傷一つつかない。
「次は魔力を最初の倍込めて使うね。『ウォーターアロー』
今度は狙った木が引きちぎられたように根元を残し消滅する。
「こんな感じで魔法は使う魔力量によって威力が変わるよ。使い方や相手によってはちょうどいい魔力量は変わるから注意してね。それじゃあ練習していこうか」
「はい!」「うん!」
2人は元気よく返事を返してくれる。
「じゃあまずはノエルちゃんからやってみようか」
「はい。えっと、使いたい魔法を想像してから魔力を込めて。『ウォーターアロー』!」
ひゅん、と僕の目の前を水の矢が飛んで行き、木の幹を凹ませる。
「やった!スピカさん、私魔法使えました!」
魔法が使えたことでいつもよりもテンションが高くなっているノエルちゃん。対して僕は驚いていた。だってこのやり方は『創造魔法』がないとできないはず。……いや、たまたまやり方が同じだった可能性があるし今は教えることの方が優先だね。
「おめでとう。うん、威力も精度もいいね。次はイブちゃんやってみようか」
「うん、わかった!『ウォーターアロー』!」
ひゅん!
「へ?」
ノエルちゃんよりも速い速度で僕の目の前を通り過ぎ木の幹にあたり木が折れる。
「ごめんなさい」
イブちゃんはしゅんとした声で謝ってきた。
「大丈夫だよ。失敗は誰でもするし初めから上手な人は少ないんだから。次から気をつけようね」
「うん!」
それから練習を続けてもうすぐ1時間。そろそろお昼ご飯の時間。そろそろ休憩にしようかな?
「そろそろ休憩にしようか」
「はい」「うん」
僕はいつも通りお昼ご飯を『アイテムボックス』から取り出して……しまった。
「「え?」」
そうだよね。何にもないところから突然物が出てきたら驚くよね。しかもこの世界に存在するかわからないスキルを使ってしまった。
「このことは秘密にしてね?」
「は、はい」「うん、わかった!」
「ありがとね」
油断していたなぁ。気をつけないと。僕意外に『アイテムボックス』持ちがいないと色々とめんどくさいことになるだろうから。
1時間くらい練習したら休憩を何度か繰り返しすっかり夕暮れになっていた。
「今日はこれくらいにしようか」
「はい!ありがとうございました!」「ありがとうございました」
今日のノエルちゃんは珍しくずっとテンションが高かった。わかるよ。自分の成長は嬉しいもんね。
「これからは週に1回はこうやって教えるけどしばらくはここ以外では魔法は使わないでね」
「わかりました」「うん」
2人はすんなり受け入れてくれてよかった。さて帰ろう。お腹すいたし。
「それじゃ帰ろうか」
「はい!」「うん!」
こうやってわいわいと帰るのもいいね。2人とも本当に嬉しそう。……うん、2人のためにも僕自身のためにももっと頑張らないとなぁ。
お久しぶりです
前回11月1日に投稿すると言っていましたがこんなに期間が開いてしまい申し訳ありません。Twitterの方でお話した通りここ数カ月はあまり精神状態がよくない日が続いていました。今も元の調子に戻ったわけではないですが書けた分は少しずつ投稿をしていこうと思います
次回の投稿予定は12月27日です(あくまで予定です)




