作ってはいけない半熟卵ご飯
これは恐ろしきものを作り上げた実話である。
その日、私は小説を書きながら録画していた地方ローカル番組を音楽代わりにし、スマホで動画をうろちょろしながらお菓子を食べていた時だ。
私の目にある動画が目に止まった。
それは半熟卵の作り方。
普通の作り方は茹でて作るだろう。だが、その動画では半分蒸していたのである!
鍋に1センチ程水を入れて沸騰したら卵を投入、後は蓋をして四分、火を止めて三分。それだけで見事な半熟卵が出来上がっていた。
私は沸騰させる途中で作る気が無くなり、適当に時間を計って、ハードなボイルドのゆで卵を作る人だ。
そんなずぼらに神の世界創造を見たような感動だった。
だって沸騰するのが早いの。
そして速攻作る。
IHの火力が弱かったせいか予想より黄身が固まってなかったが、卵が綺麗に剥けたことに感動した。
動画では醤油とコチジャンに漬けていた。
だが、私はすぐに食べたかった。(お菓子食べていたのに)
この美味そうな半熟卵をどう食べるか……。そうだ!
私は冷凍していたご飯をレンジでチンし、どんぶりによそう。
その上に塩昆布をさらさらとかけ、中央を窪ませて半熟卵を置いた。
箸で卵を十字に割るとトロリと黄身が、ご飯と塩昆布に染み込んでいく。
その十字に割れた卵に醤油をタラリとかけた。
これは美味いものだ、見ただけでわかる。
だが、食べる前に神は一つの天啓を私に与えてくれた。
「ごま油足せばもっと美味くなるんじゃね?」と
足した。そしてがっついた。
神の言葉は正しかった。
トロリとした黄身が、硬くなった白身と塩昆布とご飯を優しく包む。ごま油が片手間にはない味の深みを出してくれた。
あっという間に食べ終えた私は、どんぶりにご馳走様と、手を合わせた。
食材に、偶然見た動画に、火力不足でご飯に合う半熟卵にしてくれたIHに、ごま油を遣わしてくれた神に。
晩御飯前の罪悪感に……あ!
ネギ入れたらよかったーっ!?