第70話
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ボクの姿がいくつにも分身したかと思ったら、次の瞬間一斉にボクの分身が動き出して、周りにいた聖騎士の人達を一方的にボコボコにし始めた。威勢の良い声が聞こえたのは最初の数十秒だけで、すぐにその声は悲鳴に変わった。しかしその悲鳴もすぐにピタリと止んで、ボコッ……ベコッ……っと鎧がへこむような音や骨が軋む音、砕ける音だけが聞こえてきた。
『テンタ、ストップ!!ストーップ!!』
『ハッ!!』
ボクが頭の中でテンタに静止の声をかけると、すぐにボクの分身たちは攻撃をやめて、ぽふんと煙になって消えてしまった。
恐る恐る聖騎士の人たちの方の様子を確認してみると、もう見るも無残な姿になっていて、目も当てられないような状況だった。
『言いつけ通り、憎き聖騎士とは言え一人も殺さず生かしておきました。ところでルルア様、あそこで止めている者たちはいかが致しますか?』
『…………どうしよう。』
チラリとアイ君の力で動きが止まっているククーリさん達に目を向けた。するとボクの視線に気が付いたククーリさんが、何とか体を動かそうと体を震わせながら声をかけてきた。
「あっはは、き、キミやっばいじゃ~ん。下っ端ばっかの聖騎士だったとはいえ、この数をものともしないなんてさぁ。」
「…………ククーリさん。その……勝手に弟子を名乗ってごめんなさい。」
「そんなの別に気にしてないよ。寧ろさぁ、今からでもアタイの弟子ってことにならない?キミぐらい強い子が弟子ってなったらアタイも鼻が高いからねぇ。」
ククーリさんとそんな会話をしていると、動けないククーリさん達の間をすり抜けてダンさんが現れた。
「ダンさん。」
「ルータ君、キミがククーリ達を助けに行ってる間に、キミに関して聖騎士たちがとんでもない情報を掴んだんだ。キミが敗魔症を克服した唯一の人間だってことを!!」
「……!!」
思わず動揺したボクに、畳みかけるようにダンさんが言葉をかけてくる。
「これからキミを狙って聖騎士が山ほどやってくる。それはこんな雑魚どもじゃない。ここにいるククーリ達と同格……下手したらさらに強い奴らがキミを狙って襲い掛かってくるぞ。」
ダンさんのその言葉に何と言葉を返そうか悩んでいると、テンタがボクの口を動かして話し始めた。
「それが?」
ぽつりとそう言ったテンタはボクの体からおぞましい殺気を放ったのか、ダンさんがそれに当てられてカタカタと震えはじめた。
「別に、今すぐにでも構わないんですよ。」
「は、は?な、なにが……。」
するとテンタはボクの体を動かして、手を天に向けて掲げると、その手の上に小さな黒い玉ができた。それはどんどん大きくなり、バチバチと黒い稲妻を纏い始めた。
「これを今すぐにヴィクトリアスにぶつける。そうすれば聖騎士もろとも、あの街は地図上から消え去ることになります。」
「そ、そんなことをしたら、キミは世界の敵になってしまうぞ!?」
ボクの体を操っているテンタに、ボクは少し語気を強めて頭の中で言葉をかけた。
『テンタ、やめて。ボクは体を使って良いって言ってないよ?』
『はっ!?も、申し訳ありませんでした!!で、出過ぎた真似を……。』
テンタはすぐにボクに体の自由を返してくれた。でも手の上にできた稲妻を放つ大きな黒い塊はそのままだ。
『テンタ、これはどうすればいいの?』
『ぐっと手を握り込めば消えます。』
『わかった。』
言われた通り、手をぐっと握り込むとその黒い玉はどんどん小さくなって、ぱっと消えてしまった。それを目の当たりにしたダンさんがホッと胸を撫で下ろした。
「ダンさん、話を聞かせてください。……ボクも話したいことがあるので。」
「わ、わかった。すぐに場所を設けよう。」
一度ダンさんと話をつけて、ボクは彼らと話し合いの場を持つこととなった。
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