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転生魔女は自由に生きたい  作者: 雛月 みしろ
ソフィリア王国編
2/3

さっそく問題発生?!

 鳥の鳴き声で目を覚ます。体を起こし周りを見渡す。視界に映ったのはこの世のものとは思えないほど美しい景色だった。そう言えばフィリア様がプレゼントを用意したとおっしゃられていた。どこだろう?さらに見渡すと足元に手紙が落ちているのに気付いた。拾い上げて中身を確認する。

『スピカさんがそちらの世界で過ごしやすいようにいくつかスキルとアイテムをプレゼントさせていただきました。スキルはステータス欄から、アイテムはアイテムボックスから確認できます。何かあれば“聖域”ならすぐに対応できますし、街や村であれば教会であれば対応できます。遠慮なく頼ってくださいね。 フィリア』

なるほど。ステータス欄とアイテムボックスで確認できると。まずはスキルから確認しよう。……どうやって確認するの?よくある念じれば見れるとかかな?

『ステータス』


名前:スピカ・トワイライト

種族:神

年齢:-

身長:百五十七

スキル:創造魔法、アイテムボックス、状態異常無効化Lv.-、神眼、料理Lv.-、クラウディア言語

 称号:現人神、神子


ん?“神”?転生前の種族は“人間”だったよね?スキルの『アイテムボックス』と『神眼』はフィリア様からのプレゼントだろう。フィリア様に確認しよう。その前にアイテムボックスを確認しよう。

『アイテムボックス』


 金貨:100枚

 麻袋:5枚

 水筒:2個

 鞄

 地図


こっちは生活していくための資金だろう。こっちは問題ないかな?とりあえず麻袋に金貨を少しだけ移しておこう。……よし、兎にも角にもフィリア様に確認しよう。

『あのフィリア様』

“聖域”ならすぐに対応できると書かれてたので呼びかけてみる。

『なんですか~』

『あの種族の欄が神になっているんですけど転生するまでは人間でしたよね?』

これ他人が見れるならとんでもないことになるよね?いやだよ、フィリア様から頂いた第二の人生が崇拝対象としての軟禁生活なんて。

『……たしかになってしまっていますね』

『あのこれ他の人も見れたりしますか?』

一番気になることを聞いた。後半は不安になり少し言葉に詰まってしまった。

『……見れますね。それと身分証にも記載されますね』

えっと、僕の異世界ライフ終了?“聖域”を出なければ大丈夫だろうけどそれは孤独で生きていくということ。……無理。絶対に無理。でも街に出れば正体がばれる。

『あの身分証ってどうしても必要ですか?』

『はい。小さな村でも発行が義務付けられています。偽装も不可能です』

あぁ、終わった。独りで生きていくか軟禁生活の2択しかない。

『あぁ、そんな顔しないでください。どうにかしますから』

そう言われるが大丈夫な気配はない。

『えっと……あっ、そうだ。私が身分証を発行します。そうすれば偽装も可能です』

しばらく悩んでいたフィリア様がそう提案してきた。フィリア様、神様がそんなことしていいの?でも独りで生きていける自信はない。

『お願いします』

僕はそれが正しいことではないと思いつつも頼んでしまった。


『お待たせしました。この世界の機械がエラーを起こさないように作りましたので大丈夫なはずです』

アイテムボックス経由で送られた身分証の種族には“人間”と表記されていた。

『ありがとうございます。あの、このあとはどうするのがいいですか?』

『ソフィリア王国に行くのがよいでしょう。プロキオン帝国は現在、財政難で治安が良くありません。サルビア共和国の近くには聖皇国があります。もし貴女の正体がばれてしまったとき、聖皇国が動くでしょう』

なるほど。聖皇国というのがあるのか。近づかないでおこう。

『ありがとうございます。ソフィリア王国に行くことにします』

『“聖域”内は安全ですけど街道に出ると魔物や盗賊が出てくることがあるので気を付けてくださいね』

『わかりました。ありがとうございました』

そう伝え僕は移動する開始した。


 歩き始めてから2時間。ようやく街道に出れた。奇跡的に遠くに村が見える。日が暮れるまでには着けるはず。少し休憩を取っても大丈夫なはず。流石に2時間も森の中を歩き続けたからいったん休憩を取らないときつい。

道の反対側の草原に寝転ぶ。こうするのはいつ以来かな?草原の匂いが懐かしい。親の転勤で都会に引っ越してから自然にかかわる事なんてなかったから新鮮だ。うん?海とかに遊びに行かなかったのかって?親は共働きで忙しかったし、一緒に遊びに行く友達なんていなかったから海も行くことはなかっただよ。それにしても日差しが心地いい。……寝ちゃいそう。よし、休憩終了。寝たら間に合わない可能性があるしなにが起きるかわからないから寝るなら村の宿屋で寝よう。この世界の村ってどんな感じかな?少し楽しみ。


 僕がたどり着いた村はゲームで出てくるのどかな村って感じだ。とりあえず宿屋を探そう。野宿は嫌だからね。


「……」

僕は悩んでいた。そう二つの宿屋があったから。安さかサービスか。今後どれくらい稼げるかわからないし正直節約したい。けどしばらく拠点にしたい。……少し高いけどお風呂がついている宿の方にしよう。


宿屋に入ると受付には10歳くらいの少女がいた。親の手伝いかな?

「いらっしゃいませ。宿泊でしょうか?それともお食事でしょうか?」

「一人の宿泊です」

「わかりました。こちらに氏名をお願いします」

帳簿が差し出され、名前を書こうとしてペンを動かそうとした瞬間僕は固まった。そう、転生前の名前を書こうとしていた。今は別に大丈夫だろうけど身分証を求められたときに転生前の名前を名乗っていたら疑われてしまうだろう。……うん、気を付けよう。

「スピカ様ですね。何泊でしょうか?」

「しばらく拠点にしたいんだけど可能ですか?」

「っ!はい!可能ですよ!どれくらいの期間でしょうか?」

僕は鞄の中の麻袋から金貨を1枚取り出して

「とりあえず金貨1枚分。そのあとは1度考えます」

「金貨1枚分ですね。それでは1カ月と4週間です」

そう。この『クラウディア』では1カ月は30日。1週間は5日の1カ月6週。1年は12カ月で日数は360日。転生前とほぼ変わらない。貨幣の価値は銅貨100枚で銀貨1枚分、銀貨100枚で金貨1枚分。

「わかりました」

「それではお部屋にご案内しますね。あっ、私ノエルって言います」

ノエル……たしか転生前の世界ではフランス語でクリスマスを意味する言葉だっけ?


「スピカさんのお部屋はこちらになります」

2階に上がり、案内された部屋は1人で過ごすには少し広い部屋だった。

「浴場は1階にございます。食堂、浴場共に11刻までとなっております。私は1階の受付にいますので御用の際は1階にお越しください」

そう言いノエルちゃんは下の階に降りて行った。ちなみに11刻は22時あたり。今が8刻……16時を過ぎたあたりのはず。夕食にするには少し早い時間。……村を散策しようかな。


「お姉ちゃんどこから来たの?」

「ねぇねぇ、魔法使える?」

しばらく歩いていたら村の子供たちに囲まれていた。そりゃ、自分たちと違う服装していたり、見慣れない人間がいたら気になるのもわかるけど囲まれるなんて思ってもいなかった。う~ん、どうしよう。日本から来たっていうわけにもいかないし、他の町や村も知らないし、国は名前しか知らないし、本当に困った。……もっと詳しく聞いておけばよかった。

「えっとね、神様がいるところくらい遠くの国から来たの」

嘘は言っていない。

「そうなんだ!お姉ちゃんがいたところってどんなところなの?」

「えっとね、水が綺麗で、食べ物に困らなくて、過ごしやすいところかな」

曖昧過ぎると思うけどこれくらいでいいよね?これ以上言ったらスマホとか飛行機とか話しそう。

「すごい!本当に神様の世界みたい!」

「ねぇねぇ、魔法は?魔法は使えるの?」

どうしよう、使えないって言ったらあとあとめんどくさいことになるかもしれないからなぁ。

「どうだろうね。使えるかもしれないし使えないかもしれない」

「えぇ~なにそれ」

そうだよね。そんな反応になるよね。

「イブ~!」

あれ?この声ノエルちゃんだよね?

「あれ?スピカさん?もしかして村を散策していたところこの子たちに捕まったんですか?」

「そう。この子妹さん?」

いつの間にかノエルちゃんのもとにはイブと呼ばれた少女、というか幼女がいた。

「はい。イブといいます。もし時間があれば構ってあげてください。もうすぐ9刻ですが一緒に戻りますか?」

もうそんな時間なのか。

「そうですね。ご一緒してもいいですか?」

「はい、いいですよ。あと敬語はやめてほしいです。私も外したいですし」

「わかった。これからよろしくねイブちゃん」

するとイブちゃんはノエルちゃんの後ろに隠れてしまった。


「ただいま~」

受付には大柄な男性がいた。ノエルちゃんとイブちゃんのお父さんかな?

「おう、お帰り。先に晩飯食べてこい。そこの人は?」

「しばらくここを拠点にしてくれたお客さんだよ。ごめんなさい。お父さん怖いでしょう?」

「いや、怖くないよ。どちらかというと安心する感じ?」

大柄だけど威圧感はそこまで感じない。どちらかというとお正月に会う親戚の叔父さんって感じが近い。

「そう?前には入った瞬間に逃げ出す人もいたけど」

「もう言わないでくれ」

「それじゃあ、食堂に案内するね。まぁこの時間は酒場になっているけど」

笑顔で先を行くノエルちゃんとイブちゃん。これいつものことなのかな?と思いつつノエルちゃんたちにについていく。


「おかえり。ほら、持っていき。おや、新しいお客さんかい。メニューはこっちにあるよ」

「ありがとうございます」

ノエルちゃんたちと別れてカウンター席に座る。う~ん、何にしよう。当然だけどメニューを見ても何かわからない。


「嬢ちゃん、見ない顔だね。冒険者かい?」

悩んでいるとビール(?)を持ったおじさんに話しかけられた。

「そんなところです。おじさんなにかお薦めはありますか?」

「そうだな、この時期だとべリスの塩焼きがお薦めだな」

「ありがとうございます」

べリスの塩焼き……あった。それとオーク肉の串焼きがあったからその二つを頼もう。

「すいません。べリスの塩焼きを1本とオーク肉の串焼きを2本お願いします」

「はいよ」

べリスは魚かな?オークは串焼きって書かれていたし。

「なぁ嬢ちゃん、村じゃ見ないし外から来たんだろ」

気が付くとさっきのおじさんがいつの間にか隣の席に座っていた。

「そうですね。国境付近から来ました」

「となると帝国の人間か?この付近だと国境が近いのはうち位だからな」

そうなのか。地図は貰ってはいるけどそれはこの村までの地図だったからわからなかった。

「いえ。僕は一応はこの国の人間ですよ」

「そうなのか?さっきも言ったがこっち側の国境が近い村はうち位だぞ」

「森の中から来ましたから」

実際に転生した場所は“聖域”。一応は森の中で嘘は言っていない。

「そうだったのか。なぁどうして旅をしようと思ったんだ?」

「簡単に言えば探究心ですね。今まで知らなかったことを知りたい、やったことがないことをやってみたい、そんなところです」

「はは、魔女様は強欲ですな!」

なんか魔女と勘違いされてしまった。なんでだろう?

「あの僕一言も魔女とは言っていないんですけど。あとなんで様付けなんですか」

「森で生活するのはエルフ族か魔女様ぐらいですよ。魔女様は気まぐれに村や町に来ては薬や魔法で村の病人を直してくださるからな。皆感謝しているんだ」

なるほど。この世界の魔女は医者や薬屋に近い存在なのか。

「それで嬢ちゃんはどのような魔法を使うんだ?」

「いえ、僕は生まれてこの方魔法を使ったことがなくて。これから練習するんです」

「そうなのか。残念だな。頑張れよ」

そうか、治癒系の魔法が使える人がいれば怪我をすぐに直せるから安心できるのか。

「あぁ、そうだ。俺はエリック。嬢ちゃんの名前は?」

「僕はスピカ・トワイライトです。しばらくはこの村に滞在する予定です」

「そうか。よろしくな。それじゃ俺は仲間のことに戻るわ」

そう言いエリックさんはビール(?)をもって戻っていた。


「はい。べリスの塩焼きとオーク肉の串焼きおまちどうさん」

べリスの塩焼きは鮎っぽいかな?オーク肉の串焼きは豚バラっぽい。

「いただきます」

まずはべリスの塩焼きから。……うん、鮎だ。塩加減もちょうどいい。……あっ、もうなくなった。残念。オーク肉の串焼きは……想像通り豚バラだ。お祭りの屋台の串焼きに近いかな。こっちもあっという間になくなった。次は何を頼もう……


異世界初の食事を楽しんだあと部屋でくつろいでいた。明日は教会の場所を聞いて礼拝に参加したあと森で魔法を練習しよう。となれば今日はもう寝よう。ベッドに寝そべった瞬間に睡魔が襲ってきてあっという間に眠りについた。

次回投稿は10月4日です

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