2話 ホノアヘようこそ [後編]"学校の裏校則"
※(ジュントム視点)
秘密基地の中に入るとサフィアさんが僕の前に来て会議場所まで案内してくれた。一階の長い廊下を渡り[会議室]と書いてあるドアの前にサフィアさんは立ち止まり、ドアをノックした。すると、向こう側からノックの音が聞こえた。サフィアさんはドアノブを回し、ドアを引いた。僕とサフィアさんは会議室に入った。
会議室の中に入ると、そこにはまるで本物の会議の場みたいに長いテーブルと対面になるように椅子が複数並んでいて、前方にホワイトボードが設置されていた。そして十人ぐらいの生徒が前の方から詰めて座っていた。
「あらサフィ、遅かったのね。トイレ長かったの?」
と聞いたことのある声が聞こえてきた。
ノエルさんだ。ノエルさんは、サフィアさんのグループのメンバーだったんだ。まぁ親友って言ってたしね。グループにいるのは当たり前かと僕は思った。
サフィアさんが、笑いながら、
「今日は、小さい方しか出てねぇよ(笑)。ちょっと行く途中でなんやかんやあってね……。」
と言った。
少し落ち着いてからサフィアさんは、僕を席まで案内した。座席は、ノエルさんの隣だった。
時間が経ち、十人ほどの生徒達が入って来た時、サフィアさんとアンリさんが、ホワイトボードの前に立った。
そういえば、この二人はこのチームのリーダー、副リーダーって言っていたな〜と思い出しながら、二人の方に体を向けた。
「今からホノア会議を始める。みんなに重大なニュースが二つあるんだ。」
とサフィアさんが言った。
一体なんだろう?
「一つ目は……良いニュースだ。俺たちのグループに新しいメンバーが来た!」
僕のことだ。
すると、サフィアさんが僕のところに来て、両肩にポンと手を置いて、
「昨日ジェントリ学園に転入して俺と同じS組のジュントム・フラムスだ!みんな仲良くしよう!」
とハイテンションに言った。
みんなが僕の方を見た。なんか恥ずかしいな。
でも、みんなとても優しくて「よろしく!」や「メール交換しよ。」などと言ってくれ、拍手をしてくれた。
僕は本当に嬉しくて笑顔になり、みんなに小さく手を振った。
みんなも手を振ってくれた。
このグループのメンバーは、絶対に良い人達だと思った。
アンリさんが、
「ジュントム、同じグループのメンバーとして改めてよろしくな!」
と言った。
僕は、「はい!」と全力で返事した。
その様子を見たサフィアさんは、話を再開した。
「よし!それじゃあ次は二つ目なんだが………これが最悪なニュースなんだ。」
サフィアさんは、一旦深呼吸してこう言った。
「王が、ターゲットを変えた………」
場の空気はさっきまでとは変わり、メンバーは、驚いたように目を丸くしながらみんな互いの顔を見ながらパニックになっていた。
「サフィ、今回は誰がなったんだ?原因は?」
茶髪の僕より年上だろう男の子が、そう言うとサフィアさんが、
「今回のターゲットは、ジュントムと同じS組の転入生だ。名前はマノン・ニコル、多分、ライアンに平手打ちをしたのが原因だ。」
と暗い顔で言った。
みんなは、まだ驚いた顔をしていた。
「そのマノンって子結構凄い子っすね。あのライアンに平手打ちとは。その子は、学校の裏校則を知らなかったんすか?」
と赤毛のチャラそうな男の子が質問した。
そして、その質問をアンリさんが答えた。
「多分、校則は分かってはいたんだと思う。彼女が転入して来た時、一番先に話しかけたのが王だからね。彼女はターゲットを助けたかったんだろうね。」
場の雰囲気が静まり返ったので、アンリさんは、詳しく何があったのか話した。
すると、ほとんどのメンバーが涙目になり、マノンさんに対して敬礼している人がいた。
なんだか個性的で感情的な人達だなと思った。
でも僕の中に疑問が生まれ、僕は質問してみた。
「あの、僕昨日来たばかりであまり学校のこと知らないので王とかターゲットとかよく分かりません。ジェントリ学園に一体どんな秘密があるんですか?」
そう僕が言うとサフィアさんは、焦って
「あっそうだった。ごめん。ジュントムには、まず学校の真実を教えなきゃね。ジュントムのためにこの学校のこと最初から説明していいか?」
とみんなに訊いた。
みんなは、当然のように首を縦に振ったので、サフィアさんは話し始めた。
「公には、ジェントリ学園という国際学校は世界の中ではトップクラスの学校でとても充実した生活を送ることが出来、入学しただけで人生の勝ち組に入ることが出来るとして知られている。だが、現実は全く違う。そんな良いものではない。闇深い裏があるんだ。ジェントリ学園に入れば、良い待遇なのはごく僅かでほとんどの奴は必ず不幸な目に遭う。卒業するまでに学校で死んだ奴もいた。」
僕は、自分がこの学園の真実を知り、心の底から驚いた。
サフィアさんは、話し続けた。
「特に一番ひどいのが、この学校では絶対王政制度があることだ。」
「絶対王政ってなんですか?」
僕は、質問した。
サフィアさんが、僕の質問に答えようとした時、アンリさんが先に分かりやすく説明してくれた。
「絶対王政っていうのは、まあ分かりやすく説明すると「王様」という存在は神に選ばれた偉い存在で世の中で一番力を持っているから王が定めた事や命令した事には絶対に従えって意味だよ。」
サフィアさんは、自分が説明したかったのか頬をプクッと膨らませて怒っていた。
アンリさんは、指でツンツンとサフィアさんの頬を突くと空気が抜けたかのようにサフィアさんの頬の膨らみが消えていった。
この二人は、本当に面白い。僕は、笑いそうになった。
サフィアさんが、話を続けた。
「そう。アンリの言った通りだ。王の命令は絶対!それが、世間に知られていない学校の裏校則だ。そしてその王も厄介な奴で容姿端麗で賢いから今や学校のマドンナだよ。」
「その王っていうのはもしかしてセリーナさんのことですか?」
「気づいていたのか?」
「まあ、パッと見て周りを惹きつけるような不思議な子だなと思ったから。でもどうしてセリーナさんが学校の王なんですか?」
僕は、質問した。
すると、サフィアさんから衝撃的なことを口にした。
「あいつが王になった理由は、簡単だ。セリーナはこの国のトップである大統領の娘だからだ。」
大統領の娘!?そうだったんだ。だからめちゃくちゃ高価なペンがあるわけだ。学校にそんな凄い子がいるなんて。
「本当の王みたいなものだから、学校を好き放題操っているんだ。だから悪事を躊躇無くする。そのいじめの標的になった人をこの学校では「ターゲット」と呼ばれている。ターゲットは、全校生徒から下に見られ、いじめや嫌がらせを受ける。そして、ターゲットは、王から出された命令は、嫌でもしなくちゃならないんだ。」
僕はそのことをを聴いた時、ふと思った。マノンさんは、今後どうなってしまうのだろうと。そこで僕は、一つサフィアさんに訊いてみた。
「あの、そのターゲットにされた生徒は、いつになったら解放されるのですか?」
すると、みんな暗い顔になった。
そして、サフィアさんは、一瞬黙り込んで、僕に
「……分からない。ターゲットの交代は王、セリーナの気分次第なんだ。運が良ければ、一週間ぐらいで解放できるが、最悪の場合……卒業するまでずっとターゲットにされることもあるだろう。」
と言った。
僕はこの時、頭が混乱した。卒業するまでいじめを受ける。誰も助けてくれない。そんなのは、僕にだって嫌だ。と思い、
「そんなことを分かっているんだったらなんで助けに行かないんですか?こんな所で話していても現状は変わりません。このままだと、このままだとマノンさんが、心身共に大変なことになってしまいます!弱い人を助けることがこのグループの役目じゃないんですか?そうですよね?」
と心に思っていた事を全て吐き出した。
すると、サフィアさんが、怒鳴ったような口調で言った。
「そうだよ!だけどな、残念だがこっちはこっちでルールがあるんだよ。セリーナが作った学校の校則が。」
「え?」
僕は、一瞬思考が停止した。学校の校則?一体どういう事だと思っていた時、
「お前まだセリーナの学校の校則見てなかっよな?だったら今すぐ見ろ。そこに理由が書いてある。第六条だ。」
とサフィアさんは言った。
僕は、サフィアさんの言う通り、セリーナさんから届いていたメールを見た。すると、そこには第十条までのおおまかな学校の校則が書いていた。そして僕は、第六条を見た。そこには、
『第六条 ターゲットと何かしら関係のある者又はクラスメートは、ターゲットを庇うあるいは王又は第一部下に反撃する事を禁ずる。守らなかった者は、ターゲットとなる。あるいは大切なモノを奪われる。』
なんだこれ、あれ?これって僕が救おうとしても無理なやつだ。
「大切なモノって一体なんですか?何を奪われるんですか?」
僕は、質問した。
すると、アンリさんが
「大切なモノは人それぞれ違うからね。まぁその校則を破った人にとって一番大切にしている物を奪われるってことだよ。」
と言った。
大切なモノ。僕にとって一番大切なモノは……家族や友達。僕は、この時察した。胸が苦しくなった。
すると、サフィアさんが、過去のことを語った。
「半年前、もう一人メンバーがいたんだ。彼は、自分の恋人がターゲットになってしまい、恋人を助けようと必死だった。俺達も止めようとしたが、アイツの信念は凄まじく無駄だった。そして、彼は恋人を庇い、セリーナに反抗したんだ。」
「なかなか凄い人ですけどそんなことして大丈夫だったんですか?」
「大丈夫じゃなかったよ。セリーナに向かって水を掛けたからまず、第一部下つまりセリーナと関係が深い生徒からたくさんの嫌がらせを受け、秘密を晒されて、そして……」
「そして、何ですか?」
サフィアさんは、少し黙り込んでそして、僕に言った。
「そして、彼の大切なモノが奪われたんだ。彼の大切なモノは、恋人だった。だから、王の部下達に恋人の家を燃やされたんだ。」
「………それで、どうなったんですか?その恋人は?」
「……家は全焼して、恋人は、遺体で発見された。それにその恋人の親も。彼は、そのショックで自殺した。」
僕は、それを聞いた時、僕の目には涙が溢れていた。これは酷すぎるよ。何が何でも。全然関係のない親まで殺されて。
「そんなの酷い。でも、こんな大ごと、警察沙汰になるんじゃないですか?殺人が起こってるんですね?世間は黙ってないと思うんですけど。」
だってそうだ。こんなの大ニュースじゃないか?
僕がそう言うとサフィアさんは
「だったら、どうしてジェントリ学園の人気が絶えないと思う?そういう事件があるにも関わらず、毎年入試の合格倍率は10倍以上を超えるほど人気になっている。隠蔽されているんだよ。数々の手段を使ってね。だからニュースにもならなかったんだ。」
と言った。
僕はジェントリ学園がいかに恐ろしい学校だと言うのを理解し、人間の怖さを改めて思い知った。
いじめた奴らを許さない。そう思い僕は、
「助けたかった人が逆に死なせてしまうなんて、その人がとてもかわいそうです。やっぱり僕、許しません!僕は、何があっても王政制度を無くしたい!そして王倒して二度といじめが起きないようにしたいです!」
と言った。
すると、サフィアさんが、
「やっぱりお前を俺達のグループに入れて良かった。」
「何が良かったのですか?」
僕は、質問した。
すると、サフィアさんは、ホワイトボードをドンと叩き、こう言った。
「俺達ホノアは、この王政制度を無くし、学園の皆んなが仲良く平和な生活を送れるようにすることが目的だ。そうだろお前ら!」
すると、みんなが立ち上がり、手を上にあげて、「おお‼︎」と叫んだ。
そして、サフィアさんは、僕の方へ来て、肩にポンと手を置き、
「どうだジュントム、俺達は、黙って傍観者ぶるグループじゃない。これまで王の部下達を何人かもう二度と悪事を働かないようにしてきたからな。だから、安心しろ。必ずみんなが幸せになるようにして見せるからさ。そのためにもお前もグループのメンバーなんだから、活躍しろよ。」
とにっこり笑って言った。
僕も笑顔になり、「はい!」と返事した。
サフィアさんが、
「よし!良い返事だ。」
と言って僕の頭を撫でた。
凄く恥ずかしかったけど、嬉しかった。
サフィアさんが、前に戻り、話始めた。
「じゃあ、いつものように学校で何か事件があったりした場合は、すぐに知らせること。先に王を狙わず、部下から狙うんだ。王の権力を使って悪いことをしている奴らがあちこちにいるからな。分かったな?」
みんなは、「はい!」返事をした。
僕も返事した。今日から僕は、このグループのメンバーであることに嬉しく思った。
その時だった。
「キャアーーーーーー!」
と突然悲鳴が聴こえた。女の子の声だと僕は思った。
「何だ今のは?向こうの方から聞こえたぞ!」
とアンリさんが叫んだ。
みんなは、何が起こったのかとあたりをキョロキョロしていた。
すると、サフィアさんが、
「………俺が、様子を見てくる。もしかしたら、何かあったかもしれない。そうだジュントム、お前も来い。初めての現場検証だ。」
と言った。
なんかいきなりだなと思い、返事し、サフィアさんの後をついて行った。僕はなんだか嫌な予感がした。
第二話の続きです
もしよろしければ、コメントや評価をよろしくお願いします。