第53話
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呆然とさっきの人たちが引きずられていった方を見つめていると、イアさんが口を開いた。
「あ、あんまり心配しなくても大丈夫ですよぉ。あの子達も、死ぬまで栄養を搾り取ったりはしませんからぁ。干からびる直前で吐き出してくれますよぉ。」
「あ、あの……イアさんの育ててる植物っていったい?」
「う〜ん……ルータ君は、意思植物という植物をご存知ですかぁ?」
「いえ……。」
「意思植物というのは、人間と同じく意思を持った植物なんですねぇ。もちろん発声器官がないので、言葉は話せませんが、私はこの目のおかげで彼らの言葉がわかるんです。」
イアさんが自分の目を指さすと、その目が青く光を放つ。
「この力を使って、彼らと会話しながら新しい薬の開発に協力してもらってるんですよぉ。まぁ、あくまでも非公認ですからぁ、さっきのように国の研究機関からの刺客が研究記録を奪おうと、度々やってくるんですねぇ。」
「こんなことが結構あるんですね……。」
「おかげさまで意思植物の成長に欠かせない栄養は補給できるんですけどね。ホント感謝ですよぉ。」
そう言って笑ったイアさんの笑みは、どこか悪魔を連想させるようなちょっと怖い笑顔だった。
「さ、他の人が入ってくる前にここから出ましょ~。意思植物ちゃんたちも、食事風景をあまりみられたくない恥ずかしがり屋がいっぱいですからぁ。」
そしてボクたちはイアさんの研究室を出て、2階の部屋に戻った。途中の培養室を通った時に、チラリと植物が人間を丸呑みしているところを見たときは、思わず背筋がぞくっとしてしまった。できればもう見たくない。
またもや2階の部屋のソファーに腰掛けると、イアさんがお金の入った袋をたくさん持って来てくれた。
「今回の報酬の件なんですけどぉ、一応現状は調査依頼の分の報酬だけ支払わせていただきますねぇ。」
「……?ボクが受けた依頼って、調査依頼だけですからそれだけでいいんじゃ?」
「いえいえ、そういうわけにはいきませんよぉ。も、もしルータ君たちが調査の道中で、依頼にあった魔物を倒していたらその分もお支払いしないと……ギルドとしてのメンツが立ちませんからぁ。」
「う~ん、じゃあ今この分の報酬だけ受け取ります。もし後から報酬が発生したらダンさんに寄付してもらえますか?」
「承知しましたぁ。すぐに調査隊を送っておきますねぇ。」
イアさんにそんなお願いをして、ボクは地底湖の調査依頼の報酬だけをもらってギルドを後にした。
ギルドを出て、ボクは道すがらにあったパン屋さんでサンドイッチを2つ購入して、一つはオセさんに手渡す。
「オセさん、これどうぞ。」
「へ……えっ!?よ、よろしいのですか!?」
「はいっ、オセさんもお腹減ってます……よね?」
「い、一応多少は減っております。」
「じゃあ遠慮なく食べてください。足りなかったら、また買いますから。」
「か、感謝いたしますルルア様っ!!」
大げさにボクに感謝の言葉を伝えてきたオセさんは、目をキラキラと輝かせながら、サンドイッチにかぶりついた。すると、驚きで目を大きく見開きながら、じっとサンドイッチを見つめている。
「だ、大丈夫ですか?」
「はっ!?す、すみませんルルア様。初めてこんなに美味しいものを食べたので……衝撃で固まってしまいました。」
「あ、そっか……前にテンタが養殖されたスライムぐらいしか美味しいものが無いって、言ってた気がする。」
「そうなんです。そもそも地下の世界の食事は美味しくなくて……人間たちがこんなに美味しいものを普通に食べていることに、衝撃を受けてしまいました。」
そしてぺろりとサンドイッチを食べてしまったオセさんは、まだ物欲しそうな顔でお店のサンドイッチを見つめている。すると、そんな様子を見かねたテンタが頭の中で声を響かせた。
『オセ、自重しなさい。』
『はぅっ……すみませんテンタ様。』
『いいんだよテンタ。お金はいっぱいあるから……。』
その後オセさんはパン屋さんにあったサンドイッチを全部食べつくして、ようやくお腹がいっぱいになったようで満足そうな表情を浮かべていた。
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