塩と肉
商品名:噛めば噛むほど味が出る 乾燥させた生ハム
種別:生ハム加工品
メーカー:セブンイレブン
今回の商品はまだ発売から日が浅く、知らない読者も多いと思うので、ここで紹介させていただく。
生ハムとは過熱する工程を含まないハムのことであり、例えば以前ここで紹介したおやつカルパスなどとは食感に大きな違いがある。
噛めばじゅっと塩気を含んだ肉汁が広がるのは同じだが、よく味わってみるとその肉汁にも違いがあるのがわかるだろう。
カルパスなどは燻製されているせいか、肉の味そのものを強く味わえるのに対し、生ハムは塩気の中に肉の旨味が溶けだしている。乱暴に言ってしまうと、肉を味わうのが燻製肉で、塩を味わうのが生ハムといってよい。ここら辺は好みの話になるだろう。
小さなキューブ状になっているが、この小さい中に塩気を良く閉じ込めているものだから、酒が無いととても食えぬ。とても食えぬが、飲みながらとなると、とんと酒が止まらなくなるのだ。
生ハム自体を食う手が止まらないのではなく、酒のほうが止まらなくなるのだから、つまみとしての完成度には驚かされるものがある。肉ではなく塩を味わうと言った意味が、ここにある。
惜しむらくはその形状である。
生ハムといえばよく薄くスライスされたものを見るが、あれは脂身と肉の部分をバランスよく食わせるための切り方なのだ。乾燥させた生ハムのような四角い形状では、たまに脂身が固まりになっていることがあるし、筋にあたることもある。
ではなぜこの形状にしたかということだが、この値段で美味い生ハムを食わせようと腐心した結果なのはもちろんだろうが、私はこの料理人が呑兵衛だったのではないかと思っている。
生ハムはパンや野菜にスライスされて挟まれるのが相場であるが、それでは料理が主役になってしまう。だがこの形状ならばまさか料理に使うわけにもいかず、ちびちびとこれのみをかじりながら酒を飲むことになる。即ち、酒がメインになるのだ。
酒飲みの歴史は言い訳の歴史でもある。
コストのために妥協したという言い訳でこの形での商品化にこぎつけたのだとしたら、この料理人はなるほどなかなかの老獪さである。