第一席の美味さ
商品名:角餅 (しょうゆ)
種別:米菓
メーカー:丸彦製菓
おかきの美味さには様々な要素がある。第一が米なのは言うまでもないが、タレは何を使うのか、醤油か塩か。醤油なら濃さは、甘さはどれくらいか。焼き具合、固さはどうか。大きさは。形は。
あげていけばきりがないし、加えて手に入りやすさや値段の問題もある。いくら美味くても手に入らねば意味はない。
舌というものは生きてきた経験で作られるものだから、好みというものは年齢や性別はもちろん、今まで食してきたものも含めて千差万別である。
だが、それらを踏まえてなお、これこそ一等席に坐すべきといえる最高のおかきがある。角餅 (しょうゆ)だ。冒頭で述べた諸々の条件を完璧に満たしており、これ以上の味のおかきを私は知らない。
角餅 (しょうゆ)は大袋で詰められており、ひとかけらは子供の掌ほどの大きめのおかきだ。固めに焼かれた生地には醤油タレが塗られているが、その濃さと辛みが他のおかきとは一線を画している。
かぶりつくと小気味よい音をたててぼろっとこぼれるのだが、落ちたくずを気にする間もなく、口の中にじゅっと醤油の旨味が染み出してくるのである。このタレがじつに美味い。醤油のみで味付けされたおかきは大抵、醤油一色の味に落ち着くのだが、角餅 (しょうゆ)は味の深み、広がりが何層にもなっているのである。五種類の醤油をブレンドした特製のタレということだが、一流料亭の味に勝るとも劣らない。
タレだけかと言われるとそれはまったくの的外れで、米がしっかりしているからこそ、醤油を美味く食わせられるのである。厚みや焼き加減にも料理人の腐心がうかがえる。生地がもう少し薄ければ、醤油の味が勝ちすぎて、凡百のおかきになっていたことだろう。
お徳用と銘打ち、無選別で割れたものも入っているのだが、それがまたこの角餅の粋なところである。大小のおかきをあえて混ぜることで醤油の染み具合に若干のばらつきを出しており、結果飽きが来ないままに一袋を食べきってしまうという算段だ。
製造元の丸彦製菓は、栃木県にある。米所と名高い新潟ではなく、栃木県でこれほどの味が生まれたことには驚かされるが、逆に米所を打ち負かそうとする気概がこの味を生んだのかもしれない。
どの酒にも合うのだが、酒と食おうとするとどちらが主役かわからなくなるほどである。未食の方はぜひお試しあれ。