醤油の味
商品名:ポテトチップス 九州しょうゆ
種別:スナック菓子
メーカー:カルビー
ポテトチップスがスナック菓子の王であることに異論はないと思うが、その中でもうすしお味とコンソメパンチは二大巨頭である。
だが、ポテトチップスを取り上げるにあたって一番に書くべきは、そのどちらでもない。
地域限定ということを差し引いても、一番に紹介すべき味は、九州しょうゆである。
元来地域限定味というものは地域へ斟酌したものであり、味よりも出すこと自体に意味があるものである。相手になるのは飽きや観光客であり、物珍しさから手に取ることはあれど、それが主になることはない。白しょうゆだのお好み焼き味だのと食えぬとまでは言わないが、結局は定番のうすしお味へと戻ってくるものである。だが、その唯一と言っていい例外が、九州しょうゆなのである。
近年でこそ九州の醤油の甘さは全国に知られることになったが、それらはすべてネットの賜物だと思っている。なんせ九州民自体はそれが普通と思っているために深く説明はせず、味というものは口では説明しきれぬものだから、現地に赴かなければわからないものであり、テレビで紹介されたとしても視聴者が抱く疑問まで深くは説明すまい。
それらの要件がうまく作用して、甘口醤油を九州が独占し続けていたのである。
熟成度合いと甘みについても千差万別であることから、自分の口に合う醤油は自ら探すしかないのだが、関東にいてはその味も香りも真に味わうことはできまい。
昔は醤油と言えば黙っていても瓶に入れたものをさすが、現代ではプラスチックボトルである。これが薄さのせいかプラスチックの特性か、味も香気もまるで水で薄めたようにすぐに飛んでしまう。九州内で食べてもそうなのだから、関東となると何をかいわんやである。
話が逸れたが、とにかく深みのある甘辛い醤油の魅力をまっすぐに味わえるのが、ポテトチップス九州しょうゆなのである。
カルビーからは様々な九州しょうゆ味の製品が出ているが、ポテトチップスを超えるものは未だ出ていない。
かっぱえびせんやじゃがりこのような厚みのある形状ではうまくない。堅あげポテトは固いぶんだけ、口内での味の広がり方にけちがつく。薄さにより濃い味付けが口中に広がることが要点なのである。
味の濃さからビールにあうと思われがちでそれは確かに正しいのだが、意外にも焼酎にもあう。
逆にチューハイなどの、自分の味を主張してくる相手とはよくない。また、ウイスキーの香りともぶつかる。芋の香りとは喧嘩せず、オークの香りと喧嘩をするというのも不思議な話だが、考えてみるとこれは当然である。醤油を作る人間と芋を作る人間が近しい志向を持っていたわけで、やはり土地のものには土地の酒ということなのだ。
スナック菓子の常としてはやはり、指先が汚れるのを気にせず手で食らうのが礼儀であろう。食後には舐めておけばよいのだ。