第63話
アミーという魔族の女の人から一通り情報を引き抜いたテンタは、ボクの体からたくさん触手を出して、彼女の事をぐるぐると拘束していく。
「な、こ、これ以上何をするつもりですの!?」
涙目になってすごく怯えながらそう問いかけてきた彼女……。オセさんはこれから何が行われるのか分かっているみたいで、彼女に向かって祈りを捧げている。
「雑魚魔族とはいえ、腐っても名付き。手駒にするにはちょうど良い。」
テンタは何もない空間に切れ目を入れると、その中に彼女の事を放り込んだ。そしてすぐに切れ目を閉じる。
「良し、これで優秀……ではないと思われますが、手駒が一つ増えますよルルア様っ!!」
「もしかして、オセさんみたいにやるの?」
「もちろんです。あのアミーという魔族は少々気が強いようですから、少し時間がかかるかもしれませんが……。」
「御愁傷様ですアミー。あれは凄く……凄く辛いですよ。」
オセさんと同じところにテンタがあの人のことを放り込んだ後、早速聞き出すことのできた情報をもとにククーリさんの仲間の人達の捜索を始めた。
「聞き出すことのできた情報によると、ククーリの仲間たちの処理を命じられた03番がこの近辺をうろついていたとか……。」
「集落の近くじゃないんだね。」
「まぁ、この世界に住んでいる魔族たちはあまり人間に良い印象を持っていませんから。下手に集落に足を踏み入れれば、襲われると結論付けたのでしょう。」
「そっか、そうだよね……。でもこんな広い場所で探すのってすごく時間がかかりそうだね。」
「その点は、このテンタにお任せください。」
テンタは魔法陣を展開すると、突然ボクの目の前に不思議な画面が表示された。
「これは何?」
「生命反応と魔力を検知できる探知魔法を使いました。表示されている画面に赤い点が映りましたら、そこに何かしらの生命体がいるという事ですね。高い魔力を有している者の反応は、青い色の点で表示されます。」
「今ここに青い点が3つと、赤い点が2つあるけど……これは違うのかな?」
「断定はできませんが、強い魔力を持っている者がいることは間違いないようですね。行ってみましょうルルア様。」
「うん。」
画面に表示されている点が集まっている方に走っていくと、突然ぞわっと背筋を冷たい何かが伝って行った。
「な、なんか嫌な予感がする。」
「強大な魔力の波を感じ取ったからですね。なかなか状況は芳しくはないかもしれません。」
そして現場に着くと、修道女のような服を身にまとった人と、ノーラさんみたいに大きな三角帽子を被った人が巨大な目玉の化け物にじりじりと距離を詰められていた。
「あ、あのおっきな目玉ってもしかして……。」
「実験体03番に間違いありません。付属品で魔族を連れていますが、先程出会ったアミーという魔族の方が強いようです。」
「えっと、あのおっきい目玉と目を合わせちゃダメなんだっけ?」
「今の私たちであれば、奴の魔力量を大幅に上回っていますので、目を合わせたとしても何の問題もありません。手早く片付けてしまいましょう。」
「わ、わかった。」
そして飛び出そうとしたとき、テンタが何かを思い出してボクの顔を覗き込んできた。
「ルルア様、念のためお顔をお隠しになりますか?」
「あ、隠したほうが良いかな?」
「あまり素性を曝け出すのも得策とは言えませんし、念のため隠しておきましょうか。」
テンタが何か魔法を唱えてくれると、ボクの手にダンさんからもらった狐のお面とそっくりなものが現れた。
「これで一応フォクシーの一人だと信じてもらえることでしょう。」
「ありがとうテンタ。じゃあ行こう!!」
ボクは一気に飛び出して、実験体03番というおっきな目玉の化け物とククーリさんの仲間の人の間に割り込んだ。




