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1 僕の学校 [後編]"見て見ぬふりの生徒達"

※(ジュントム視点)


 体育の授業は、僕がこの学校に転入して来て特に印象に残ったことだと思う。


初めは、準備運動と柔軟、補強運動をした。アンリさんと柔軟と補強運動のペアになった。


腕立て三十回はきつかったな〜コーチが鬼みたいに厳しすぎる。しかも、体育は、女の子と混合だ。なんだか気まずい。そう思った。


 柔軟と補強運動が終わり、コーチが「整列‼︎」と言い、生徒達を四列に並ばせた。


そしてコーチが、今日の体育の内容を話し始めた。


「今日は、新学期最初の授業だ。新しく入った二人もいることだし、今日は、みんな大好きなドッジボールをやるぞ!!」

そう言うとコーチは、ドヤ顔をした。


クラスメイトの反応はドッチボールをしたくない人としたい人で割れた。


僕は、どちらかというとすごく楽しみにしていた。


だけど、サフィアさんとアンリさんの顔を見ると二人とも嫌そうな顔をしていた。特にサフィアさんは、アンリさんより暗い表情をしていた。

でも、二人ともすぐに喜んでいるような雰囲気を出していた。


いったい今の顔は何だったんだろう?

 

 チーム分けをやり、コーチの合図と共にドッジボールが始まった。


アンリさんは、僕と同じチーム、サフィアさんは、相手チームだった。


投げてくるボールがとても速く、上手く避けないと大怪我をすると思った。


 始まって一分ぐらい経った時、たまたま僕のそばにボールがあり、僕はボールを拾った。

向こうの外野からアンリさんが、手を振っていた。たぶんこっちに投げろという意味だろう。そう僕は察して、ボールを投げた。


すると、偶然かも知れないが、ボールは、相手チームの方へ行き、そして相手の体に当たった。しかも二人だ。


僕のチームは、歓声を上げていた。

「あいつやるじゃん!」、「ナイス!」や「ジュントムくん、カッコいい!」と言った声が聞こえ、僕は、こんなにみんなから褒められるとは思わなかったため凄く嬉しかった。



 試合はどんどん進み、アンリさんが内野に加わり、ますますハードになった。そして、僕のチームが五人、相手チームが八人になった。

ボールは、相手チームの内野のところに入った。


そのボールを目つきの悪いヤンキー系の男の子が拾った。何やらこちらをにらんでいる。

すると、その子は、僕に向けて強いボールを投げてきた。


僕は、素早くボールを避けた。


すると相手側の外野からまた僕に向かってボールを投げてきた。


この時僕は、察した。僕を狙っているのではないかと。


その予感は的中した。またあのヤンキー系の男の子が僕に向かってボールを投げてきた。


僕は、また避けた。それが何回も続き、いろんな方向からボールが飛んできてそれを避け続けた。


僕の様子を見たアンリさんが、

「ジュントム、大丈夫か?無理しないほうがいいよ。もうやめた方が……」

と心配してくれた。


でもまだ体力があり、やれると思った僕は、

「はい。大丈夫です。」

と言い、額から流れた汗を手で拭いた。

そして、内野からヤンキー系の男の子が投げたボールをキャッチした。


ヤンキー系の男の子とその友達は、僕がボールをキャッチしたのを見て、驚いた表情をしている。


今だ。そう思い、僕は思いっきりボールを投げた。


すると、ボールが相手のチームに当たり、そして、跳ね返り一回、二回と違う人に当たった。

トリプルアウトだ。周りのみんなは、口を開けて固まっていた。


僕も信じられなかった。こんなこと初めてだから。ただ、僕は相手チームを一人だけでも当てようとしただけなのに。


すると突然、ヤンキー系の男の子が笑い出して僕に言った。

「やっぱりお前ただものじゃねーや。正直驚いたぜ。お前の実力は、本物らしい。コントロールもさすがだ。俺、お前のこと気に入ったよ!後でメール交換しようぜ!もうお前を狙わねーよ。」


「あっ………はい。」

僕は、何となく返事をした。

良い人なのか悪い人なのか分からない。でも気に入ってくれたことには、ちょっと嬉しかった。


「さあ、試合を続けようぜ!」

そうヤンキー系の男の子が言い、その子の友達とこそこそ話していた。


作戦会議をしているのかな?そう僕は思った。


 

  あれから一分ぐらい時間が経ち、ヤンキー系の男の子がボールを持って構えた。


あの子は、僕を狙わないって言ってたな。と僕は思い出し、あの子を信じた。


ボールが投げられた。ボールは、あの子の言う通りに僕には来なかったが、横にいた気弱そうな男の子の顔面に当たった。


その男の子は、涙目になっていた。


すると、相手チームの内野から笑い声が聞こえた。

その正体は、ヤンキー系の男の子とその子の隣にいた男の子だった。


「ナイス!顔面キャッチ!(笑)」

ヤンキー系の男の子が笑いながら言った。


それに続いて隣にいる男の子が

「おいおい。ちゃんと避けなきゃダメじゃん(笑)」

と笑いながら言った。


「ごっごめん……。」

と気弱そうな男の子は、涙目になりながら言った。


僕は、たぶん事故だなと思いその光景を眺めていた。


気弱そうな男の子は、当たったから出ようとしたのかすぐに外野の方へ向かった。


すると突然、「おい!(怒)」と怒鳴りつけるような声が聞こえた。ヤンキー系の隣にいた男の子だ。


その子は、内野の線ギリギリまで行き、気弱そうな男の子の胸ぐらを掴んだ。そしてこう言った。

「お前、まだアウトじゃないぞ!」


アウトじゃない?どう言うことだろう?僕は疑問に思った。


すると、ヤンキー系の男の子が、

「コーチ、首から上にボールが当たってもセーフですよね?」

とコーチに尋ねた。


コーチは、首を縦に振った。


そうか、顔に当たってもセーフなのか。と僕は納得した。


気弱そうな男の子は、それを受け入れて戻った。


ボールは、たまたま外に転がり、相手チームの外野が拾った。


その男の子が投げようとした瞬間、ヤンキー系の男の子がその子に何かしらの合図をしていた。


その合図が分かったのかその男の子は、ニヤリと笑い、ボールを投げた。


ボールは、気弱そうな男の子の頭に強く当たった。


偶然なのかなと僕は思った。


だが、その後ヤンキー系の男の子が、もう一度強く投げて、気弱そうな男の子の顔面に当てた。


その子の顔は強く当てられたせいで赤く腫れていた。


僕は、この時気づいた。これは偶然なんかじゃない。わざとその子に当ててるのだと。僕は、その子を助けようとして、歩こうとした。

だが、ボールを何回も避け続けたせいで、両足が痺れてつってしまった。喋れないほど痛い。

だから、アンリさんに一緒に行ってもらおうと思ってアンリさんの方向を見た。


アンリさんは、下を向いて、絶望したような顔をしていた。


僕は驚き、慌てて周りを見渡した。


すると、そこには、気弱そうな男の子の様子を見て、クスクス笑う人が十人ぐらいいた。


頭おかしいのか?それとも苦しんでいる様子を見るのが楽しいのか?僕は、この時怒りが湧き出た。


しかも他の人は、みんな下を向いて見ないようにしている。


相手チームの外野にいたサフィアさんは、頭を抱えて下を向き、アンリさんと同じ絶望したような顔をしていた。


しかも、コーチは、前を向いてぼーっとしていた。


たぶん見て見ぬふりをしているか、あるいは、何かあるのかも知れないと僕は、察した。


気弱そうな男の子が、何回も顔や頭にボールを当てられ、ついに鼻から血を出していた。


もう僕は、この状況に耐えられなかった。だってこれ以上、苦しんでいる姿を見たくなかったから。

足のつりも少しはマシになり、喋れるようになった。だから僕は、勇気を出してもう止めるように言おうとした。


その時だった。

「もう、やめて!!!」

僕より先に止めるように言った人がいた。

その人は、今日、転校してきた女の子だ。名前は確か…そうだ。マノン・ニコルだ。マノンさんは、相手チームの外野から 内野まで無理やり向かった。


「何お前勝手に入ってきているんだよ?まだ試合中だぞ。」

ヤンキー系の男の子が、マノンさんに向かって言った。


だが、マノンさんは、そんなことどうでも良いと言うようにヤンキー系の男の子に

「何で、何回もあの子の顔や頭にボールを当てているの?あの子が苦しんでいる姿を見るのが楽しいの?」

と言った。


そしてみんなの顔を見て、

「みんなもこの状況、おかしいと思わないの?知らないふりをするなんて卑怯だよ。これっていじめだよね?私、もうこの状況、見てるだけで辛いよ。」

と言った。


なんて勇敢な子なんだと僕は思った。


周りのみんなは、驚いたような顔をしていた。


マノンさんは、気弱そうな男の子のそばに行き、大丈夫かどうか声をかけた。


だが、気弱そうな男の子は、何も言わなかった。


ヤンキー系の男の子は、その様子を見て、

「おい、てめぇ、さっきから何しているんだ?なんであいつに声をかけている?」

と言った。


すると、マノンさんは、ヤンキー系の男の子を睨みつけ、そして近くに歩み寄った。


次の瞬間、僕は、衝撃的なものを見た。


なんと、マノンさんは、ヤンキー系の男の子の顔面に向かって平手打ちをしたのだった。


凄いと思ったが逆に心配だなと僕は思った。

だって見た目でヤンキーっぽい男の子にそんなことしたら逆に反撃されるんじゃないのかと思ったからだ。


僕の考えは、的中していた。ヤンキー系の男の子は、怒った顔で鋭くマノンさんを睨みつけたからだ。


「何しやがるんだこの野郎!!」

ヤンキー系の男の子は、そう言い、拳を振り下ろそうとした。


これは、やばい。どうしよう。僕は、目をつぶった。


だが、音はしなかった。僕は、恐る恐る目を開けて、何があったのか確認した。


そこには、殴りかかろうとしたヤンキー系の男の子の手を止めていた金髪の背の高い女の子がいた。


「もうやめましょうライアン。こんなことしても面白くないわよ。」

とその女の子は言い、ボールをポンとヤンキー系の男の子の方においた。すると、


「……分かったよ。」

とヤンキー系の男の子がボソッと言い、腕を下ろした。


金髪の女の子は、マノンさんに向かって、

「うちの彼氏がごめんなさい。私からしっかり言っておくから。」

と言った。


マノンさんは、軽くうなずいた。


そして、金髪の女の子は、コーチの目を見て、何かしらの合図を送った。


コーチは、それを察して笛を吹いた。


「試合終了だ。五対五で引き分け!お前ら、よく頑張ったな。もうすぐチャイムが鳴るから、各自解散!」

そうコーチは言った。


みんなは、各自の荷物を持ち、ゾロゾロと体育館から出て行った。


僕は、アンリさんに足がつったことを言い、アンリさんの手を貸した。


横にサフィアさんが来て、アンリさんと二人で今日の僕の姿を褒め合いをしていた。


僕は、ものすごく恥ずかしかった。


そこに突然、さっきの金髪の女の子が、来て僕に近寄った。


「フラムスくん、今日のドッジボール、本当に素晴らしかったわ。やっぱりフラムスくんは、凄いのね。うふふ、なんかありがとう。」

と僕に手を振りながら言い、金髪の女の子は友達の居る方へと戻って行った。


なんだろう、あの子が凄く特別な存在だなと感じる。パッと見て友達も多そうだし、存在感が大きい。まるで、みんなを引っ張って動かせる王様みたいだ。僕は、そう思った。


金髪の女の子が去った後、サフィアさんが、僕に

「良かったな。あいつに気に入られて。お前は、幸運なやつだよ。」

と落ち着いた声で言ってきた。


僕は、サフィアさんの言葉になぜかピンと来なかった。

その言葉に疑問を抱きながら僕は、サフィアさんとアンリさんと一緒に体育館を後にした。

 


 あの言葉の真実は、まだこの時の僕は知らなかった。いや、知らない方が良かったのか?まあいいや。



※(マノン視点)


 私は、「放課後に体育館裏に来てほしい。」とセリーナちゃんからメールが来て、今向かっている。本当に広い敷地だから迷いそう。


 やっと体育館の裏に着いた。そこには、木のそばにある石に立っているセリーナちゃんとそれを囲んでいる九人ぐらいの女の子が、こっちを睨みつけていた。


そして、セリーナちゃんは私の側まで近寄り、勢いよく私の胸ぐらを掴ながら、

「お前、校則破ったな…ふざけるなよ!ターゲットを庇い、あわよくば私の彼氏に平手打ちしたわね。」

と言って私に向かって平手打ちをした。


私は何がどうなっているか分からないままその場で崩れ落ちた。すごく痛い。私は、セリーナちゃんの顔を見た。


セリーナちゃんは、ニヤリと笑い見下しながら私に言った。

「いい気味ね。私の彼氏は、私自身。つまり、私を傷つけたことと同じことよ。だからお前は、もう私達のグループから抜けて。ムカつくから。一緒に居るだけで嫌なの。後、明日からあなたは、ターゲットになってもらうわ。これは命令よ。従いなさい。」


私は、全てを理解した。「はい。」と言うしかなかった。私は、泣くこと以外何も出来なかった。


周りの女の子は、そんな私を見て笑っていた。

前回の後編です。

このように話ごとに前編と後編で分けながら進めていきます。

これからも小説を出していきますのでぜひ、コメントと評価をよろしくお願いします。

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