第9話
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「ルルア様、早速そのお金を持って町を巡ってみましょう!!」
「い、いいのかなぁ。」
「いいんです!!まずは服でも買いましょう、ルルア様に相応しい服を見つけに行くのです!!」
「う~ん……わかった。」
テンタは山小屋でボクに見せてくれたように腰から消えて、首元から細い触手が顔をのぞかせる。
「ここからは念のため、ルルア様の脳内に直接語り掛けます。」
「の、脳内に?」
『はい、このように語りかけます。』
疑問に思っていると、突然テンタの声が耳からじゃなくて頭の中に響いてきた。
「えっ、え!?これどうなって……。」
『口に出さなくても、ルルア様が思ったことを読み取って話せますので、試しに私の名前を心の中に思い浮かべてみてください。』
「う~ん……。」
『テンタ。』
『はいっ!!確かに聞こえております。』
『すごっ……じゃあこんな感じで会話すればいいんだね?』
『その通りでございます。ではこのまま服屋に向かいましょう。』
そしてテンタと頭の中で話しながら、表通りの人の多いところに出て服屋を探す。ボロボロの服を着てるから、他の人からの変なものを見るような視線がすごく痛い。
『うぅ、なんかすごく見られてるような。』
『ルルア様の魅力にひきつけられているのでしょう。』
『そうじゃないような気がするけど……。』
そんな視線にさらされながら、何とかボクは服を売っているお店の前に辿り着いた。
「多分ここ……かな。」
『早速中に入りましょう!!ルルア様に似合う服があればよいのですが……。』
お店の中に入って、買い物かごを手にしながら並べられている服を眺めていると、目にも止まらない速さでテンタが一瞬飛び出しては、かごの中にポイポイと服を放り込んでくる。
『こ、こんなに買うの?』
『予備の服は必要ですよルルア様。それに下着も買わないといけませんし。』
『そ、それは良いんだけど。これとかさ、女の子が着るやつじゃないかな?』
『ルルア様ならお似合いでございます!!』
『う、う~ん……そうかなぁ。』
テンタの服選びのセンスに少し疑問を抱きながら、買い物を続けていると、少し目つきの怖い女の店員さんに声をかけられた。
「そこの少年。」
「へっ?ぼ、ボク?」
「あぁそうだ。ずいぶんボロボロの服を着ているようだが、服を買う金はちゃんと持ってきているのか?冷やかしなら帰ってもらうぞ。」
「お、お金は……あ、あります。」
「ほぅ?なら、一度そのかごの中身を会計しようか。それでキミの言葉が嘘じゃないか確かめさせてもらう。」
その店員さんはかごの中に入っていた服の値段を一つ一つ確認していき、合計の金額を紙に書いてボクに提示してきた。
「全部で金貨1枚と銀貨50枚だ。さ、払ってもらおう。」
「えっと……それじゃあ金貨2枚でお願いします。」
ボクが金貨を2枚取り出すと、その店員さんはすごく驚いていた。その反応は当然で、金貨なんてボクみたいな子供が持っているようなお金じゃないから。
「こんなお金、どこで手に入れた?お小遣いにしたってずいぶん多いぞ。見たところ貴族の子供ってわけでもなさそうだが?」
その質問に対してどんな答えを返そうかと困っていると、ボクの口が勝手に動いて言葉を話し始めた。
「どうしてそこまで踏み入った質問をしてくるのでしょう?私がお金をいくら持っていようが、あなたには関係ありません。」
「そ、それはそうだが……。」
「納得したのなら、早く品物とお釣りをください。それがあなたの仕事ですよね?」
「わ、わかった。」
そして銀貨50枚のお釣りと買った服を受け取ると、またしても勝手に口が動いた。
「試着室を借ります。いいですよね?」
「……勝手に使ってくれ。」
買った服を持って試着室に入ると、テンタが首元からにゅるりと顔を出し、ぺこりと頭を下げて小声で謝ってきた。
「申し訳ありませんルルア様。勝手ながら、お体を操作させていただきました。」
「い、いいよ。おかげで切り抜けられたし。」
「寛大な御心遣いに感謝いたします。」
「じゃ、じゃあ早速着替えよっか。ど、どれがいいかな。」
「私はこちらをお勧めいたします!!」
「こ、これはちょっと……まだ勇気がでないかも。」
さすがにテンタが必死に推してくる女の子が着るようなフリフリのワンピースみたいなやつは、今は着る気になれなくて、買った服の中だとまだ万人受けしそうな水玉模様の入ったパーカーを着て、ボクたちは服屋さんを逃げるように後にした。
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