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勇者から秘湯屋に転職します  作者: 藤泉都理
参 第一の首都の藤篇
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心晴




 十二歳の時に藤色の温泉を浴びてしまい、骸骨になってしまった心晴こはる

 それから八十三年間。

 寿命を迎える九十五歳までの間、ずっと、骸骨の姿で生きて来た。

 骸骨になって隠れて生きるわけでもなく、堂々とこれまで通り温泉屋を手伝い、温泉屋を継いで、後継者に引き継いだ後も手伝い続けた。

 ずっとずっとずっと。

 本人の希望通り、温泉に密接に関わり続けた人生であった。




 憎くないのか。

 三樹矢みきやは心晴に尋ねた事がある。

 一度だけ。

 肉体を持っている時の素晴らしい笑顔を知っていたから。

 骸骨になってその素晴らしい笑顔がなくなった事に、いや、笑顔だけではない。多くのものを失っただろうに、笑顔を、明るい声を絶やさない心晴に疑問を抱いたのだ。

 ああ、分かっている。

 見栄を張っているわけでもないのだろう。

 分かる。

 あれは本当に心の底から笑っている顔だった。

 肉体を失う前と変わらず。


 憎いって何が。

 心晴は笑っていた。


 温泉が憎くないのか。

 温泉が憎いってどうして。

 おめえ様をそんな姿に変えちまっただろ。

 あんただって同じ姿じゃない。

 おいらは好きでこの姿になったんだ、でも、心晴は違うだろ。

 違うけど、どうでもいい、動く身体があるならどうでもいい。


 心晴は笑っていた。

 眩すぎて近寄れないと思っていたけれど、なんて事はない。呆気なく近寄れた。

 疎外する笑顔ではなかった。

 みんなを幸せにする笑顔だった。




 ああ。ああ、そうか。

 骸骨になればみんな幸せになれるんじゃないか。











(2025.1.19)




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