1 僕の学校 これから始まる僕のストーリー 前編
(プロローグ)
四ヶ月前
「この学園は全て私の所有地。誰も手を出す事なんて出来ない。そうよ、私こそが全てなの!私が作った校則や命令に従わなければいけない。
もしも従わなければ...どうなるか...わかっているのよね?どうして私の顔にボールを当てたの?」
「すみません。わ、わざとじゃないんです……ごめんなさい、本当にごめんなさい。許してください。」
授業終わりの夕方、僕はそう言いながら夕陽が照らす教室の中で優雅に椅子に座る王に向けて床に頭がねじ込むほど土下座した。
すると、王が椅子から立ち上がり、僕の前髪を強く引っ張りながらこう言った。
「……土下座をして簡単に許してもらえると思っているの?お前は私を怒らせた。お前は今日からみんなの的よ。次のターゲットが出てくるまでね。これは命令よ。」
「………はい。分かりました。」
王に冷たい目で見つめられた僕はそう言うしかなかった。
僕の周りを囲んでいた王の部下達は、僕の様子を見ながら高々に笑っていた。
お願いだ。誰でも良い。王を倒してくれ!!そして王政を無くしてくれ!
こいつらに人をいじめ、苦しめた屈辱を与えてくれ!どうか……
この僕の願いは、少しも叶うことはなかった。だが、この願いがだんだんと想像していたものよりも大きなものになっていくことをこの時の僕は思いもしなかった。
四ヶ月後
※(ジュントム視点)
今日から学校。新しい学校。今でも夢のように感じる。日差しのいい天気、不満はない。
そう思いながら、僕は家を出て自転車に乗り、学校へ向かった。
僕が今から向かう場所は、あの超有名な国立国際学校【ジェントリ学園】だ。噂によれば、その学校は、校舎がとても広く、各国の学生と充実した生活を過ごすことが出来るらしい。また他の学校とは違う特別な経験ができるらしい。
まあネットで調べたことだけどね。あぁ今からでも楽しみだな。
この時の僕は、この学校が実は恐ろしいことになっていることには気付かなかった。
25分ほど自転車で走ると、生徒達の姿が見え、ついに学校へ到着した。
僕が思っていた以上に広い敷地で校舎は一つではなく幾つも並び、外見が城みたいでそれはまるで一つの王国に来たかのようだった。
僕は正門近くの信号を渡った後、自転車から降り、金色のゲートを潜った時僕の方へ向かってくる人影が見え、声が聞こえた。
「おはよう。もしかして君、転入生?」
白衣を着た若い女性が、僕に話しかけて来た。
「はい。今日からこの学校に転入するジュントム・フラムスです。どうして僕が転入生って分かったのですか?」
「学園の腕章を付けていないところと雰囲気で……おっと自己紹介が遅れたね。私は、クレア。ここで養護教員をやっています。」
養護教員?多分保健室の先生だろう。
「ジュントムくんで合ってる?」
「あっはい。」
「この後書類とか渡さなきゃいけないから職員室まで案内するよ。」
「はい!ありがとうございます。」
僕はそう言い、自転車を駐輪場に置いてクレア先生と一緒に職員室に向かった。
何故かクレア先生の左手首に包帯が巻かれていたが、僕はその手首についてクレア先生に質問しないで置こうと思った。
僕は、校門入ってすぐにある北館の中の職員室に行き、クレア先生に入口前で待つように言われた。
僕が待っている間クレア先生は、職員室に入り、書類等を僕に渡した後、
「たくさん書類あると思うけど我慢してね。私はそろそろ戻るよ。後で君のクラスの担任の先生が来てくれるから。私は基本的に保健室にいるから怪我した時やしんどい時、後は何か悩み事がある時は遠慮なく来てね。じゃあ頑張ってね!」
と言いながら職員室から離れていった。
担任の先生を待っている間チャイムが鳴り、僕は生徒達が教室に戻っていくのを見た。
すると、職員室からいかにも[先生]って感じの眼鏡をかけた男の先生が僕に話しかけてきた。
「初めまして。僕は、君のクラスの担任、フランク・イーサムです。今から君を教室まで案内します。後、これは僕のクラスの腕章。腕章なんて珍しいでしょ?この学園の校章でもあるから学校に行く日は服に着けといてね。」
「分かりました!これからよろしくお願いします。」
そう言うと僕は、フランク先生の後をついていった。
そして先生から配られた紫色の学校のシンボルマークがプリントされている腕章を左腕に着けた。
エレベーターで4階まで行き、先生が【S組】という教室の前で立ち止まった。教室の中からは騒がしい音や声が響いていた。
「ここが君の教室だよ。...まぁいつも騒がしいからあまり不安にならないで。」
「あーはい。」
「じゃあ僕が合図するからそれまでここにいてね。」
「わかりました!」
僕はそう言うと、先生は、教室に入って行った。
「お前ら早く席に座れ!チャイムなってるぞ!!」
先生の大きな怒鳴り声と生徒達が席に座る音がよく聞こえる。よく響くんだな。
「おはよう。今日は、お前らに話がある。」
「先生に彼女できたの?」
女の子の声が聞こえる。後からどんどん歓声が上がってくる。結構賑やかだなぁ。
「出来てません……そういう話じゃなくて、今日からこのクラスに転入生が来るって話だ。」
「転入生、なになにどんなやつ?男、女どっち?」
男の子の声が聞こえる。
「それは、直接会った方が早いな。じゃあ、入って来てください!」
呼ばれた。いったいこのクラスには、どんな子がいるのだろう。友達ができると良いけど。
そう思いながら僕は、ゆっくりと教室のドアを開けた。
教室に入ると、ざっと40人程のたくさんの生徒の顔が目に入った。いかにもチャラそうな子、おしゃれをしていてリーダー的な子、眼鏡をかけて賢そうな子など個性的な子がいるなと思った。僕は先生に名前を書くよう言われ、黒板に自分の名前を書いた。
「じゃあみんなに自己紹介よろしく。」
先生にそう言われ、僕は自己紹介をした。
「ジュントム・フラムスです。この学校に来てまだまだわからないところだらけですが、みんなに会えるのを楽しみにしていました。どうぞこれからよろしくお願いします。」
自己紹介を終えた後、大きな拍手があちこちから聞こえて、「よろしく!」と言う声もたくさんあった。
みんなと仲良くなれそうだなと思い、少し気待ちがホッとした。
「ありがとう。とっても良い自己紹介だったよ。じゃあ席は……あそこに座ろうか。」
先生が指を差した席に僕は、荷物を持って座った。
すると、右隣の席から誰かの手が伸びたので僕は隣の席を見ると、黒い髪の女の子が僕の方を見ていた。
「よぉ!俺、サフィア・スパークル。よろしくな!分からない所があったらなんでも訊けよ!」
「こちらこそよろしくお願いします!」
僕は、そう言って握手をした。
俺と呼んでいるから、一瞬男の子だと思ったけど、二つの髪を結んだ髪型を見て、改めて女の子だと思った。この子は今までに感じたことのない不思議な魅力を感じた。仲良くなりたいと僕は思った。
フランク先生が、もう一人転入生がいると話したためすぐに前を向いた。
その転入生は、女の子だった。赤毛で背が小柄でバイオレットの目をしていていた。その子の自己紹介が終わり、その子が席に着くと同時にチャイムが鳴った。
一時間目は、数学の授業だった。授業の内容は、少し難しかったけどスパークルさんがいっぱい教えてくれて、なんとか内容が理解出来た。担当が、フランク先生でとても分かりやすかった。後でスパークルさんから訊いたところ、フランク先生は[歩く参考書]と呼ばれるぐらいこの学校では有名な数学の先生らしい。
休み時間に入り、スパークルさんが、話しかけて来た。
「ジュントム、もし良かったら昼休みに一緒に学校回らないか?」
「はい。ありがとうございます。もちろん良いですよ。」
僕がそう言った時、スパークルさんの近くに紫の髪の男の子が来た。
「やぁ!ジュントム!俺、アンリ・トワイライト。よろしく!早速だけど体育で柔軟する時に一緒にやらない?二人ペアを作るんだって。」
僕は、驚いた。こんなにあっさりと僕とペアを組もうと言う子がいるなんて。すごく優しい子なんだなって思った。
スパークルさんとアンリさんが、仲良く話しているのを見て、僕は、質問した。
「二人ってとっても仲が良いですね。友達なんですか?」
そう言うと、スパークルさんが、当たり前だと言うような顔をして
「うん。友達だ。同じグループのリーダー、副リーダーだからな。」
と言った。
「グループ?」
僕がそう疑問に思っていると
「そうだ!この学校やこの街の悪いやつに天罰を下すのが俺達の役目だ。」
スパークルさんがそう答えてくれた。
そしてアンリさんも首を縦に大きく振った。
「すごい!カッコいいです!」
僕は、心から喜んだ。
「良かったらお前も入らないか?お前ならこの役目に向いている気がするんだ。」
スパークルさんがそう言った。
僕は、本当に嬉しかった。こんな僕でもグループに入れてくれるなんて思わなかったから。
「僕が二人のグループに入っても良いのですか?」
そう訊くと二人が同時に「もちろん!」と言いい、笑顔を見せた。僕も思わず笑顔が溢れた。
昼休み、僕は、スパークルさんと一緒に校内を周った。噂通り、学校はものすごく広かった。
僕の今居る北館校舎は四階建てで上の二階が教室、下の二階が教室以外の職員室や実験室などがあり、とても新しく綺麗で、一階の食堂のご飯も美味しそうだった。それに、敷地の奥にはプライベートビーチまである。
僕は、改めてここは夢ではないかと思った。ほっぺを思いっきり引っ張り夢かどうかを確認する。
やっぱり夢じゃなかった。めちゃくちゃ痛い。
僕の行動を見ていたスパークルさんは、「面白いやつだな!」と言い笑っていた。
ちょっと自分でも恥ずかしかった。
その後食堂へ行き、スパークルさんがおすすめだと教えてくれたチキン南蛮定食を食べた。
味は食堂のごはんとは思えないほど味がしっかりしていて、口の中でとろけそうなほどおいしかった。
スパークルさんも同じものを食べていた。
一通り食べ終わった後、スパークルさんから質問された。
「ジュントム。なんで俺にまで敬語で話すんだ?」
「えっと……それは……」
「俺らもう友達なんだから普通に喋ってもいいんだぜ。」
「分かっていますけど、年上の人には敬語を使わないとって思って。」
「年上って…お前いったい何歳だ?」
「えっ今年で13歳です。」
「13!?本当に俺より年下だ。」
「スパークルさんは……?」
「……15だ。それより、お前転入していきなりS組に行けるなんてびっくりしたよ。」
「えっどうしてですか?」
「えっまぁ、S組って学力を中心に特別に才能のある生徒が学校側から推薦されて入れるクラス。年二回あるクラス替えでも一人入れるか入れないかでそう簡単には入れないんだぜ。転入初日からS組なんてお前一体何したんだ?」
僕は、この時凄く驚いた。僕は、ただお母さんからこの学校に行きたいかどうか訊かれて、頷いただけなのに。僕何も試験受けてないのにどういうこと?
でも、スパークルさんもS組だから天才だよな〜褒めてあげよう。
「そう言うスパークルさんも凄いですよ!掲示板で見ましたけど学力テスト、校内で八位だなんて天才です!」
僕は、心に思ったことをそのまま言った。
すると、少し頰を赤くさせたスパークルさんが言った。
「まぁあれは、ただのまぐれだよ。前の成績が悪かったから死ぬ気でやったんだ。そんなことよりお前に言っておきたいことがあるんだ。」
言っておきたいことってなんだろう?
「敬語で話すことは、お前の好きなようにしろ。でも、俺らもう友達なんだから・・・・俺のこと気軽にサフィアって呼んでいいぞ。」
スパールさんは笑顔でそう言った。
「分かりました。サフィアさん!」
僕は、ちょっと照れた。女の子の名前をファーストネームで呼ぶなんて初めてのことだから。
サフィアってなんだかいい名前だな〜と僕は思った。
食堂を出て、サフィアさんと少し話した後、サフィアさんは、次の授業の準備のために更衣室へ向かった。
そして、僕は教室に向かった。
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