よい菓子とうまい菓子
商品名:マルセイバターサンド
種別:洋菓子
メーカー:六花亭
商品名:ガトーレーズン
種別:洋菓子
メーカー:ブルボン
古来世間でいう「うまい菓子」というものに、マルセイバターサンドがある。ビスケットの中にバタークリームとレーズンを挟んだこの菓子のルーツがどこにあるか、私は不勉強で知らぬのだが、六花亭のものがかなりの歴史と人気を持つ菓子なのは間違いない。
レーズンを入れるとなるとどうしてもそちらが主役になりがちであるが、六花亭の素晴らしさは力強いバタークリームにある。
クリームと具が互いを引き立てあうのはよくあるが、互いに主役の座を奪い合うほど強く主張する菓子というものにはなかなか出会えない。まさに北海道の料理人のプライドが感じられる部分である。
もちろんビスケットも一切手抜きがされていない。どっしりとしたバターの味を支えるには通常の生地ではだめで、重みが必要なのだ。レーズンまで挟んでいるからなおさらである。
温もると味が落ちるので、よく冷やして食うことをすすめるが、札幌で食うなら問題にならない。
総じて土産として大人気なのも頷ける完成度であり、素晴らしい味だ。
ただ、「よい菓子」となると様々な要素が絡んでくるので、単純に美味さだけ決めるわけにはいかない。これには例えば、ブルボンのガトーレーズンがある。
こちらもマルセイバターサンドと同じような構成ながら、中身はまったくの別物である。軽いクリームとアクセントとなるレーズン、そしてふわりとした軽さの残る生地。
これで完璧に全体の調和が取れているのは、さすがブルボンである。
料理に限らず、気合を入れてうまいものができるのは当たり前であり、ブルボンの優れているところはまさにここである。
主婦が冷蔵庫にある余り物でさっと酒のつまみを作り、たいした手間はかけていませんよという顔でお出ししてくる。それが当然のごとく美味い。これが大切なのである。
世の人々は案外、身近にある美に無頓着のようだ。百貨店などでたまに開かれている北海道展を待たずとも、近所のスーパーにはガトーレーズンがある。
そしてガトーレーズンの味を知るからこそ、マルセイバターサンドのどっしりとした重厚感が引き立つのである。
味の違いは財力の違いでもあるが、だからといって毎度マルセイバターサンドを食いたいかといえば、それも違う。どちらも賞味して違いを楽しめるようにならねば、食通とはいえぬ。
最後に注意点だけ述べておくが、マルセイバターサンドの包装の開けづらさだけはいただけない。単に開けづらいだけならまだしも、失敗するとビスケットの角がぼろぼろと崩れるのである。
酸化を防ぐためにぴったりと包装しようとする気持ちは伝わるのだが、惜しいところである。
味については文句のいいようがないだけに、実にもったいない。




