第66話
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回復魔法をテンタと一緒に唱えると、実験体03番の傷跡がみるみるうちに元通りになっていく。完全に傷が塞がると、実験体03番はゆっくりと大きな目を開けてこちらをジッ……と見つめてくる。
『なぜ……助けた?』
「ふん、お前も私と同じ、創造主の使い捨ての駒に過ぎなかった。それをわかったお前は、死ぬ間際に創造主に対し、尊敬の念ではなく、憎しみを抱いた……違うか?」
『…………。』
「問いかけに対し沈黙するのは、肯定と同義だ。」
『テンタ、お前もあの人間たちに追い詰められたとき、この感情を抱いたのか?』
「私の場合、憎しみだけじゃなく失望もだ。ま、今となっては創造主のことなんてどうでもいい。私は自らの命を捧げられる本当の主を見つけたのだから。」
そう言ってテンタはしゅるりとボクの腕に巻きついてきて、愛おしそうにスリスリと体を擦り付けてくる。
『……私はどうすればいい?』
「好きにすればいい。また創造主の元に戻るもよし、また私達に歯向かい、本当に死を遂げるも、貴様の選択次第だ。」
『私は……もう創造主の元には戻れない。あの方との繋がりも切れてしまっている。それに任務に失敗した私をあの方は許さないだろう。』
そう言って目を閉じると、実験体03番はボクの方をじっと見つめてくる。
『どうせ殺される運命ならば、せっかく救われたこの命……今度は貴方のために使いたい。』
「……と、申しておりますがルルア様、いかがいたしましょうか?」
テンタの問いかけに1つ頷いて、ボクは実験体03番に手を伸ばした。
「じゃあ一緒に行こう。えっと、実験体03番じゃ呼びにくいから、テンタと同じように名前考えなきゃね。」
『な、名前……。』
実験体03番は少し戸惑ってるみたいだけど、毎回毎回名前を呼ぶ度に、実験体03番〜って呼ぶのはとても呼びにくい。でもどんな名前が良いかな……。
実験体03番の前をウロウロしながら名前を考えていると、テンタが声を上げた。
「ルルア様、面倒であれば私めが……。」
「うぅん、面倒なんてこれっぽっちも思ってないよ。だから大丈夫…………。」
しばらく考え抜いた末、テンタも触手が特徴的だったからテンタって名前をつけたことをふと思い出し、そのおかげでようやく実験体03の名前がボクの頭の中で決まった。
「キミの名前は、これからアイ君って呼びたいんだけど……どうかな?」
実験体03番は大きな目玉の姿をしているから、目の別名……アイっていう名前を思いついた。テンタと同じで捻りはないけど、どうだろう?
『そんな大層なお名前を授かってもよろしいのですか?』
「うん!!」
『……ではアイという名を、ありがたく頂戴いたします。』
そう言ってアイ君が目を閉じると、どこからかこの場に響き渡るように声が響いてきた。
『種族実験体03番、与命アイとルルアによる主従契約が成立しました。』
「あれ、この声……。」
「通称天の声と呼ばれる特別な何かを成し遂げた時に聞こえてくる声ですルルア様。」
「ボクとアイ君で主従契約が結ばれたって言ってたけど、それはどういうこと?」
「簡単な話でございます。アイが完全にルルア様に従う意思を見せ、ルルア様はそれを受け入れたので、主従契約が成立したというわけです。」
「そういうことになっちゃうんだ。」
『何なりとご命令を主様。』
「ルルアで良いよ。アイ君。」
「アイっ、ルルア様はこう仰っているが、くれぐれも敬称は忘れるなよ!!」
『無論だ。ルルア様に、最大限の敬意を払う義務が私にはある。』
「ふん、わかっているなら良いだろう。」
テンタは少しアイ君に対して、ツンツンしてるけど、内心少し嬉しそうなのがボクに伝わってきていた。
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