第60話
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ククーリさんが目の前から消えたかと思えば、まるで最初からボクとククーリさんとの間の距離が無かったかのように、目の前に迫っていた。
「うっ!!」
何の迷いもなくボクの首を狙って振るわれた刃をギリギリで受け止めながら、ククーリさんのお腹を蹴って大きく吹き飛ばして距離を取った。
「目の前に来るまでククーリさんが動くのが見えなかった。」
『あの驚異的なスピードと剣術こそ、私を瀕死にまで追いやったククーリの武器です。ですが……あのスピードは以前よりも……。』
テンタが疑問に思っていると、突然ククーリさんの足からブシュッ……と勢いよく血が噴き出した。ボクはさっきの反撃でお腹を蹴っただけ……足なんて攻撃してない。
『なるほど、理解しました。03番の洗脳能力は、洗脳した者の肉体のリミッターをも無視できるようです。』
『そ、それってどういうことなの?』
『狂化の呪いと同等のことを、今のククーリは強制されている……という事になりますね。』
『じゃあ今ククーリさんの足から血が出てるのは……。』
『肉体の限界を超えて能力を酷使した代償のようなものですね。幸い、今の加速では皮膚と筋肉が千切れただけのようですが、もっと大きな力を扱えば、代償はもっと大きくなるかと。』
『じゃあ、早くククーリさんを止めないと!!』
ボクは短剣を握って、ククーリさんに向かって一歩踏み出す。そしてさっきのククーリさんみたいに一瞬で距離をつぶすと、そこから激しい斬り合いに発展した。魔法によってククーリさんの剣術を完璧に真似出来ているから、何度も何度も剣同士がお互いの体に届く前にぶつかり合って火花をあげる。
「うぅっ……。」
『て、テンタ。もう少し近づいたほうが良い?』
『いえ、ここまで来られれば魔力干渉はできます。お任せください。』
激しい斬り合いのさなかに、テンタはボクの服の内側から触手を伸ばすと、ククーリさんの胸の中心にドスッ……と鈍い音をたてながら、触手を突き刺した。
それと同時にククーリさんの口から真っ赤な血が溢れ出し、まるで操り人形の糸が切れたように前のめりに倒れ込んできた。
「わわっ!?」
ククーリさんの血を浴びながらも、なんとか体を受け止めて、必死になって頭の中でテンタに問いかけた。
『て、テンタ!?ククーリさん、大丈夫なの!?』
『ご心配無用ですルルア様。』
『で、でもすごくたくさん血を……。』
『一度、魔力の源である心臓部を貫いたので、その影響かと。既に回復魔法で臓器並びに傷ついた肉体は修復済みですので、ご安心ください。』
その言葉を聞いた瞬間、ボクはホッと胸を撫で下ろした。
『じゃあ大丈夫……なんだ?』
『はいっ!!』
『よかった、安心した。』
頭の中でテンタと会話していると、安全を確認したリリララさんとオセさんがこちらに歩いてきた。
「ククーリは?」
「今は気を失っているだけです。」
「そうか……。」
リリララさんは、ボクが抱きかかえていたククーリさんを預かってくれた。
「ククーリはひとまず確保はできたが……問題はまだ完全に解決とはいかなさそうだな。」
「ククーリさんの他の人達のことですよね。」
「あぁ、それも含めてダンと話さなければならないことが山ほどある。一度ギルドに帰ろう。」
「そうですね。」
そしてギルドに帰ろうとした時、リリララさんがあることを思い出した。
「あ、そういえば司祭と聖騎士がここに入っていったと、話があったな。望みは薄そうだが、探してみるか。」
神殿の中を隈無く探し回ったけど、司祭と聖騎士の姿や痕跡は何一つ見当たらなかった。
この事も含め、ボク達は一度ダンさんに報告するためにギルドに戻ったのだった。
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