第32話
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森に入ってから1時間ぐらい経って、アランさんが討伐したハニーベアの数も10頭を超えてしまった。流石にアランさんの表情にも疲れの色が見える。
「ふぅ、まさかこんなにハニーベアの成獣がいるとは……ギルドの想定よりもかなり生息数は多いみたいだな。」
額から流れる汗を拭うと、アランさんはこちらに視線を向けてきた。
「ルータ君は疲れていないか?」
「ボクは大丈夫です。」
「あれだけ虫の魔物を倒して、息一つ切らしていない……か。はは、スタミナも規格外だな。」
まったく疲れていないボクを見て、アランさんは苦笑いすると剣についていた血を綺麗に布で拭いて鞘に納めた。
「今日のところはこのぐらい討伐しておけば問題ないだろう。ある程度被害は抑えられるはずだ。」
「じゃあもう帰りますか?」
「そうだな。また移動魔法をお願いできるかな?」
「わかりました。」
またアランさんの手を握って、ボクは魔法を唱えた。
「テレポート。」
そう唱えた直後、また視界に映る景色ががらりと変わって、今度ボクとアランさんはハンターズギルドの目の前に移動して来ていた。
「やはり移動魔法は素晴らしいな。帰ってくるのは夕方になると思っていたんだが、正午になる前に帰ってくることができてしまった。」
「それじゃあボクはこの辺で……アランさん、今日はありがとうございました。」
「礼を言うのはこちらの方だ。今度何かご飯でも奢らせてくれ。」
そしてアランさんとギルドの前で別れて、これからどう時間をつぶそうかと悩みながら町をぶらぶらと歩いていると、テンタが頭の中に話しかけてきた。
『ルルア様、これからのご予定はいかがいたしますか?』
『実はどうしようか迷ってて……。ほら、ボク今までこういう風に自由な時間ってなかったから、自由な時間に何をすればいいのかわかんなくて。テンタは何をしたらいいと思う?』
『も、申し訳ありませんルルア様。私、人間が何をして暇をつぶすのかという知識は脳に入れておりませんでした。』
『それじゃあせっかくだし、一緒に何か探して町の中を歩いてみよっか。』
なにか面白いものを探して、ボクはテンタと一緒に街の中を歩いて回ることにした。ぶらぶらと目的もなく歩き回っていると、大通りから外れた路地に寂れた古本屋さんを見つけることができた。
「あ、こんなところに本屋さんがある。」
『ルルア様は本がお好きなのですか?』
『う~ん、どうなんだろう。孤児院にいたときは本を読むぐらいしかやることが無くて、だからずっと本を読んでたけど。』
ボクは店頭に並んでいる本の中で、気になったタイトルの本を一冊手に取ってみた。
「これ面白そう。」
『私たちの足元にある世界……ですか。』
試しに少し読んでみると、本にはボクたちが暮らしている世界の地下に、もう一つ日の当たらない世界が存在するんじゃないかって書かれていた。それを裏付ける証拠として、この世界には魔物が湧いて出てくる底の見えない大穴がいくつもあるんだとか……。
ある程度読んだところで、ボクは本を本棚に戻した。
「この本に書いてあった世界って本当にあるのかな。」
思わず疑問に思ってしまったことを口にすると、テンタがその答えを教えてくれた。
『ルルア様が今しがた目を通した本に書いてあった、日の当たらない世界……というものは実在いたします。』
『えっ?』
『魔物が魔物を支配する国……私はそこから来たのですルルア様。』
『そ、そうだったんだ。で、でもテンタはククーリさん達に負けたって言ってたよね?』
『はい。あの国にいたころは、私もとある支配者の配下でして……その支配者を討伐しに来たククーリたちと戦闘になったのでございます。』
『テンタはその国に戻りたいって思う?』
『いいえ、まったく!!私は今のこの時間が最も幸せでございます。』
そう答えたテンタは本当に生き生きとしているようだった。だから多分本心なんだと思う。でも、テンタが仕えていたその支配者は、テンタのこと心配してたりしないのかな……。
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