第68話
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ヴィクトリアスの隣街ドローアに着いたボクたちは、一先ず宿をとりひと休憩してからお腹を満たすために街へと駆り出した。
「お腹空いたなぁ。何を食べよう。」
飲食店を探して歩いていると、テンタとアイ君の会話が頭の中に聞こえてきた。
『ここが人間の街……地下世界のどんな集落と比べても平和そうで、華やかだ。』
『あんな地下のじめじめしてる陰気臭い場所とはまるっきり違う。』
『あぁ、間違いないな。』
『……しかし、一見住みやすそうな世界に見えるが、こちらの世界には地下よりも理不尽が溢れている。ルルア様が他の人間に虐げられていたようにな。』
『なるほどな。』
テンタ達の会話を聞いていると、突然良い匂いが漂ってきた。
「あ、良い匂い……あのお店かな?」
スパイシーな良い匂いに誘われて、ボクはその匂いの根源と思われるお店へと歩いて近づく。そのお店の中を窓から覗き込んでみると、誰もお客さんはいないようで、このお店の人と思われる女性が退屈そうに欠伸をしていた。
「誰もいないみたいだし、ここにしようかな。」
「いい香りが漂って来ていますねルルア様。」
そう言ったオセさんは、もう涎が口から溢れそうになっている。そんなオセさんへテンタが呆れながら言葉をかける。
『はぁ~……オセ、お前はもう少しルルア様の従者だという自覚を持て。主人の前で食い意地を張るのはやめなさい。』
『は、す、すみませんでした。』
『いいんだよテンタ。オセさんだってお腹は空くんだし、お金だっていっぱいあるから。』
『ルルア様がそうおっしゃるのであれば……。』
テンタは渋々といった様子でも納得してくれた。
「それじゃあオセさん、入りましょう。」
「はいっルルア様っ!!」
そしてお店の扉に手をかけて開けてみると、中で退屈そうにしていた女性が驚きながらこちらに視線を向けてきた。
「ありゃっ!?久しぶりのお客さんじゃ~ん!!いらっしゃいいらっしゃい、席はどこでも空いてるから好きなところに座って座って~。」
「あ、ありがとうございます。」
2人用のテーブル席に腰掛けると、すぐにお水とメニュー表が運ばれてくる。
「は~い、お水とメニュー表ね。あんまり品数は多くないけど、どの料理も美味しさには自信を持ってるんだから。」
「あ、えっと……このお店から良い匂いが漂ってたんですけど、その料理ってどれですか?」
「あぁ~、それはカレーだね。ついさっき温め直したところだったんだよ。カレーで良いならすぐに提供できるけど、それでいいの?」
「はい、それでお願いします。あ、一つは大盛りとかできますか?」
「もちろんもちろん。すぐに用意するからね~。」
女性が嬉しそうにしながらキッチンの方に向かって、本当にすぐにカレーっていう料理が運ばれてきた。
「は~いお待たせでした~カレーライスですよ~。ボクの方が大盛りかな?」
「あ、こっちの人が大盛りです。」
「あら、お姉さん結構食べれるんだ。ボクも、もし足らなかったらおかわりしても良いからね~。」
「ありがとうございます。」
運ばれてきたカレーライスという料理の前で手を合わせて、早速食べ始めることにした。
「いただきます。」
早速一口食べてみると、甘しょっぱくて、少し酸味があって……複雑にいろんな味が混ざり合った味が口の中に広がった。
「んっ、あふっ……おいひぃです。」
「あ、ホント?よかった~、ウチの店さ、獣人の間でよく食べられてる料理を中心に出してるから、口に合うか心配だったんだぁ~。」
美味しいカレーライスという料理を味わっていると、頭の中でまたテンタとアイ君の会話が聞こえてきた。
『このカレーライスという料理……ルルア様が絶賛するだけあって、とても美味しい。色々な味が混ざり合っていながらも、調和がとれている。』
『どうして食べてもいないテンタが味を理解できる?』
『それは私がルルア様と一つになっているからだ。ルルア様が感じるもの全てを私は感じることができる。』
『ふむ、少し羨ましいな。私にも口という味を感じることのできる部位があればよかったのだが……残念だ。』
少し悲しそうに言ったアイ君……魔法でどうにかしてあげられないかな。と、そんなことを思いながら、ボクはカレーライスをおかわりしてお腹を満たしたのだった。
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