魔法の取り扱いは注意
多分いつも通りの時間に目が覚める。いつも聞こえてくる機械音はなくて代わりに鳥の囀りが聞こえてくる。ベッドから降りて、背伸びをする。さて、早く用意をしよう。とりあえず着替えよう。衣類は『アイテムボックス』にいつの間にかに入っていた。確認した時には確かになかったから多分フィリア様が追加で入れたんでしょう。にしてももともと着ていた服も着替えもこの村だと浮いちゃうような気がする。明らかに素材がよくて作りも綺麗。まぁ昨日大丈夫だったし大丈夫か。……寝ぐせついてないよね?よし、朝食にしよう。鞄を持って下に降りよう。
「スピカさんおはようございます」
「ノエルちゃんおはよう」
もうノエルちゃんは受付にいた。いつも通り起きたとすると7時前くらいのはず。あれ、でも昔は日の出とともに起床したって言われていたっけ?もしかして僕の方が遅起き?まぁ、いいか。朝食にしよう。昨日と同じカウンター席に座る。メニューを見ると朝食のセットは3種類のようだ。もちろん中身は不明。まぁ、順番に頼んでいけばいいか。今日は一番上のやつにしよ。
朝食を頼んで待っていたら
「あの……おはようございます」
イブちゃんから挨拶をしてくれた。まだ、恥ずかしそうだった。警戒されている感じはしないから人見知りなだけかな?うん?どうしたんだろう?あっもしかして僕の隣の席に座りたいのかな?
「イブちゃんこの席に座りたいの?」
「うん」
「抱っこして良い?」
こくんとうなずくイブちゃん。可愛い。イブちゃんを抱っこして隣に座らせる。
「おや、起きたのかい。おはよう。ご飯出来ているよ」
「お母さんおはよう」
イブちゃんはお母さんと会話を始めた。いいなぁ。朝から親と会話したの最後いつだっけ?お父さんもお母さんも朝から忙しそうにしていて朝から挨拶も会話もしなかったな。
「はい、プルウフの朝食セットだよ。どうしたんだいそんな顔をして」
どうやら顔に出ていたらしい。
「いえ、少し羨ましいなと。僕は両親と過ごす時間は少なかったので」
「そうだったのかい。寂しくはなかったのかい?」
「少しだけ寂しかったです。今でも少し羨ましいなって思います。あっ、ごめんなさい。こんな話して」
誰にも話すはずはなかったことを話してしまった。気が緩んでいるのかな?次から気を付けよう。
「いいんだよ。1人でため込む方が辛いだろう?なんかあったら話しな」
「そうさせてもらいますね」
「あいよ。それで今日は何をするんだい」
そうだ。教会の場所を聞いていなかった。礼拝に参加したいから聞いておかないと。
「今日は礼拝に参加してから魔法の練習をしようと思っています。あの、この村の教会の場所ってどこですか?」
「教会かい?それならここを出てから左に進めばあるよ」
「ありがとうございます」
あんまりおしゃべりをしていると礼拝に遅れてしまうからおしゃべりはここまで届いた料理はロールパンのようなものとサラダ、スクランブルエッグのようなもの。
「いただきます」
パンはほんのり温かくてほんのりバターのような味がする。前世と同じかそれ以上においしい。サラダはさっぱりとしたドレッシングがかけられていて、スクランブルエッグのようなものも見た目通りだ。もしかしてこの世界の食のレベルって前世と同じくらい?王都の方に行けば前世以上かも。どうしよう。さっそく胃袋を掴まれかけている。これはこの村を出発するときかなり辛い気持ちになりそう。そんなことを考えながら朝食を食べることになってしまった。
僕は今草原にいる。最初は森の中で魔法の練習をしようと思ったけれど森だと被害を出す可能性が高いと思ったので村から少し離れた草原にした。僕が選んだ『創造魔法』の使い方がわからないので試すしかない。え?教会に行ったんじゃなかったのかって?礼拝の時間は多くの人が祈る時間。そんな時間に聞くのは違うだろう。それに何でもかんでも聞くのはつまらない。わからないけれどスキル名から想像もできる。まずは、水属性の魔法から試そう。魔法は『イメージの具現化』っていう認識だからまずは野球ボールくらいのサイズの水球を想像しながら魔法を発動させよう。
『ウォーターボール』
すると目の前に野球ボールほどの水球ができた。けれどうまく維持ができずにすぐに崩壊してしまった。魔法の維持ってどうするんだろう?イメージを保つ?
『ウォーターボール』
パシャンと音を立てて、今回もすぐに崩壊してしまった。ということは維持に必要なのはイメージではなくて魔力のはず。でもどうやる?……とりあえず魔力を増やしてみる?
『ウォーターボール』
今度はさっきよりも少し大きくなっただけで維持はできなかった。循環を意識してみるのがいいのかな?血液が体内を巡るようなイメージで。
『ウォーターボール』
やった!歪だけど維持できた。そう思った瞬間、形を保てなくなって崩壊した。なるほど、魔法は発現させる瞬間の魔力量は威力、維持は循環といった感じになっているようだ。さっきので魔力の流れも少しは感じられるようになった。なら、まずは魔力循環の練習からしよう。今度はもう少し流れを意識して。
『ウォーターボール』
……さっきと同じで維持はできているけれど綺麗な球ではなくて歪で形をうまく保てない。それに一瞬でも意識をそらすと崩壊しそうになる。
「あっ」
再び水球はパシャンと音を立てて崩壊した。単に流れを意識するだけではダメなようだ。これは研究し甲斐がありそう。こんなに夢中になれることなんてなかったから新鮮だ。ここから僕はひたすら維持する方法を考えては試した。
魔法を維持する練習を始めてだいたい2時間が経過した。少しずつコツが掴めてきて1分程度綺麗な水球を維持できるようになった。今度は他の属性でも試していこう。次は火属性。松明の炎をイメージして発現させよう。
『ファイヤーボール』
うん、しっかりと維持できている。ここに魔力を増やしたらどうなるのかな?僕はそんなことを考えてしまった。水ではなくて火を扱っている時に。魔力を増やした瞬間、急激に炎が膨張した。まずい!僕は慌てて魔力の流れを止めた。……幸いにも飛び火はしておらずに被害はなかった。今度からは火属性を使っている時に何か思いついてもすぐに試すのはやめておこう。……気を取り直して次は風属性を試してみよう。風と言ったら何だろう?風属性の魔法は斬撃といったイメージが強いけど的がないので危険すぎる。手のひらサイズの竜巻をイメージしてみる?それでも威力はすごいことになる可能性もあるけど。とりあえずそよ風程度の勢いでやってみよう。
『ウィンドボール』
今度はうまく発現しなかった。やっぱりイメージがあやふやだと発現しない。かといって初級の段階だろうからしっかりと練習しよう。何事も基礎が大事だからね。これはこれでいい練習になる。イメージしにくいものをどう魔法にするか。遅かれ早かれ壁になっただろう。練習時間が多く取れる今できると考えていこう。ポジティブに考えるこれも大事だからね。この後夕方まで試行錯誤をした。
『ウィンドボール』
「っ!」
魔法を発現させた瞬間、突然ふらついてしまった。この時間まで休憩を取らずに練習していたからだよね。多分魔力切れってやつ。……日が沈みかけている。今日はここまでにしよう。僕はそのまま草原に寝っ転がった。僕は都会よりもこういったのどかな場所の方があっている気がする。今この時間がとても気持ちがいい。転生したばかりで新鮮だからなのかな?……早く帰らないと夜ご飯が遅くなっちゃう。でももう少しこうしていたい。今は季節でいえば初夏ぐらいかな?この世界に四季があるのかは不明だけど。……説明の時に教えてもらった気がするけど忘れたから仕方ない。今後の楽しみにしよう。はぁ、そろそろ帰ろうかな。明日は魔法を使い過ぎないように気をつけなきゃ。今日はふらつきだけだったけど、倒れたらどうすることもできないからね。さて、今日は何を食べようかな?そんなことを考えながら宿に帰るのであった。
次回の投稿は10月18日です